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1巻:動き出す歴史
第一話 第四章:修業の森
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第四章:修業の森
帝都の外れに広がる 緑地。それが修業の森である。そこは帝国建国に深く関わる場所と伝承されている。現在は、兵学校が管理する修業の場だ。
太古の昔、この森で戦士たちが魔物との激戦を繰り広げたという。帝国の英雄たちは魔物たちを打ち払い、人が住める土地を切り開いたという。しかし、時が流れてもなお、森に潜む魔物は完全に駆逐されることはなかった。
帝都の防衛と歴史遺産保護の観点から、森を焼き払うことは禁じられている。そのため、魔物の生息域を兵学校の管理下に置き、訓練場として活用することになったらしい。
基本的に、修業の森は下級生が最終試験で訪れる場だ。しかし、特別な許可を得れば、訓練や研究目的で入ることも可能である。
この日、四名、二組の生徒が修業の森の立ち入り許可を申請した。シエラとチャコ、そして、リオンとゼンジである。
一.少女たちの素材採取作戦
シエラとチャコは、魔物が活動しにくいとされる早朝から森に向かった。兵学校の許可を得て、森の浅い場所で魔物素材の採取 に挑んでいた。
「この森、村とは全く違う……」
シエラは森の入口で深く息を吸い込んだ。冷えた空気に混じる土と生臭い獣の匂い―それはどこか神秘的な雰囲気をも漂わせていた。
「日が出ているうちが勝負よ。急ぎましょう。」
チャコは手際よく道具を確認しながら、森へと歩みを進めた。彼女のねらいは、落ちている魔物素材の採取だ。剥がれ落ちた鱗や、新鮮な死体の皮が狙いだという。
チャコはお嬢様育ちに見えるが、魔物の解体には意外にも抵抗が無いらしい。
「気をつけてね、チャコちゃん。森の奥には入らないようにしないと……。」
「分かってるわよ。でも、いい素材を探さないと。そのためには、勇気も必要。」
チャコは慎重に地面を観察しつつ進んでいく。魔物の痕跡を探しながら、しかし、森の浅い部分を超えないように。
しかし、その警戒も慣れと素材集めの熱中には緩んでしまう。少女たちは次第に夢中になり、気づけば より深い場所へ足を踏み入れていた――そこは、許可区域を大きく超える危険領域だった。
遠くから、風に紛れるような何かの視線を感じた。
シエラが違和感から僅かに背筋を伸ばしたその瞬間、チャコの小さな悲鳴を捉えた。
二.少年たちの魔物退治作戦
リオンとゼンジは、昼前に森に入った。日のあるうちは探索を行い、魔物が行動する夕刻から退治する計画だ。
ゼンジによると、修業の森の魔物は、群れで眠り、単独行動する習性がある。そのため、寝込みを襲うよりも活発な時間帯に単体討伐する方が安全なのだという。
森の入口で、門番が彼らを迎えた。
「今日は、もう一組、女子学生が採取許可を得て入っている。浅い場所にしか入らないことになっているが、事故があってはいけない。良く見極めてから攻撃行動に入るようにな」
ゼンジは静かに頷き、リオンに目を向けた。
「つまり、俺たちは森の奥へ行くのが正解ってことだ。」
リオンは緊張を押し殺しながらゼンジについて森に入る。思わず、剣を握りしめた。
森の奥へ進むにつれ、空気は次第に冷たくなり、湿った土の匂いと変な臭いが濃くなっていく。
足跡を見つけながら、慎重に進んでいくため、単に歩くよりもずっと疲れる。ゼンジは額の汗をぬぐう。
「この辺りで、一匹くらいいてもいいんだが。今日は奥に引っ込んでいるのかな?」
「出てこなくていいところでは、飛び出してくるってのに。オレって魔物運ないのかも。」
リオンの軽口に、ゼンジは少し安心して笑みを浮かべる。しかしすぐに、何かを察知して森の闇へ視線を向けた。
その先には音もない。しかし、すでに、異変が起き始めていた。
三.眠る魔物
「…嘘、でしょ……」
チャコの囁きは声にならず、震えていた。
そこには小さな森のようなものが、確かに息づいていた。その姿は圧倒的だった。鋭い牙、重厚な体躯、全身を覆う苔。そしてその下に鎧のような鱗。醜い鼻からは、イビキが漏れて静かな森に響いている。
「動かないで……ゆっくり下がろう。」
シエラは冷静を保ちつつ、チャコの腕を軽く引いた。しかし、チャコの腕は人形のように固まっていた。目も見開いたままで、動けない様子である。
(気絶させる?でも、音が…)
シエラが考えあぐねていたその瞬間――
チャコの腰からナイフが滑り落ちた。死体の解体用に用意していたものがベルトから外れてしまったのである。
