転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

文字の大きさ
123 / 175

一年の辛抱の壁

しおりを挟む
 変態の次はどっさりと服を抱えたウィーンママのお帰りだった。私は瞬時に着せ替え人形になる運命を悟って大人しくウィーンママの元へ、抵抗しないことが速く終わることだと知っている私はお利口さんです……はい。実際に嫌か嫌じゃないかで言うと、嫌じゃないが、服の質もセンスも良いのに私なんかが着ても馬子に衣装の豚に真珠も良いところ。異世界特有の美形揃いの世界では、私の見た目なんて普通か凡人くらいなのだから。

「カリスティアちゃんか~わ~い~い~!!!! 次はオーバーオールのコレとあと、ちょっとシックなこのコートと……」

「今此処の気温地獄のように暑いからコートは勘弁して」

 嫌いじゃないとはいえ、この糞暑い中でコートを着る体力はない。断るとウィーンママが綺麗な瞳をうるうるさせて小動物のように見てくるけれど、こればっかりは断る暑いのは嫌。ションボリとしたウィーンママがリビングに山になって置かれた服の中へ、他を物色しに向かったウィーンママを見送ると、服の山を見て顔を曇らせる男二人がリビングの席に座って会話していた。

「止めた方が良いんじゃ……」

「止めるのを止めた方が賢明です。下手に止めに入るとカリスティアの拘束時間が倍に伸びます」

 流石グラス賢明なご判断でございます。止めようとするドロウ君の気持ちが嬉しい反面に少し前にグラスが、ウィーンママの着せ替えタイムを邪魔した時に、私の着せ替えタイムが二時間伸びた事があるためにその判断はありがたい。人から可愛がられた経験が少ないから嫌いじゃない、ただ少しむずかゆい。

「お友達はごゆっくりおくつろぎになってね、こんな所で良ければ好きに使って構わないわ。 きゃ! カリスティアちゃんリボン似合う!!!」

「お気遣いありがとうございます。 じゃあ、俺はカリスティアちゃんの好物作るよ」
 
 ウィーンママは最初はドロウ君に警戒心を僅かに表したが、友達というとすぐに霧散させて今では普通に家のどこでも歩いて弄って良いと許可を出すほど。ウィーンママは破天荒な所があるけれど警戒しているときは、読めない独特の笑みを作るので、破天荒な所を見慣れていると少しドキリとする。
 今はそんなことは無く、色取り取りのリボンで私の髪を弄るのに夢中で、頬に薄紅を灯しながらあれもこれもと羽をピクピク仰ぎながら喜んで居てほっと心の中で胸をなで下ろした。
 ドロウ君が、そんな私を疲れたと解釈したのか好物を作ってくれるとのことで遠慮無く私の好物を頭に浮かべた。

「じゃあ、イカのスルメとビーフジャーキーと空色エンドウで」

「好みが酒好きのおっさんだな……。まぁそれを使ったサラダで我慢してくれ」

 前の世界も今も酒のつまみ類の食べ物は結構好き好んで食べてる。酒は嫌いだけどそのつまみは美味しいから好きなので、この世界でも好みがオッサンという評価を頂いた。しかも、流石につまみ類だけはダメなのかサラダにするから我慢してくれと、ちょっと申し訳なさそうに言われた。

「ドロウ君の料理はなんでも美味しいからありがとう!!」

 申し訳なさそうな顔しなくてもいいのにと思ったありがとうは、ドロウ君の申し訳なさそうな顔を破顔させたが……すぐ横のグラスがツンとした顔でこちらを見た。もしや……もしかして……。

「ウィーンママーグラスも着せ替えして欲しそうにこっち見てるよ」

「え! なるほど、じゃあグラス君もコッチにいらっしゃーい」

「カリスティア……裏切りましたね!?」

 何を裏切ったのかは知らないけれど、凄い勢いでグラスを持ち上げて私の元へ連れ出されるグラスは久々に見た嫌そうな顔をして私を睨んできた。ウィーンママは目にもとまらぬ速度で普通に整って好きのない恰好のグラスにさらに磨きを掛けるために、細かい服の埃を取り始めた……凄い速い。

