転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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同盟

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「……次捕らえられぬようであれば死刑に処する!!!」

「お許しくださいませ王よ……お許しくださいませ」

 絢爛豪華な父の面影の残る玉座の床を不躾に蹴り上げる。父無き今は俺が国王だと言うのにどいつもこいつも、怯えるばかりで目的の達成もできない愚か者ばかり、せわしなく声を張り上げられていた父の大変さがこうやって身に染みて母譲りの赤の目に涙が滲む。

「父上のやり方は……間違っています。それが私の答えです……兄様」

 その滲んだ涙は、思いおこされる不出来かつ不吉な弟の記憶によって引っ込められる。下民の死に処よりも不吉な白の髪と我々とは対局の青い目を持つ弟……グラス。3年前から兵に探させているが一向に城に運ばれる気配はなし。ペルマネンテの敷地を踏んだことは情報に上がっているのに何という体たらくだ……。精霊国よりはこちらの土俵である分難易度は低くなるはずだというのに情けない。

 怯える大臣と兵長に大いにため息を浴びせてやると、どいつもこいつも身にもならない謝罪を述べるのみ、俺は言葉などいらない行動と結果が全てだ。行動の末に結果を残せない者は……死あるのみだ。

「もう一度言うぞ、次にグラスを捕らえられぬなら兵長、貴様は死刑だ。精霊国へ今の今まで兵士を送り続けていたが……百歩譲って精霊国に居るのならば、大胆な行動が出来ない分は多めに見れたが……奴は……グラスはこの私の国のペルマネンテに居るのだぞ!!! 何故捕まえられない! 今日をもって捕まえられぬのならば、我々は人間の風上にも置けないリチェルリットの恩を買わねばならないのだぞッッ!!!

 買うだけならばまだしも……自国の土を踏ませるなど、前代未聞だ! 市民など餌と土地を与えてやれば幾らでも増殖するが、土地は一度穢れたら一体何年の時をかけて戻さねばならぬと思っておるのだ!」

 市民はネズミであり歯車だ、俺の先祖が獲得した土地を貸し与えて住まわせてやっているだけだ。今回の防衛で市民にどれだけの被害がでても土地が無事ならば放っておいても増える。そのことがわからぬものは、なぜこうもそろいもそろって結果がだせないやつが多いんだ……この兵長のようにな。

 それと、愚弟だ。奴は一応だが王族の血が入っている、それに奴は今や氷の帝王と名高いSS級冒険者に成り上がった。奴と厄災を戦わせることができればリチェルリットなんぞの手を借りることも無く全てが収まるというのに……とことん愚か者は、優秀である俺の足を引っ張るのがお得意なようだ。

「いつもいつも……そうだ、あいつは」

「王?」

 大臣の聞き返す声を無視して目に左手を覆うように当てる。瞼の裏に写るのは忌々しい愚弟の記憶だ、愚かで、か弱く、いっそのこと女に生まれた方がまだ使いようがあったほどの愚弟だ。


「おらぁ!」

「うッ……」

 王子の教育の一つ剣術を弟達に教えているさなかで、グラスと手合わせすることとなったが……あいつはまるで女のように腕が細いだけでなく、力などまだ赤子のほうがあるんじゃないか?という腕力で、他の弟たちとは違い一撃だけですぐに尻餅をついた。

「流石です。兄様、お手合わせありがとうございました」

「本当に、余所の腹からの子は手足が脆いことか……兄上流石でございます。穢れた血など放って僕とお手合わせを」

「あぁ……」

 あいつは何度負けても表情も変えずに、形式だった礼節をするだけで負けたらすぐに俺に背を向けてすぐにその場を後にしてしまう。そうして奴がその場を去ると、別の弟同士でグラスの血を貶す一言二言が必ず漏れる。俺は最初はその漏れ出る悪口を聞きたくないが為に、逃げ出している負け犬だと思って居た。こんな負け犬が兄弟にいるとこが本当に恥ずかしかった……せめて身体だけでも鍛えてやろうと、何度も何度もあいつを稽古してやった……そんな中で、たまたま他の弟たちがそれぞれの教育で参加できなくて、俺とグラスの二人だけの時があった。