硬い地面に金属がぶつかる。音が響く。少し間を開けて、魔物の目が、ゆっくりと開いた。
「……走って!」
シエラが叫んだ。チャコの腕を強く引きながら、全力で駆け出す。
巨大な魔物は低くうなり、地響きのような鳴き声を上げて立ち上がった。
「くっ……!」
チャコは必死に足を動かすが、恐怖で足がもつれる。
「シエラ……無理……」
背後から、魔物の息遣いが迫る。
逃げ切れない。
このままでは――
その瞬間、茂みから何かが飛び出す。鈍い音がドスンと響き、魔物がわずかな呻きと共に静かに倒れこむ。
二人が振り返ると、胸元に大きな槍が突き刺さった魔物の死骸が横たわっていた。
一撃だ。いったい誰が…、そう思った時、茂みから人影が現れた。
「危なかったな。人の獲物を狙った報いだぞ」
首元に獣の毛皮をまとう姿は、どう見ても兵学校の関係者ではない。歩く獣、そう形容したほうが良い大男。
「盗賊だ…」
チャコは絶望的な表情で、木々が隠す空を見上げた。
リオンとゼンジは、森の奥へ進んでいた。しかし、追っている痕跡は人の足跡だった。
彼らは今しがた、わずかな魔物の鳴き声を聞いた。ゼンジが魔物討伐の経験から、断末魔だと判断し、異常事態を察知したのである。
魔物がごく僅かな呻きで死んでしまうということは、一撃で瞬殺されたということだ。同族を襲う、凶暴な魔物が現れた恐れがある。
先に森に入ったとされる女学生たちが危険だ。彼らはそう判断し、女学生たちの捜索に目標を切り替えた。
「……あった。」
森の中、リオンが人の足跡を見つけた。それは乱れているが、よく見れば人の靴の型が確認できる。
「こんなもの、良く見つけるなあ。」
「すり足で消すとこうなるんだよね。でも、これはすぐにバレる。ほら…難民の知恵ってやつ。」
リオンは自分を落ち着かせるように、皮肉交じりの軽口をたたく。
森の中を消された足跡を頼りに進む。すると、リオンの視線が魔物の死骸を捉えた。森が生き物になったかのような、巨体だった。
そして、その横にはシエラと、もう一人女子生徒がいる。
そして、その近くに、毛皮をまとった男—魔物を倒したのは、こいつしか考えられない。
魔物の毛皮を背負っているかのような、野蛮な身なりと長身。鋭い眼光。それとはアンバランスな、黒く長い髪と端正な顔立ち。
彼は槍を引き抜き、魔物の亡骸を静かに見下ろしていた。
「……何者だ?」
ゼンジが警戒を強める。
この森で 、この魔物を一撃で倒せる存在――ただ者ではない。この男はきっと、
「盗賊だ」
ゼンジは呟きに、謎の男はにやりと笑った。
帝都の外れに広がる 緑地。それが修業の森である。そこは帝国建国に深く関わる場所と伝承されている。現在は、兵学校が管理する修業の場だ。
太古の昔、この森で戦士たちが魔物との激戦を繰り広げたという。帝国の英雄たちは魔物たちを打ち払い、人が住める土地を切り開いたという。しかし、時が流れてもなお、森に潜む魔物は完全に駆逐されることはなかった。
帝都の防衛と歴史遺産保護の観点から、森を焼き払うことは禁じられている。そのため、魔物の生息域を兵学校の管理下に置き、訓練場として活用することになったらしい。
基本的に、修業の森は下級生が最終試験で訪れる場だ。しかし、特別な許可を得れば、訓練や研究目的で入ることも可能である。
この日、四名、二組の生徒が修業の森の立ち入り許可を申請した。シエラとチャコ、そして、リオンとゼンジである。
一.少女たちの素材採取作戦
シエラとチャコは、魔物が活動しにくいとされる早朝から森に向かった。兵学校の許可を得て、森の浅い場所で魔物素材の採取 に挑んでいた。
「この森、村とは全く違う……」
シエラは森の入口で深く息を吸い込んだ。冷えた空気に混じる土と生臭い獣の匂い―それはどこか神秘的な雰囲気をも漂わせていた。
「日が出ているうちが勝負よ。急ぎましょう。」
チャコは手際よく道具を確認しながら、森へと歩みを進めた。彼女のねらいは、落ちている魔物素材の採取だ。剥がれ落ちた鱗や、新鮮な死体の皮が狙いだという。
チャコはお嬢様育ちに見えるが、魔物の解体には意外にも抵抗が無いらしい。
「気をつけてね、チャコちゃん。森の奥には入らないようにしないと……。」
「分かってるわよ。でも、いい素材を探さないと。そのためには、勇気も必要。」
チャコは慎重に地面を観察しつつ進んでいく。魔物の痕跡を探しながら、しかし、森の浅い部分を超えないように。
しかし、その警戒も慣れと素材集めの熱中には緩んでしまう。少女たちは次第に夢中になり、気づけば より深い場所へ足を踏み入れていた――そこは、許可区域を大きく超える危険領域だった。
遠くから、風に紛れるような何かの視線を感じた。
