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在りし日は今の猶予を勝ち取る
しおりを挟む「法の下平等に討論を行うことを王国法管理最高裁判官 ロイエ・ペッカートの名の下に宣言し、ロイエ・ペッカートの名のもとに平等に判決を下すことを此処に誓います」
心地よく耳を震わせるロイエの声が響く、老人なのに混じりけがなく凛々しいその声は自然と背筋が伸びる。ロイエが『平等に判決を下せなければ速やかに死する』という自己的に行っている魔法契約書を記載して我々に見せることで討論は開始となる。
私の陣営は、カロフィーネ、アルマ、エピオス、セシル
お父様の陣営は、アルハイル、スパーダス、エピク、モルゲン……は寝てるけど、良くこの状況で寝てられるわねこの狂人。
それぞれ4人づつUの字の机で向かい合うようにお互いを見据える。ロイエもお父様の陣営なのだが、書面の通りに感情での裁定はしないだろう……その紙が偽物ではなければ。
「目で見て確認されますかな? 姫様、ほっほっほ」
「結構ですわ」
疑った目で見てみるとご老体で髭を蓄えた顔を優しそうに笑ませるものだから、すぐに疑いの目をそらしてお断りする。この場で疑わないことがおかしいのは此処にいる誰もが理解しているので、私の行動を窘めるものは居なかった。
ある程度時間がたったところでピンと急激に場の空気が張り詰めた。国王である父が覇気のある王としての顔で私を睨んでくる。上等よと私は蹴り上げるように笑ってやる。
始まりよ。
ここは、裁定討論の場、リチェルリット法長の管理の下に議題を行うところ。この場で議論に参加できるのは国王とその親族と、国の為に貢献してくれている幹部など、この場の議論は全て平等の元に地位の決定権を一時的に民主的にすることで、王族の暴走を止める役割を担っている。
主に、戦争、税、防衛、など最重要かつ一人の決定に委ねることが危険な案件を決めなければならない時に行われるものだ。……今回こそ私は勝たなければいけない。
「薬の出所はアダムスという国が起こしたものじゃ、世界と悪魔族の国と天使族の国の為にも現在力を持つ国である我々リチェルリットが戦いの為に立ち上がらなければならない」
討論、皆違って皆良いという生ぬるいことは発言できない相手の意見を叩き潰すための場所。資源独占は私は討論で負けてしまったけれど、私は今度こそ勝ってみせる。友と民と仲間の為に!!!
私は用意された水で口を潤して父親に言葉で噛みついて両断する。父親とはいえここでは敵であり倒さねばならないから。
「立ち上がる……ならば父上とやりたい者だけがやるべきだと私は思います。現在は情勢が悪化している途中かつ我々も資源を制限することで持ってはいますが何時崩れるかはわかりません。戦争をするということは尊い民の心を裏切ることになります」
正直、今回の討論も大分負け戦染みている。国の資源を言い訳にすればアダムスの土地を利用するだの情勢の悪化もアダムスが起こしたものとして大義名分を掲げられる……実際は私の国の悪魔が手引きした情勢の悪化だけれどもね。しかも、アダムスの国も微妙にそれに加担しているおかげで擁護と弁明がし辛いったらありゃしないわ。
どうにか国王の発言を切ると次は、お父様の親友で在らせられるスパーダス様からさらに私の発言切られる。
「このままこうして居ようが、いつか資源は枯渇してしまう恐れがあります。姫様の保守も庶民出身の私にはとてもお優しいく感じてこのましくはありますが、この情勢では待つことが帰ってこの国と民の首を絞めてしまうこととなります」
スパーダスが敬語だとやっぱりいまいち違和感があるわ……。そのことにスパーダスは気づいているようで始終お気に入りの帽子を深く被って発言した。さらに細切れにするために今度はセシルが喉を潤して発言をした。
「その戦争によって国の資源が持つ所までもたない……ということもあります。もし悪化の原因がアダムスにあるとして、そこで戦争を仕掛けることは『全てを受け入れるリチェルリットという国』の在り方を裏切ることとなります。それならば話し合いで解決するべきです」
事実上に寝返ったと言えるセシルの発言はスパーダスやエピクの顔に陰りを灯し始める。これだけでセシルを連れてきたのは正解だったと思う。この討論は感情的になったら負けである。必要な情報をボロでてくれないかという淡い希望も期待しているのだから……全員国のトップに君臨するほどの頭だから望みは薄いが。
エピクがセシルを責めるように睨みながら発言をした。
「全てを受け入れるリチェルリットだからこそ、他国の為に戦争をするべきだ。悪には悪を、善には善を、全てを受けいれるリチェルリットは他国の民をも」