「おらぁ!」

「うっ、つぅ……」

 二人だけでも変わりはなく、一撃であいつの身体は血が通っていない人形のように俺の一薙ぎで身体は宙に浮いて地面へとたたきつけられた。そのときは俺もイライラしていて啓示でもしてやるような気持ちでグラスを叱ってやった。俺のありがたい啓示に少しは改心するだろうと思っていたら……そんなことはなかったのだがな。

「お前みたいな腑抜けが、この国の未来を暗くするのがわからんのか!!! 父様も言っていたであろう……力で市民を屈服させ、威圧と威厳を持って土地を買い与えてやるのが王の役目! お前は、我々を産んでくださった父をなんだと思って居るのだ! グラス・ペルマネンテ!!!」

 これだけ威圧してやれば、怯えてその臆病な根性もたたき直されるだろう。俺は勝ち誇った神顔負けの傲慢な顔で地に這いつくばるグラスを見下げた。グラスは立ち上がり埃を払って俺をまっすぐとみた。変わらない無表情で……怯えるか泣くかのどちらかだと思って俺が、この俺が逆に気圧されるように目線を弱めてしまった。グラスは、表情の変わらぬ顔で答えた。

「父上のやり方は……間違っています。それが私の答えです……兄様。口が過ぎました、ご無礼を申し訳ございませんでした……そうして、お手合わせありがとうございます」

 何も言わぬ俺を差し置いてそのままスタスタと剣を持って行ってしまった。その後にすぐにあいつは死んだことにされ名前を剥奪され、ただのグラスとすることを父上に聞かされた。この会話を父に聞かれてしまったからグラスが殺されたのか……はたまた身ぐるみなしの一文無しで国の外に差し出されたのかはわからない。

 死んだと思っていた……最初は、けれども父上が表向きには賊に攫われたとされている日に、たまたま俺は父上の玉座を訪れていた。兵士が急に慌ただしくなるなかで、護衛をそれとなく撒いてから玉座をのぞき見た……そこに死んだと思って居たグラスが居て……見知らぬ黒い少女が居た。グラスよりも不吉な不幸を背負って着飾っているような黒い髪とアメジストの少女がグラスと一緒に捕らえられていた。



「父上……やめてください、この娘、カリスティアだけは」



 俺は大いに驚いて息を飲んだ。あの脅そうが何しようが表情を動かさない弟が顔をゆがめて、必死に肩を揺らして父に乞うていたことに。あまりの驚きで、急いで護衛の元に戻り避難をした。離れる瞬間の光景は父が少女に連れられてグラスとともに魔法で消えてゆくところだ。

 ん……少女?


「大臣」

「どうされましたか?」

「兵士に伝えろ、グラスは優先だが……黒い髪のアメジストの瞳をもつ女も見かけたら捕らえるように言え」

「畏まりました」

 俺はとんだ間違いを犯したようだ……。グラスは名高いSS級冒険者なのだから捕まるはずがない……ならば、奴が顔をあれだけ歪めてまで守り通したかった女を餌にすればいい。そう思って伝えた指示は一日ほどで身を結んだのだ。


「宿屋に黒い髪のアメジストの瞳と……。悪魔族の女と契約魔物と思われる魔物と……グラス様の目撃情報がありました!!!」

 俺は笑いが堪えられなかった。奴のことだから、仲間に自分が追われている可能性は伝えていない可能性が高いだろう。情熱的でまっすぐな父上ならば気がつかないが……俺は父上より少しひねくれてるからな……。

「厄災上陸予定地の町か……。魔物と奴らで挟み撃ちにしてくれる……。ぷはっはっはっははっは」




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