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ターゲット
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「左側」
「【ダークネス】」
堕ちた精霊をスケイスが足止めしながら、空いた進路をウィーンに突っ込んで貰う連携攻撃で狂犬相手に戦っている。魔王と元法王の二人にかかればすぐに戦いは終わるはずだった……普通ならば。ウィーンは身体の耐久を考慮して、スケイスは神聖と魔の相反する属性をその身に宿しているために、暴走しないように力に幾分かの枷をかけての戦い。その点本気で狂犬は殺しにくるので、こちらの分が悪い。
「あ、んた」
「なんや忙しいんじゃこっちは、死に損ないがなんかようッかッッッ!!!」
カリスティアを殺そうと企んでいたもう一人のアダムスの幹部だろう。ボロボロになって死にそうになりながら這い上がるように、こちらに向かってくる。両腕が折れているためか這い上がる度にくぐもった痛々しい悲鳴をあげながらにじり寄って来る。邪魔をするつもりならばすぐに殺してやろうと、男と精霊を交互に観察する。男が数回血の混じった咳をしてから、またにじり寄ってきた。
「あん、た。取引しないか、俺を助けたらアダム……」
「おん、助けたる。その後に刺身にしてやるがの」
「ッチ」
「ったりまえや、幹部がタダで助け乞うわけないやろ、わかったらコレ持って失せろっちゅーねん」
確かに目は縋るような目をしているが、その奥にある殺気を感じ取って取引を突っぱねる。この忙しい中というのもあるが、乱雑に主はんお手製のポーションを数個投げつけて、一個は封を解いて死に損ないの男の顔に浴びせてやる。瓶は再利用できるのでちゃっかり懐にしまうがな。戦っている中でこの温情を無駄にしたら許さないと、男を睨み付けると。規格外お手製のポーションのおかげで歩けるくらいに回復した男がのろのろと、森の中へ消えてゆく。
ー眷属、眷属、倒せ、倒せー
ー殺せ、殺せ、母は、望むー
「俺のかーちゃんは精霊やないで……くそが」
頭の中で自分の中の魔が、堕ちた精霊を母と騒ぐ、母を攻撃してはならないと頭の中で叫んでいる。少し精霊の魔を浴びすぎたらしい。頭がクラクラする中で、あまりしたくはないが主はんの契約のつながりを強くする。暴走のストッパーを強くしたために、理性を薄くする声は聞こえなくなって来たが。
(つながり強くしたら、主はんに気づかれる確率があがってまうから、あんましとーないんやがな)
未だに明けない夜を疎ましく思いながら、精霊を止める手は止めずに動かす魔力を練り邪魔しようとする精霊を叩き落としウィーンへの道を切り開く。
・
・
「ヒ、ソ、ド、ド、ロ」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅうゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
ペルマネンテに近づくにつれて誘導している魔物の思念が強くなる。いつからか自分の口から黒い液体が絶えることなくぽとぽとと流れ落ちてくる。我が国の為に家族のために未来の為に、蝕まれながら苦しみながら只管に歩いて行く、気持ち悪い。怖い。辛い。逃げたい。
野を越え、砂浜を越え、山を越え、どこかの町を越え、厄災を振りまきながら歩みを進める中でその思いは強くなる。ペルマネンテに近づくにつれて魔物の靄のかかった顔の部分から悲痛な何かの名前が零れてくる。魔物に家族なんて居るのだろうか? なんて考えてしまう。もし、魔物に家族がいるのならばなんとナシに悪だからと殺している人間ってなんなのだろうか。
「考えるな、考えるな、国の為に……全ての為に……」
国の為に世界を危険にさらすのは果たしてそれこそ国の為だろうか?
「考えるな、考えるなッ!」
悪魔と人身売買に挟まれた八方ふさがりの国になる前に異議を唱えることが国の為だったのではないだろうか?
「考えるな、かんがえるな」
国の正義が世界の正義ではない。今やっていることは国の為という大義名分を掲げているだけではないのだろうか?
「違う、違う」
大義名分を掲げて国の汚れを肯定しているだけでなはないのか?
