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5.友人とのお別れ
こちら側の非で公爵令息との婚約が破棄となるのです。相当な額の慰謝料を請求されるでしょう。
その訴えは認められ、我が家は支払いに応じる形となります。
ですが、男爵家の中でも弱小の分類に入るツィトー家の財力などちっぽけなものです。
私に選択の余地など最初から用意されていなかったのです。
貴族社会において女性の役割なんてこんなものです。一族の将来のために愛していないし、信頼もしていない男の私物となる。そんなことよくある話なのですから。
慰謝料を払うか、愛人になるか。一週間後に返事をするようにと手紙には書いてありました。
両親は今すぐにと、鼻息を荒くしていましたが、色々準備がしたいと言って制止しました。……物理的な準備なんて殆どなく、現実を受け止める時間が欲しかっただけですけれどね。
それに一つだけ絶対にしておきたいことがありました。
大切な友人とのお別れです。
私は机に向き合うと羽ペンを手に取りました。
約二年間、お父様とお母様にも内緒でこっそり続けている文通。
お相手は他国の男爵令嬢とのことです。少し前まではこの国に暮らしていたそうですが、訳あって国を出たという話。深い事情があるのでしょう。あまり詮索しないでおくことにしました。
私より三つ年下のマリエッタという少女。手紙での語り合いで必要な情報なんて、それだけで十分です。
リネオ様の下に行っても文通することは出来るでしょう。
ですが、マリエッタの存在を万が一知られた時、リネオ様が何を仕出かすか分かりません。私の状況を書いた手紙をマリエッタに送りつけることくらいはしそうです。
私が婚約破棄された挙げ句、愛人となったことなど彼女に知られたくない。知られる恐れがあるのなら、別れを告げた方がいいと思いました。
これまで私と文通を続けてくれたことへのお礼。それと別れの言葉を書いてから私は溜め息をつきました。
あっという間に一週間が経ちました。
私はリネオ様への手紙を書くために自室に籠もっていました。お母様に「あとで私たちに手紙を読ませてね」と言われているので、妙なことは書けません。
とにかくリネオ様に媚びるような文章を。自分にそう言い聞かせて、他のことは何も考えないようにして紙の上にインクを走らせていると、部屋の外が何やら騒がしくなり始めました。
困惑と喜びが入り混じるような両親の声。私の脳裏に浮かんだのはリネオ様です。
まさか直接返事を聞きに来たのでは……。
果たしてリネオ様と会って私は平静でいられるでしょうか。様子を見に行くか悩んでいると、部屋のドアを乱暴に叩く音がしました。
「さっさと出て来いラピス! お前に会いたいとのことだ!」
お父様でした。やはりリネオ様がいらっしゃったようです。
観念してドアを開くと、苛立った表情をしたお父様が立っていました。
「まったく、お前は一体何をしたというのだ……」
「……何の話でしょうか?」
「そんなの私が聞きたいくらいだ。さっさと来い!」
お父様に連れられて向かったのは貴賓室。そこで待っていたのはにやけた顔をしたリネオ様──ではなく、金髪の美しい少女。
その姿を見た途端、私は全身から汗が噴き出すような緊張感に襲われました。
「まあっ、あなたがラピス様でしょうか? 初めまして、わたくしはマリエッタと申します」
「はい。ぞ、存じております……」
知らないはずがありません。リネオ様よりも大物が来てしまいました。
マリエッタ様はこの国の第一王女です。
何故この御方がツィトー家に!? パニックを起こしかけている私ですが、おおよその見当はついています。出来れば違っていて欲しいのですが……。
立ち尽くす私の下にマリエッタ様が笑顔で駆け寄ります。
そして私の両手をぎゅっと握って仰いました。
「やっとお会いすることが出来ました。わたくしがあなたの文通相手です!」
ああ、やはりそうでしたか……。緊張が頂点に達して、私はその場に座り込んでしまいました。
その訴えは認められ、我が家は支払いに応じる形となります。
ですが、男爵家の中でも弱小の分類に入るツィトー家の財力などちっぽけなものです。
私に選択の余地など最初から用意されていなかったのです。
貴族社会において女性の役割なんてこんなものです。一族の将来のために愛していないし、信頼もしていない男の私物となる。そんなことよくある話なのですから。
慰謝料を払うか、愛人になるか。一週間後に返事をするようにと手紙には書いてありました。
両親は今すぐにと、鼻息を荒くしていましたが、色々準備がしたいと言って制止しました。……物理的な準備なんて殆どなく、現実を受け止める時間が欲しかっただけですけれどね。
それに一つだけ絶対にしておきたいことがありました。
大切な友人とのお別れです。
私は机に向き合うと羽ペンを手に取りました。
約二年間、お父様とお母様にも内緒でこっそり続けている文通。
お相手は他国の男爵令嬢とのことです。少し前まではこの国に暮らしていたそうですが、訳あって国を出たという話。深い事情があるのでしょう。あまり詮索しないでおくことにしました。
私より三つ年下のマリエッタという少女。手紙での語り合いで必要な情報なんて、それだけで十分です。
リネオ様の下に行っても文通することは出来るでしょう。
ですが、マリエッタの存在を万が一知られた時、リネオ様が何を仕出かすか分かりません。私の状況を書いた手紙をマリエッタに送りつけることくらいはしそうです。
私が婚約破棄された挙げ句、愛人となったことなど彼女に知られたくない。知られる恐れがあるのなら、別れを告げた方がいいと思いました。
これまで私と文通を続けてくれたことへのお礼。それと別れの言葉を書いてから私は溜め息をつきました。
あっという間に一週間が経ちました。
私はリネオ様への手紙を書くために自室に籠もっていました。お母様に「あとで私たちに手紙を読ませてね」と言われているので、妙なことは書けません。
とにかくリネオ様に媚びるような文章を。自分にそう言い聞かせて、他のことは何も考えないようにして紙の上にインクを走らせていると、部屋の外が何やら騒がしくなり始めました。
困惑と喜びが入り混じるような両親の声。私の脳裏に浮かんだのはリネオ様です。
まさか直接返事を聞きに来たのでは……。
果たしてリネオ様と会って私は平静でいられるでしょうか。様子を見に行くか悩んでいると、部屋のドアを乱暴に叩く音がしました。
「さっさと出て来いラピス! お前に会いたいとのことだ!」
お父様でした。やはりリネオ様がいらっしゃったようです。
観念してドアを開くと、苛立った表情をしたお父様が立っていました。
「まったく、お前は一体何をしたというのだ……」
「……何の話でしょうか?」
「そんなの私が聞きたいくらいだ。さっさと来い!」
お父様に連れられて向かったのは貴賓室。そこで待っていたのはにやけた顔をしたリネオ様──ではなく、金髪の美しい少女。
その姿を見た途端、私は全身から汗が噴き出すような緊張感に襲われました。
「まあっ、あなたがラピス様でしょうか? 初めまして、わたくしはマリエッタと申します」
「はい。ぞ、存じております……」
知らないはずがありません。リネオ様よりも大物が来てしまいました。
マリエッタ様はこの国の第一王女です。
何故この御方がツィトー家に!? パニックを起こしかけている私ですが、おおよその見当はついています。出来れば違っていて欲しいのですが……。
立ち尽くす私の下にマリエッタ様が笑顔で駆け寄ります。
そして私の両手をぎゅっと握って仰いました。
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ああ、やはりそうでしたか……。緊張が頂点に達して、私はその場に座り込んでしまいました。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4800文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。