「それならば、今せき止めている資源を解放することで解決できよう」
エピクの発言を遮るアルマが鋭く話題を切り裂く、他国の為に戦争を歌うのならば今堰き止めている資源を解放するほうが戦争よりも重要な解決となる。アルマの鋭い一撃に舌打ちをしそうに顔を歪めるエピクを追い打ちをかけるようにエピオスがさらに発言を重ねる。
「資源を堰き止めている時点で、僕たちは他国の為と言えぬほどに情勢の悪化に大なり小なり加担してしまっている。国の為とは聞こえがたいへん宜しいですが、それならば戦争をするよりも細々とでも他国に自然の恵みを分け与えるほうが効果的です」
エピクの少しの失敗をすくい上げて切り開いてくれたアルマのおかげで現在の風向きは私達のほうに来ている。もしかしたら行けるかもしれないと、さらに私が追撃しようと口を開くとお父様が流石に切ってきた。
「じゃが、薬が出回った時期に情勢が悪化したのは事実。その薬の材料の中には我が国リチェルリットの資源を材料とするものがあった。現時点で資源の解放することは危険かつ安全に行わねばならない。ならば、脅威を取り除いた上で必ず我が国の資源を情勢が悪化する前の条件で分配する。それでどうじゃ?」
普通に考えれば好条件だが、討論の場に妥協を取ることは負けである。お父様がよく使う常套手段……妥協になっていない妥協をちらつかせて、討論を納める方法だ。けど……私達は今戦争をされたら困るの……今!なの。お母様が解放されてすぐに戦争だなんてお断りよ。
「それは、流通を制限した今でもそのリチェルリットの資源は含まれていますわ。アダムスと我が国の民が関わっている者が密かに流通させているという紛れもない事実。内がその状態で戦争なぞ、それこそ危険極まりありません」
「では、取り除いた状態での戦争に異議はないと受け取ってよいかの?」
かかったわね? 私は上品に見えるように口元に手を当てて笑う。前の私は自身の発言の失敗を切り込まれて動揺して流されていた……けど今は違いますわ。この失敗をも利用してやるのだ……。私の失言が丁度お父様の失言を誘ったのだから。
「うふふ……まさか、取り除いた状態になり薬にその成分が含まれなければ我々は戦争する意味はございません。内に居た者を捕まえるだけで世界の貢献となります。その上で戦争を求めるなぞ……アダムスとの戦争をまるで望んでいるようではありませんか」
最後はお父様と一騎打ちのようになってしまったが、これでよかった。お父様が失言してくれたおかげで、取り除いた上で戦争を求めるなど望んでいると取られても仕方ない、今回の強化剤の原材料の大半は我が国の資源だ。その資源を流す者捕まえ制限をかけるだけで終わる者をわざわざ戦争に持って行くような発言は……。
お疲れなのかわざと私を勝たせてくれたのか、お父様がぐったりと笑いながら背もたれに寄りかかり、やってしまったーと悪びれもせずに笑い始める。その様子を痛ましく見て居た私の視線に気がつくとさらに……子供のころの私を懐かしむように笑って「成長したな……カロフィーネよ」と言ってくださった。
思わず目に涙が貯まり始めるがグッと堪える。お父様はすぐに国王の顔に戻って仕舞われたが、目は嬉しそうに私を見てくれた。
「判決の時間である」
今回のお父様の失言を皮切りに裁判長の裁決が下る。全て民と国の為の場であるために自己の思想が混ざった時点で発言は打ち切られる。
「戦争への討論の末、戦争反対派の勝利とする」
…………。勝った、やった、カリス様!!! これで戦争は免れました。どのような理由があろうともしばらくはアダムスとの戦争を止めることができました!!!
私はうれしさの余りに議論の場でついに泣いてしまった。敵同士の幹部やお父様も慌てて私の具合とかを心配して駆け寄ってくれる。
「今日もよく寝たなー。あれ姫様ポンポン痛くなったのかな。アッハッハッハッハ!!!」
(((この錬金術師は、本当に興味のあること以外は動かないな!!!)))
アレだけ重い空気でいびきかきながら寝ていたあげくに姫に向かって軽口を叩くモルゲンに全員が頭が重そうにする。戦闘と錬金術師となれば頼もしいのに普段が……。まぁ、そんなことは置いておいて。
こんなに大事なのに、こんなに大好きなのに敵という事実に余計泣きたくなったがどうにか抑え……一日を終了させた。次は……カリス様の番ですわ。研究員と表向きはされているお母様を救ってくださいまし……在りし日の私のように。
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