転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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見届けるということ

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「ってな訳で……私達貴女を助けに来たの、OK?」

「オッケー……。な、ンな訳あるか! ボケナスがぁぁぁ!」

「デキュナスてめぇ! 誰がボケだ色彩毒! 女子力ゼロ女」

 緋想さんに治療されている間にこうしてきた理由を説明したら、うんうんとデキュナスちゃんが可愛く頷き、私に向けてニッコリと笑ってから、とある妖怪のように首をぐるりとアダムスのお兄ちゃんの方へ回して、近くの枝を力一杯投げてお兄ちゃんに当てていた。
 お兄ちゃんの顎に見事に直撃して後ろに盛大にのけぞった。一応こうなることは予想して隠れて貰ったのだけれども、流石は幹部だ……お見通しのようだ。緋想さんに治療されているのを良いことに、お兄ちゃんは煽りに煽って、デキュナスちゃんは周りの草を引っこ抜いてポイポイお兄ちゃんに向けて投げている。草だから届くことはなく無常にはらりと地面に落ちるだけだけど。

「五月蠅い餓鬼共! 静かにおし!!!」

 見て居るのは面白かったけれど、結局緋想さんが顔を怒らせて一喝してしまい。兄弟のような夫婦のような元気なやりとりは一旦中止となった。中止となった所でグラスが今回の作戦のことを話してくれる……というか今回の作戦の主軸を立てたのはグラスだ。

「カリスティアとデキュナス様は治療しながらで結構です。まず確認しましょう、今回は厄災級とあって此処に居る全員……まともに対峙すれば死ぬということはご理解されていますか?」

 話し始めるグラスに全員の視線が向く、その一つ一つにグラスは丁寧に目を合せてからゆっくりと確認事項を聞いてくる。デキュナスちゃんだけが微妙に状況が読み込めてないけれど、彼女はもとより保護後に治療してお兄ちゃんに明け渡す予定なので、悪いけれど説明しないままに話しを進める。

「結構、誰一人決意は揺るがぬようで安心しました。作戦ですが、緋想様に宝石を所有して頂きます。そうして厄災をどうにか私とカリスティアで……足止めします。予め断言しますがもって五時間が限界でしょう……緋想様には……五時間でその宝石の魔力の込め方を把握して使用して頂きます。

 生け捕りなど生ぬるいことが通る相手ではありませんので……その五時間を過ぎたら、失敗として戦線を離脱します。作戦は失敗となりますので……一回勝負です」

「ま、まってくれ……! ペルマネンテに到着するまでにはまだ時間があるはずだ」

 一回勝負という言葉に強く狼狽えるドロウ君は、グラスと私を交互にみて抗議するようにそのことに関して聞いてきた。確かに時間はあるのだけれど……一つ懸念がある。もしその懸念が当たってしまった場合は、此処に居る全員の立場が悪くなる可能性がある。グラスの方を見ると、グラスは私に「私が説明します」と口パクで言ったので、私は大人しく、その場を静観することにした。

「ええ、ペルマネンテに到着するの時間はございます」

「なら」

「しかし」

 食い下がるドロウ君をあっけなく切り裂くように、現状で一番恐れるべき事態を告げるために……グラスは静かに口を開く。

「国が……。己のために私腹を肥やす国のトップ達がみすみす上陸を許すとお思いですか?」

「…………」

 その一言で、ドロウ君の顔が見る見る青くなってゆく。完全に沈黙をした。今回の私達がどれだけ命以外の物を賭けにして此処に居るかを……多分だけれど、彼は今ここで知ったのだろう。せめて母の最後と父の最後をこの目で見ることを願った彼の……希望を薄れさせる国の存在を。青く俯くドロウ君に、グラスは容赦なく言葉の刃で再度切り裂き始めた。

「厄災の一般的な国の対処方法は、厄災の進路を予測し、その進路の人間を厄災が過ぎるまで避難させること……。ペルマネンテは特別武力に長けた国でもないため、普通の頭ならばその方法をとります。“普通の頭ならば”」

 ここまでは私も初めて聞く話だ。そうして……念を押すように言葉を強くして一つの単語を二回繰り返すグラス……。そうだ、グラスは最初はこの国の王子だったんだ……。そのグラスがここまで言うのならば、父親の代わりの兄も“普通の頭”ではないと言うことだ。語るグラスは昔のことだと割り切っているのか、別段辛そうな感じもなく普通に語っているが……やっぱり私が話したほうが良かったかな、少し後悔した。

「私の予測が正しければ武力行使で厄災と戦うことを国王は選ぶでしょう。 リチェルリットに応援を要請して……」

「いや、前国王はリチェルリット嫌いで……現国王も」

「ええ、現在の国王様もリチェルリットのことは良く思っていないことは、端々聞いています。けれども、リチェルリットとペルマネンテは今は表向きは同盟関係にあります。

前国王が現国王に討たれ、その間の混沌を納めるのに一番協力をしたのはリチェルリットです。その切り替わりの中で作られた同盟……。どちらも利用しない訳がありません」

 そういえば……あのデブ王大丈夫かな、ちゃんと痩せたかな、ちゃんと……性癖戻ってるかな。グラスが真面目に話している横でくだらないことが頭にちらつくせいで、緋想さんがジットリとした目で見てきたので相当不相応な顔になっているらしい、急いで顔を引き締めてグラスの話しの続きを聞いた。

「ペルマネンテは市民の避難を未だにしないことから……最初から迎え撃つつもりでしょう。けれど……ペルマネンテは戦闘に秀でた国ではありません、そんな国が厄災と戦うなど愚の骨頂……普通ならば出来ない選択です。
 けれども……それを可能にすることが出来るのです、リチェルリットの手を借りればいい。リチェルリットにとってはペルマネンテは信用ができない同盟国……その国に正当な理由で恩を売れるのです。

 リチェルリットは国の規模も安定して現在は力も増し、穏やかな王の気質に引かれた個性と才能溢れる様々な種族が集う国……。リチェルリットならば厄災を持って勝ち取れる人材が居てもおかしくはありません。 リチェルリットからペルマネンテまで騎士団を動かすならば、明日にはドロウ様のお父様とリチェルリットの幹部が対峙することとなるでしょう」

「親父が……魔物として討伐されちまう。自国の土を踏むことすら許されず……お袋の手で死ぬこともできないまま、他人に殺されちまうのか」

 それだけじゃない。

「もし、我々が厄災と対峙しているところを見られでもしたら、仲良く罪人として捕らえられるでしょう。 厄災は一国の王が指示しない限りは、冒険者、貴族、市民……たとえ勇者であれ、接触は禁じられています」

 今回の目的の残酷さは……それだけじゃない。失敗すればドロウ君のお父さんは討伐され……。成功しても私もグラスもドロウ君も緋想さんも……罪人となる。個人での対処は御法度ということだけは私も聞いたことがある。緋想さんの顔色を窺ってみると、うんうんとグラスの言葉に頷いていた。緋想さんは勿論わかって行動しているのだ、これをわかっていたからこそ……感動の再会のちに、彼がついて行くと言った時には猛反対したのだ。私もグラスもお兄ちゃんもそれを間近で見た。グラスは見た上でもう一度問いかけるであろう……彼に。


「もう一度聞きます……。ドロウ様、貴方は罪人となってまで自身の母と父の死を見届けますか?」


 氷よりも冷たい刃が、決意に刃を通した。


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