転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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息抜きの隙間

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「あぁぁぁ……腰が、肩が、首がギッシギッシや。んで、結局死なんの?」

 全ての資料をまとめ上げ、両腕を伸ばすように天に突き上げて首を右左一回転ずつ回す。パキパキ、カコカコと鳴る音はどこかリズミカルに思えた。そのリズミカルの中に含まれた死の言葉がタダでさえずっと籠もって淀んでいた空気をさらに重くした。死の話題に目を明らかにギラ尽かせて怒らせていたので、ヒステリックでも起こすのかと心の中でため息をついた。

「死なないわ、私が私の存在を否定したら愛しのウィーンに怒られるもの、それに、欲しいのが私だもの自分をぶん殴ってでもあの子達の親でいるわ。私はそれを欲してしまったから此処に居るの……考えない訳ではないわ」

 どこぞの世界のバーサーカーですかあんさん? めちゃくちゃながらも本気の雰囲気で自身の覚悟の決まった声音と……。本当にグラスはんとカリスティアはんの危険になると判断したら、言われなくとも恋人の首を折って自分の喉笛も即座に欠ききると言わんばかりに尖った爪が自身の喉元へと突きつけられていた。

(弱肉強食の個人主義の悪魔が、愛に溺れるとこうもやっかいやとはのう……)

 どうしてもそう思わずには居られなくて、その覚悟を示している相手の前だというのにため息をこぼしてしまう。それと、自身の瞼に写る予知の結果が……アドラメルクがカリスティアのスキル欲しさに、彼女を殺す未来が……予知が本当に変わってゆくことに、笑いもこみ上げる。笑いそうになる自身を律し、未だに覚悟をその瞳と仕草に宿したアドラメルクを見据える。もう一度確認をするために。 

「力が……魔力があれば本来の理を越えた現象と物質を手にするスキル……。具現化なんてもんやない、まんま願い叶えるスキルやな……。そのスキルを使って……」

「私が、ウィーンを蘇らせる為に使うところを予知したと」

「おん」そうだ。だからワテは錯乱した。あんさんに殺されるのを覚悟でこうして言っている。……ただでは殺されんがのう……。けれど、これで確認も確証も得た……アドラメルクは予知でも現時点でも主はんに危害を与える可能性は低くなった。けれども……予知は予知、いつ変わるかはわらない。緊張を、監視を、怠ることは許されない……。存在を依り代にする者達の扱いにくさは……自分が良く心得ている。

「その予知のアドラメルクは馬鹿だったってことよ。そうなったら私が私に私の拳でぶん殴ってやるまでよ」

「段々と思考がハチャメチャになっとるでんが……。まぁ、そこまで言うなりゃ信用するわ」

「信用もなにも、お前が一番怪しい……」

 ついにはお前呼びですかい……ええけどな。怪しいのも否定はできない。わてだって死んだ法王がナカマニシテーなんて寄ってきたら怖いですしー。生きてた自分の屍を踏み台して生き永らえている自分の歪さと危険さを棚に上げるつもりは毛頭ない。

「おん、その怪しいを知的ナイスお兄さんにしてみせまひょか……。ちょっと、子供ら二人のお楽しみ守りに行こか……。予知や、二人は今は酒場に居る、そこで二つの脅威がせまっとる……」

 自分も自分で狙いが合って此処にいることも否定はしない。けれども、俺らの中心の二人は子供や……世界の激流に飲み込まれた子供。別に自身の怪しいイメージなんてどうってこともないが、二人を守らなければならない。瞼の裏に写るのは背中合わせで、店の従業員を守りながら戦っている子供二人。今から40分後に男二人が……。

(襲わせる為に、ハメ外せ言ったんやないぞ……。しばくぞ、おんどれら野郎二人! 予知に言っても仕方ないんやけどな)