「ドロウ君と隣にいるときツンとした顔でいたから、てっきりウィーンママに着せ替えて欲しかったのかと……」

「何故、貴方は余計な所で勘違いを発揮させるのですか!?」

 グラスはそう言うとこめかみを強く抑えて、ニオクターブくらい高くなった声でそう言った。余りに反応が面白いのでは私はそのままからかうことを続行した。普段はからかわれているのは私の方なので私がからかってもバチはあたらんだろ。

「勘違い……まさかグラスソッチに目覚め」

 口に手を当ててお上品に見えるように身体を引いて目を見開くと、グラスが整えられながら私の腕を掴んだ。流石に怒った!? っと私の顔がギョッとして前を向くとグラスの真剣な顔は至近距離にあって固まった。

「っていましたら誠意を持って貴方とは別れていますので違います!!! 私はドロウ様と話して笑いかける事に嫉妬しているのです!!!」

「うん、知ってる。ありがとう嫉妬してくれて」

 もしかして……嫉妬と思ってたけど、自信が無かったから強引に誘導すると案外するりと正直に言ってくれた。嬉しい反面このままからかい勝ちしたいが為に、知ってると言い返して笑ってみると。グラスの方が顔が赤らんで来て左手で自分の目を覆い隠して私から離れていった。

「孫の名前は何かしら……」

 私から離れてすぐそこの壁に手をついて俯くグラスに追撃するようにウィーンママがグラスの耳元で言うと、グラスの容赦ない氷の一撃がウィーンママに放たれたが、ウィーンママはそれを余裕で避けた。笑いながら楽しそうに床を飛び跳ねて、玄関のほうへぴょんぴょこと跳ねてゆく。

「面白いもの見れたわ!!! じゃあ私は魔王城の方に帰るわね? お幸せに~」

 そのまま玄関のドアを開けてバイバイと去って行くウィーンママ、本当に嵐のように来て去って行くウィーンママのいつも通りさに、恒例のどっさりと積み上がった服の山をストックに入れる作業をしながら未だに耳を赤くして壁に手をついているグラスの背中を見てクスクスと笑う。初じゃの~……、なんて余裕を扱けるほどに恋愛はしたわけではないけれど……可愛い。

「可愛い」

 思うだけにしようとしたら口にしてしまった。そうしたら瞬きしただけで壁に手をついていたグラスが消えた。どこに行ったと右左と首を振って探して、後ろを向こうとしたときに私の身体が宙に浮かぶ。グラスに持ち上げられたみたいだ。冬の早朝のような冷却とスッキリとしたミントのような香りが身体を包む。

「ん~暑い中でやっぱグラスヒヤヒヤで気持ちい」

「それはよかったですね」

 あ、ちょっと怒ってますね。言葉でわかったからそれ以上は私は言わないで、リビングにぬいぐるみのように連れて行かれた挙げ句に、グラスの膝に座らせられたあげくぬいぐるみよろしくギューッと抱きしめられて身動きが取れないようにされた。

 以前のようにぬいぐるみのように抱きしめられるだけではなくて、グラスの冷たい指が私の唇をゆっくりと時間を掛けて端から端へ撫でる。流石の私も大分積極的なグラスの行動にピシリと身体が固まる。キッチンから見えるところでされているので余計に緊張感が走る。察しのいいドロウ君は一度だけ見ただけで、すまし顔で見なかったことにして調理に取りかかった。

 リビングとキッチン一体型不思議空間のウィーンママの家の構造をこれほど恨んだことはない。恨むぜウィーンママ……。

「……知識があるのですね。カリスティア」

 いけない人だ。っと耳元で囁くグラスについに顔の火がつく。クスクスと後ろでわざわざ言ってくるグラスから逃げようと暴れるも男の力ではどうすることもできなく、結局グラスが満足するまで思わせぶりに唇や首筋や顎を指先で軽く撫でられ。ドロウ君が控えがちに「飯出来たぞー」っという声が掛かるまでグラスの仕返しは終わることはなかった。

「後一年の辛抱……」

 終わる時に呟かれた一言……今の私の身体の年齢は14歳……大体の国の成人、一応の私の出身のリチェルリットの成人は15歳……。

 私は15歳を迎えたらすぐに美味しく頂かれるのでしょう。

(私が15歳まで生きられればね……)


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...