エターナル・ビヨンド~今度こそ完結しますように~

だいず

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1巻:動き出す歴史

第五話 第四章:突然の幕切れ 3~4

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 三、救出要請

 魔塔の来賓室で、僕は銀の皿に釘付けになっていた。ガタガタと揺れる視界、スムーズに進めない迷路の中で、状況は刻一刻と悪化している。
「ララア様!」
 僕は振り返ると、ソファで優雅に寛いでいるララア様に向かって叫んだ。
「お願いします、シエラたちを助けてください!このままじゃ――」
「なぜですか?」
 ララア様は立ち上がり、静かに問う。僕は、言葉に詰まってしまう。
「え?」
「なぜ、彼らを助けなければならないのでしょうか」
 ララア様は相変わらず穏やかな表情で、赤い瞳を僕に向けた。
「あの子たちは、敵国に勝手に侵入し、相手を騙して入り込んだ工作員です。それが危険な目に遭ったからといって、どうして助けなければならないのですか?あなたは一部始終を見ていて、記録もあるのでしょう?軍事上のリスクを冒しても、救助する理由がありますか?」
「そ、それは…彼らが友達だからです!」
「友達。なるほど」ララア様は小さく頷いた。「では、友達のためなら、どんなことでもするべきでしょうか?」
「当たり前じゃないですか!」
「本当に?では、もしその友達が殺人者だったら?泥棒だったら?あなたはそれでも助けますか?」
「そんな…シエラたちは違います」
「そうですね。では、最初に戻りましょう。彼らは何をしに行ったのでしょうか?」
「それは…情報収集と…」
「スパイ活動ですね。敵国の機密を探り、国家機密を盗む行為です。それは、泥棒と同じ、悪いことです。」
 ララア様の言葉が、僕の胸に突き刺さった。
「でも、それでも…」
「それでも?」
「僕にとって大切な人たちなんです」
 声が震えた。
「シエラは…リオンは…僕の友達で、大切な仲間で…だから…」
 涙が溢れ出してきた。膝から力が抜け、僕はララア様の前に跪いた。
「お願いします」
 僕は両手でララア様の足にしがみついた。涙で顔がぐちゃぐちゃになりながら、必死に訴えた。
「理由なんてどうでもいいんです。ただ…ただ助けてください。僕の大切な友達を助けてください。お願いします」
 ララア様は優しく僕の頭に手を置いた。
「そうですね。それなら、理由としては十分です。ありがとう。」

 皿の中では、リオンが王子とシエラに追いついていた。三人は迷路の行き止まりに追い詰められ、困惑している。そこへ、ゆっくりとした足音が響いてきた。
 現れたのは、薄手の服に身を包んだ痩せた男――フード―マだった。その後ろには、完全武装した騎士型の機械人形が控えている。こちらは庭師型とは違い、整然とした動きで剣を構えていた。
「第二王子殿下」
 フード―マは恭しく頭を下げた。
「ご苦労様でした。現王陛下がお呼びです。どうぞ、素直にご同行ください」
 王子は身を張ってシエラを庇いながら、フード―マを睨みつけた。
「兄上に会わせろ。僕が説得する」
「もちろんです。しかし、お連れの方々は、別室でお待ちいただくことになりますがね」
 フード―マはそう言いながら、シエラに近づいた。細い指で彼女の腕をなぞりながら、嫌らしく笑う。
「この娘を使えば、あなた好みの機械人形ができるでしょうね」
「触るな!」
 リオンが叫んで、フード―マの肩を激しく押しのけた。フード―マは意外そうな顔で、よろめきながらリオンを見つめた。
「おや、お前は…」
 しかし、それが引き金となった。騎士型機械人形は主への脅威に即座に反応し、剣を抜いてシエラに向かって斬りかかった。
「シエラ!」
 その瞬間、あたりが眩い光に包まれた。
「確認完了です」
 ララア様は静かに言い、部屋から消えてしまった。


 四、魔法少女、さっそうと登場

 騎士型機械人形の剣がシエラに向かって振り下ろされた、その瞬間だった。
 全てが、止まった。
 剣の軌跡が空中で静止し、フード―マの瞼は見開いたまま。王子の絶叫も、リオンの必死の表情も、全てが静寂に包まれる。
 そして――全てが巻き戻った。
 騎士型機械人形の剣が上に戻り、フード―マが口をもごもごさせて後ずさりした。その場にいた全ての機械人形は、後ろに引っ張られるように吹き飛ばされた。金属の塊が迷路の壁に激突し、バラバラになって地面に転がる。
 皆が状況を呑み込めないでいると、やや上方に、キラキラとした光の輪が現れた。
 その中央から、小さな頭がひょっこりと顔を出す。赤い瞳をした少女が、光の輪から顔だけを覗かせていた。翼のような形に結ばれた桃色の髪は、パタパタとはためいている。
「シエラ様、リオンたん。お迎えに上がりましたよ」
 少女は微笑みながら、シエラとリオンに向かって手を差し伸べた。二人は呆然としたまま、その小さな手を握る。
 フードーマが何か言おうとするのを、ララアは人差し指で静止した。目を細め、一言残す。
「この私があなたを殺しますから…!」
 ララアがにこりと微笑むと、光の輪が再び現れ、三人の姿を包み込む。
「王子!」
 シエラは思わず叫んだが、その声は光に呑み込まれていく。次の瞬間、三人の姿は跡形もなく消え去った。
 残されたのは、呆然と立ち尽くす王子とフード―マだけだった。

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