 まさか、外食でお互いに楽しく語らっている予知をそれとなく伝えたら、その先の予知で敵の乱入なんて冗談や無いあいつら二人に息抜きさせるのどんだけ苦労するとおもってんねん……この糞危ない厄災の間に組み込まいかんほどなんやぞ。今の自分に瞼と目が合ったらピクピク痙攣しながら顔を引き攣らせているだろう。今の自分はガイコツだからそんな芸当は出来ないが、怒りで骨が軋む。

(案外わても、親馬鹿気質なんかな……)

「まぁ! 酒場、子供成長って速いわぁ。そのうちママとも一緒に……そして……」

「もしもーし、妄想なら終わってからなー」

 わてが怒る位だから、コイツなんてもっとなんて見てみたら妄想にご執心しているようで、目を輝かせていた。自分も幾分か自由人の域の性格をしているから本来ならば言えないが今回は言おう。

「あんさん……怒ったり妄想したり……フリーダムやな」






「くそったれが!」

「それはこっちの台詞だクソッタレ」

 まだしょんべん臭いガキのあいつが身体を張っているのに、この俺が逃げるわけにはいかねぇ……けれども分が悪すぎる。今夜中にターゲットを始末のちに、ペルマネンテを攻撃して撹乱する予定を実行する為にこうして、胸くそ悪いゴミの狂騒の中を屋根伝いに来たってのに。

(何で、狂犬がいるんだよ……クソガ、今は動けねぇはずだったろがぁ……!)

 夜と酔っ払いの狂騒をかき分けて来てみれば、奴隷屋の狂犬と名高いエルフの男が、物騒な斧をもってニヤニヤと目を血走らせながらこちらを待っていた。バレていた……んだろうな。こちらの計画が国の反旗を、取引の違反の違反をぶちのめすために。
 本当に分が悪い、こっちは鎖鎌の変則的かつ暗殺が専門で……正面からなんて勝てるわけがねぇ。だが引けねぇ……! 引けねぇんだよぉ……。

「始末しに来たのか?」

「ついでにです……って、これから殺す相手に苦手な敬語を意識するだけ無駄だな。俺さ、この後も仕事あるから、死ね」

「ぐぁ……!!! 【風よ】」

 人の扱えるでかさを遥かに超えた斧が尋常じゃない速さで、横なぎにぶつけられる。咄嗟に鎖鎌で防いだが身体が宙に舞って勢いのまま、町の中心に近い飲み屋街から一気に町の外との森まで飛ばされる。風魔法でなんとか受け身を取って地面との激突だけは避けることに成功するが、自分のお気に入りの魔力鉄の鎖鎌が一回防いだだけで使い物にならなくなってしまった。肩の感覚も尋常じゃない痛みがする。

「町でやるのだけは止めてくれって言われたんでな。あんま嬲れなくて悪かった」

 一息の時間しか経たぬうちに、狂犬が面白そうに歯を見せて笑いながら此処に降りたってきた。ぺろぺろと自分の唇をなめ回す様子は、下品なのに血走った目のせいで狂気を感じさせる仕草となっている。

「これから、好き勝手やるんだろぉ……【ウィンドカッター】」

「ご明察。肋骨頂き」

 決死の不意打ちも、避けられては胸に一発拳を入れられる。形容もできないほどの自身が折れる音と、ゆっくりとも急激とも感じられるような、思考も狂わせる激しい痛みに、今度は声もでずに後ろの木に背中から衝突する。衝撃で後ろの木が折れる。そのまま木と一緒に重力のままに地面にたたきつけられる。

「ぷっはっはっはっは……流石狂犬だな。いてぇ、いてぇよ」

「お前みたいなのに褒められても嬉かねぇーよ」

「そうかい、そうか、じゃあ……嬉かねぇー俺と一夜過ごして貰うぜ」

 衝撃で地面に転がった自分の強化剤の蓋を開けて、中身を水なしに一気飲みをする。お国の為に俺は……家族を忘れよう大事な、家族を。

 力の取引の代償は家族との記憶、俺の家族ならば国の名誉の為に忘れて死ぬことを許してくれるだろう……。許してくれ……。

「無駄に足掻く奴は嫌いじゃない……フフフ」
 
 
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