シエラが違和感から僅かに背筋を伸ばしたその瞬間、チャコの小さな悲鳴を捉えた。
二.少年たちの魔物退治作戦
リオンとゼンジは、昼前に森に入った。日のあるうちは探索を行い、魔物が行動する夕刻から退治する計画だ。
ゼンジによると、修業の森の魔物は、群れで眠り、単独行動する習性がある。そのため、寝込みを襲うよりも活発な時間帯に単体討伐する方が安全なのだという。
森の入口で、門番が彼らを迎えた。
「今日は、もう一組、女子学生が採取許可を得て入っている。浅い場所にしか入らないことになっているが、事故があってはいけない。良く見極めてから攻撃行動に入るようにな」
ゼンジは静かに頷き、リオンに目を向けた。
「つまり、俺たちは森の奥へ行くのが正解ってことだ。」
リオンは緊張を押し殺しながらゼンジについて森に入る。思わず、剣を握りしめた。
森の奥へ進むにつれ、空気は次第に冷たくなり、湿った土の匂いと変な臭いが濃くなっていく。
足跡を見つけながら、慎重に進んでいくため、単に歩くよりもずっと疲れる。ゼンジは額の汗をぬぐう。
「この辺りで、一匹くらいいてもいいんだが。今日は奥に引っ込んでいるのかな?」
「出てこなくていいところでは、飛び出してくるってのに。オレって魔物運ないのかも。」
リオンの軽口に、ゼンジは少し安心して笑みを浮かべる。しかしすぐに、何かを察知して森の闇へ視線を向けた。
その先には音もない。しかし、すでに、異変が起き始めていた。
三.眠る魔物
「…嘘、でしょ……」
チャコの囁きは声にならず、震えていた。
そこには小さな森のようなものが、確かに息づいていた。その姿は圧倒的だった。鋭い牙、重厚な体躯、全身を覆う苔。そしてその下に鎧のような鱗。醜い鼻からは、イビキが漏れて静かな森に響いている。
「動かないで……ゆっくり下がろう。」
シエラは冷静を保ちつつ、チャコの腕を軽く引いた。しかし、チャコの腕は人形のように固まっていた。目も見開いたままで、動けない様子である。
(気絶させる?でも、音が…)
シエラが考えあぐねていたその瞬間――
チャコの腰からナイフが滑り落ちた。死体の解体用に用意していたものがベルトから外れてしまったのである。
硬い地面に金属がぶつかる。音が響く。少し間を開けて、魔物の目が、ゆっくりと開いた。
「……走って!」
シエラが叫んだ。チャコの腕を強く引きながら、全力で駆け出す。
巨大な魔物は低くうなり、地響きのような鳴き声を上げて立ち上がった。
「くっ……!」
チャコは必死に足を動かすが、恐怖で足がもつれる。
「シエラ……無理……」
背後から、魔物の息遣いが迫る。
逃げ切れない。
このままでは――
その瞬間、茂みから何かが飛び出す。鈍い音がドスンと響き、魔物がわずかな呻きと共に静かに倒れこむ。
二人が振り返ると、胸元に大きな槍が突き刺さった魔物の死骸が横たわっていた。
一撃だ。いったい誰が…、そう思った時、茂みから人影が現れた。
「危なかったな。人の獲物を狙った報いだぞ」
首元に獣の毛皮をまとう姿は、どう見ても兵学校の関係者ではない。歩く獣、そう形容したほうが良い大男。
「盗賊だ…」
チャコは絶望的な表情で、木々が隠す空を見上げた。
リオンとゼンジは、森の奥へ進んでいた。しかし、追っている痕跡は人の足跡だった。
彼らは今しがた、わずかな魔物の鳴き声を聞いた。ゼンジが魔物討伐の経験から、断末魔だと判断し、異常事態を察知したのである。
魔物がごく僅かな呻きで死んでしまうということは、一撃で瞬殺されたということだ。同族を襲う、凶暴な魔物が現れた恐れがある。
先に森に入ったとされる女学生たちが危険だ。彼らはそう判断し、女学生たちの捜索に目標を切り替えた。
「……あった。」
森の中、リオンが人の足跡を見つけた。それは乱れているが、よく見れば人の靴の型が確認できる。
「こんなもの、良く見つけるなあ。」
「すり足で消すとこうなるんだよね。でも、これはすぐにバレる。ほら…難民の知恵ってやつ。」
リオンは自分を落ち着かせるように、皮肉交じりの軽口をたたく。
森の中を消された足跡を頼りに進む。すると、リオンの視線が魔物の死骸を捉えた。森が生き物になったかのような、巨体だった。
そして、その横にはシエラと、もう一人女子生徒がいる。
そして、その近くに、毛皮をまとった男—魔物を倒したのは、こいつしか考えられない。
魔物の毛皮を背負っているかのような、野蛮な身なりと長身。鋭い眼光。それとはアンバランスな、黒く長い髪と端正な顔立ち。
彼は槍を引き抜き、魔物の亡骸を静かに見下ろしていた。
「……何者だ?」
ゼンジが警戒を強める。
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