「…………」
だとしたら、結局国の為に……子供時代を捧げて殺した意味はなかった。
「だとしたら、どうすればいいのさ……今更やりなおしなんてできない。止められない」
人を殺す才能があった。アダムスは知識の国と歌われることあって自分の殺す才能である固有スキルの【呪い写しスキル】は差別の恰好の的だった。対象を決めて自分を刺せばそいつも自分と刺した同じ傷が付いた……練習すれば自分が刺した傷をそっくりそのままに移してしまうことが可能だった。
差別されたあたしがが出来るのがアダムスを守る軍に入ることだった。守るとは名ばかりの同じように文化的ではないという理由で迫害された物の集まりだったが、国の為に戦っても、傷付いても、市民からは石を投げられ形だけの感謝と国の賛美を何枚も書かされた。嫌でも思考する考えは奪われ、いつのまにか自分を国の歯車だと思うようになった。
「まってください! この子は軍に入る以外にも道が」
そういえば、軍に入れられる前に家族の誰もが自分のことを最後まで引き留めてくれていた。家族だけはあたしを差別せずに最後まで抵抗してくれた。元気だろうか……居なくなっても、元気で、忘れていてくれるだろうか。
涙がこみ上げてきた。乱暴で拭った袖は真っ黒で服が真っ黒なのか自分の涙さえも真っ黒になってしまったからなのか。少し前の私がここに来たら、いまの自分の体たらくを「ウケる」と笑うだろう。今更になって気づいた自分の過ちを悔いながら。奪われた思考の中で導き出した答えが……罪を帯びや答えだということが。
「国が今延命しても世界終わったんじゃ、家族もなにもないじゃん。あたし馬鹿だ……。もう、止められない。止まってよ。もうやだ……」
嘆いても助けはくることはなく絶えずに足が進む。棒きれになった足は勝手にペルマネンテに向かって進んでゆく。ダメ元で魔力を操作してみるけれど、暴走状態に入った自分ではとても制御できなかった。
「やり直しなんて、もう、できないか……ウケる」
最後の自嘲した、乾いた笑いは涙と鼻水に邪魔されて凄く無様で目の前の魔物が涙で滲んできた。なにもかも自暴自棄になって、目を閉じた。もう、自分の過ちもその結果も見たくないから。
「大丈夫、やりなおせるから!!!」
「ッッッなんで!!!」
帰ってこないはずの言葉が、強く意思の感じられる言葉で返された。不意にその言葉の聞こえたところに顔を傾けると……黒い蝶が、綺麗な真珠のような髪を登り始めた太陽の光を反射させた女が……ターゲットがそこに居た。
「【ダークネス】」
堕ちた精霊をスケイスが足止めしながら、空いた進路をウィーンに突っ込んで貰う連携攻撃で狂犬相手に戦っている。魔王と元法王の二人にかかればすぐに戦いは終わるはずだった……普通ならば。ウィーンは身体の耐久を考慮して、スケイスは神聖と魔の相反する属性をその身に宿しているために、暴走しないように力に幾分かの枷をかけての戦い。その点本気で狂犬は殺しにくるので、こちらの分が悪い。
「あ、んた」
「なんや忙しいんじゃこっちは、死に損ないがなんかようッかッッッ!!!」
カリスティアを殺そうと企んでいたもう一人のアダムスの幹部だろう。ボロボロになって死にそうになりながら這い上がるように、こちらに向かってくる。両腕が折れているためか這い上がる度にくぐもった痛々しい悲鳴をあげながらにじり寄って来る。邪魔をするつもりならばすぐに殺してやろうと、男と精霊を交互に観察する。男が数回血の混じった咳をしてから、またにじり寄ってきた。
「あん、た。取引しないか、俺を助けたらアダム……」
「おん、助けたる。その後に刺身にしてやるがの」
「ッチ」
「ったりまえや、幹部がタダで助け乞うわけないやろ、わかったらコレ持って失せろっちゅーねん」
確かに目は縋るような目をしているが、その奥にある殺気を感じ取って取引を突っぱねる。この忙しい中というのもあるが、乱雑に主はんお手製のポーションを数個投げつけて、一個は封を解いて死に損ないの男の顔に浴びせてやる。瓶は再利用できるのでちゃっかり懐にしまうがな。戦っている中でこの温情を無駄にしたら許さないと、男を睨み付けると。規格外お手製のポーションのおかげで歩けるくらいに回復した男がのろのろと、森の中へ消えてゆく。
ー眷属、眷属、倒せ、倒せー
ー殺せ、殺せ、母は、望むー
「俺のかーちゃんは精霊やないで……くそが」
頭の中で自分の中の魔が、堕ちた精霊を母と騒ぐ、母を攻撃してはならないと頭の中で叫んでいる。少し精霊の魔を浴びすぎたらしい。頭がクラクラする中で、あまりしたくはないが主はんの契約のつながりを強くする。暴走のストッパーを強くしたために、理性を薄くする声は聞こえなくなって来たが。
