転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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氷は熱に溶ける

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「もう嫌だこんなところ……おら田舎に帰る」

「馬鹿なこと言わずにキリキリ歩いてください」

 吹雪よりも冷たいグラスの一言に私ではなく、ドロウ君の豪快なくしゃみが辺り一帯に鳴り響く。寒さがないのに見た目で寒いから仕方ない、この無駄に美しい白く宝石のちりばめられたふわふわの雪と色とりどりの種類のわからない花が散らされ春を告げる美しい光景……頭が痛い。というか普通に頭が痛い。

 ちゃっかり、私もグラスもドロウ君も睡眠不足でドロウ君も顔色が悪いし、グラスも色々堪えたのか途中時々ふらりと身体が揺らぐときがある。それぞれがくたくたの中の進軍でも悲しきかな……、通常通りにこのデタラメ気候に適応した魔物が襲ってくる。比較的元気な私が処理をしているが、それもこのまま続けるのは厳しい。

(正直このまま進めるとして、私もグラスもドロウ君も体力が限界も近いしかといって、このデタラメ気候の所を越えなければまともに休めるところが近くにないところだし……ウィーンママの家ならちょっとお邪魔していいかな)

「ねぇグラス」

「…………なんですか?」

 グラスがこちらを向く、反応が大分遅れているから本当に休ませないとヤバそうだ。グラスが体調を崩すところは見たことはないから自信はないけれど、相当無理していると思う。目も微妙に虚ろだし、所々フラフラとふらついている。申し訳程度に通常通りを装おった口調が余計にそれを目立たせてる。

「ここから近いウィーンママの家に行こう」

「……わかりました。ウィーン様のご自宅に一度お邪魔しましょう」

 グラスは私の顔色とドロウ君の顔色を見て頷いたあとにそう言ってきた……違う、お前だよ!オマエが一番この場で心配なの! フラフラの自分ではなく、ドロウ君と私の顔色と体力を考慮して判断した。優しいのはいいけれど倒れるのはいけないから、改めて欲しいけどね。

(倒れることのデメリットを理解した上で休ませてくれって、ドーンと構えた4歳だった私が言えたことじゃないが……。申し訳なさで私も最初は抵抗したけど、結局は遠慮無く休んだな……懐かしい)

「グラスさん大丈夫か? よければ俺の肩使ってくれよ」

「いえ、お気持ちだけ受け取ります、ありがとうございます……ドロウ様。カリスティア……大丈夫ですから……」

「うん」

 流石に見かねたドロウ君が、グラスに声を掛けるも遠慮した。私ももう一度後ろを向いてグラスの様子を見たが、ソレに気づいたグラスが、笑って私に大丈夫と言葉で伝えてくる。私はそれに短い返事をして、ウィーンママの家の方向へ向き直る。

 その会話以降、私達の会話はなかった。ドロウ君も確か30……ちょいだか前くらいだっけ? それくらいだから、グラスの気持ちを汲み取って「そのまま何も言わずに進んでやってくれ」っとこっそり私に耳打ちしてくれた。流石の私も三十路……くらいなので、グラスの気持ちはある程度察しているので、ドロウ君の言葉通りに無理するグラスに何も言わなかった。

(そうだ、グラスもまだ18歳だからな……。しかたない)

 心配を掛けたくない、責任がある、負担になりたくない、グラス本人ではないから大それたことは言えないけれど、彼が僅かでもそういう気持ちで無理をするならば、気持ちはわかる。だから何も言わない……私だって彼と同じ立場だった同じ事をするだろうし、耐えられるならば私は耐える選択をしてしまう。だから、そういった選択をしてしまう彼を支える選択を私はしよう。

 それに、無理させている原因は……私だからね。

(まず、埃だらけのベットを洗濯、いやもう家に入っちゃえばいいから具現化でどうにかしよう。ウィーンママの許可は私が取るとして、この際だから魔物を使って私が二人の分のお腹にいい料理を作って……時間があるなら洗濯と……あと)

 着いた時のことを考えながら、毛むくじゃらの熊のような魔物を切り裂いてストックにしまう。家に着いたあとのご飯はコイツだ。私の世界の熊肉は生臭くてたまたま食べた肉の中に鉛玉が入ってたけど、剣で切ったし血の匂いもあんまりしないから、美味しいといいな。








ッドサリ!

「お疲れ様……グラス。ドロウ君階段登って右手側すぐの部屋のベットに寝かせておいてくれないかな?」

 ウィーンママの家に着いて……実は貰ってた合鍵を取り出して懐かしの玄関に三人入った瞬間に体力の限界が来たグラスが意識を失って倒れる。グラスを見ると白い肌に紅が滲んでいて、呼吸は少し荒いし熱もある。ここまで頑張ったグラスに労いの言葉を掛けて、同じく顔色が少し悪いドロウ君にグラスを運ぶように頼んだ。

「おう! お安い……おっとと、ごようだ」

「無理しないでドロウ君もそのまま休んでいいよ」

 ドロウ君は、顔色の悪いダンディーな顔をこれでもかってくらいに笑ってグラスを背負うが、その笑い空しくよろけてしまう。彼も彼なりに疲れているそのまま私は彼に休むことを提案するも、ドロウの目がバツの悪そうに目線がズレる。

「俺はいいってカリスティアちゃんこそ休んだらどうだい?」

「って言ってるけど家の構造わからないでしょードロウ君。いいってグラスと一緒に休んでて」

 この家は他人に借りてお邪魔しているからと説明して、ドロウ君に休んで貰うように言った。流石に構造のわからない家を右往左往するよりは素直に休んだほうがいいと判断したドロウ君は。

「……すまねぇ。お言葉に甘えるとするか」

 そう言って、笑ったあとにグラスと友に部屋に消えてゆく。3人部屋だけど私は別の部屋を借りて寝ようと少し埃っぽくなったキッチンに立って……材料がないから具現化を駆使してお腹に良いスープを二人分を作り上げる。

 あの、熊の魔物を煮込んで、私の世界のジャガイモと僅かに入れたコンソメパウダーやタマネギなど……どれも柔らかくお腹によくなるようにゆっくりと煮込んでできたスープ。私の世界の熊とは違って案外さっぱりと脂身が少なくスッキリとした肉で本当に軽く飲めるスープに仕上がった。

「よし、私は……そこら辺に生えてたつくしみたいな草とスープの残骸でいいや、自分の為に料理作るのめんど」

 ヴィスの町に居た頃並の長い一人事を言った後にトレーにスープとスプーンを二人分乗せてノックをする。すぐにドロウ君が出てきてくれて、私の手にあるスープを見て興味深そうに観察していた。そういえば料理人だったと思いすぐに食べれると言って部屋の中に入る。

「やっぱりちょっと埃っぽいか、持っててドロウ君」

「あぁ、えッ? へぇ!?」

 早業でグラスの寝ているベットをストックに入れてから具現化で埃っぽくないベットにすり替える。ドロウ君の荷物が置かれているベットも同じように早業で埃のないベットにすり替える。これで埃っぽくなくなったからゆっくり休んでと、ドロウ君に言って私は部屋から出る。

「!? ー……。凄い能力なんだからそんなくだらないことに使うな!!!」

 大声で言ってから、グラスが起きてないかを慌ててみるドロウ君の30歳位なのに少年らしい行動に微笑んでしまう。グラスに気を取られているうちにそそくさと部屋を去る。

「さて、ウィーンママに許可入ってからで悪いけど許可とらないと。グラスの体調によっては大分時間がかかるだろうし……」

 進路は魔王様のおかげで確保できたみたいだし、少しくらいゆっくりしよう。




 




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