(つながり強くしたら、主はんに気づかれる確率があがってまうから、あんましとーないんやがな)
未だに明けない夜を疎ましく思いながら、精霊を止める手は止めずに動かす魔力を練り邪魔しようとする精霊を叩き落としウィーンへの道を切り開く。
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「ヒ、ソ、ド、ド、ロ」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅうゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
ペルマネンテに近づくにつれて誘導している魔物の思念が強くなる。いつからか自分の口から黒い液体が絶えることなくぽとぽとと流れ落ちてくる。我が国の為に家族のために未来の為に、蝕まれながら苦しみながら只管に歩いて行く、気持ち悪い。怖い。辛い。逃げたい。
野を越え、砂浜を越え、山を越え、どこかの町を越え、厄災を振りまきながら歩みを進める中でその思いは強くなる。ペルマネンテに近づくにつれて魔物の靄のかかった顔の部分から悲痛な何かの名前が零れてくる。魔物に家族なんて居るのだろうか? なんて考えてしまう。もし、魔物に家族がいるのならばなんとナシに悪だからと殺している人間ってなんなのだろうか。
「考えるな、考えるな、国の為に……全ての為に……」
国の為に世界を危険にさらすのは果たしてそれこそ国の為だろうか?
「考えるな、考えるなッ!」
悪魔と人身売買に挟まれた八方ふさがりの国になる前に異議を唱えることが国の為だったのではないだろうか?
「考えるな、かんがえるな」
国の正義が世界の正義ではない。今やっていることは国の為という大義名分を掲げているだけではないのだろうか?
「違う、違う」
大義名分を掲げて国の汚れを肯定しているだけでなはないのか?
「…………」
だとしたら、結局国の為に……子供時代を捧げて殺した意味はなかった。
「だとしたら、どうすればいいのさ……今更やりなおしなんてできない。止められない」
人を殺す才能があった。アダムスは知識の国と歌われることあって自分の殺す才能である固有スキルの【呪い写しスキル】は差別の恰好の的だった。対象を決めて自分を刺せばそいつも自分と刺した同じ傷が付いた……練習すれば自分が刺した傷をそっくりそのままに移してしまうことが可能だった。
差別されたあたしがが出来るのがアダムスを守る軍に入ることだった。守るとは名ばかりの同じように文化的ではないという理由で迫害された物の集まりだったが、国の為に戦っても、傷付いても、市民からは石を投げられ形だけの感謝と国の賛美を何枚も書かされた。嫌でも思考する考えは奪われ、いつのまにか自分を国の歯車だと思うようになった。
「まってください! この子は軍に入る以外にも道が」
そういえば、軍に入れられる前に家族の誰もが自分のことを最後まで引き留めてくれていた。家族だけはあたしを差別せずに最後まで抵抗してくれた。元気だろうか……居なくなっても、元気で、忘れていてくれるだろうか。
涙がこみ上げてきた。乱暴で拭った袖は真っ黒で服が真っ黒なのか自分の涙さえも真っ黒になってしまったからなのか。少し前の私がここに来たら、いまの自分の体たらくを「ウケる」と笑うだろう。今更になって気づいた自分の過ちを悔いながら。奪われた思考の中で導き出した答えが……罪を帯びや答えだということが。
「国が今延命しても世界終わったんじゃ、家族もなにもないじゃん。あたし馬鹿だ……。もう、止められない。止まってよ。もうやだ……」
嘆いても助けはくることはなく絶えずに足が進む。棒きれになった足は勝手にペルマネンテに向かって進んでゆく。ダメ元で魔力を操作してみるけれど、暴走状態に入った自分ではとても制御できなかった。
「やり直しなんて、もう、できないか……ウケる」
最後の自嘲した、乾いた笑いは涙と鼻水に邪魔されて凄く無様で目の前の魔物が涙で滲んできた。なにもかも自暴自棄になって、目を閉じた。もう、自分の過ちもその結果も見たくないから。
「大丈夫、やりなおせるから!!!」
「ッッッなんで!!!」
帰ってこないはずの言葉が、強く意思の感じられる言葉で返された。不意にその言葉の聞こえたところに顔を傾けると……黒い蝶が、綺麗な真珠のような髪を登り始めた太陽の光を反射させた女が……ターゲットがそこに居た。
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