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23.そんな……(リネオ視点)
屋敷に戻れば、僕を出迎える使用人はもう誰もいない。まだ爵位剥奪までには期間があるっていうのに、全員辞めてしまったから。
しかも揃いも揃って、僕たちに暴言を吐き捨てていくんだ!
「どうか平民になってもお元気で。まあ、元気でいられるかは分かりませんが」
「いつかリネオ様がやらかす時が来ると思ってましたが、案外早かったですね」
「ラピス様はさっさと逃げて正解でしたね。こんな人と結婚なんてしたら苦労続きだったろうし」
誰がお前たちを雇ってやっていたと思っているんだ!
薄情な奴ら過ぎる。
「はい、リネオ。今晩の食事よ」
何これ……。固めのパンと野菜のクズしか入ってないスープが出てきた。
柔らかいふわふわなパンは?
甘くてとろりとしたポタージュは?
濃いソースがかかった肉汁たっぷりの牛肉ステーキは?
食後の冷たいシャーベットは?
「我慢してちょうだい、リネオ。今後のためにあまりお金は使えないのよ」
「そんなこと言ったって、昨日もこんな夕飯だったじゃん……」
「昨日は鶏肉のソテーがついていただろ」
そう言って父上がパンを千切ってスープに浸している。
どこか馬鹿にしたような言い方に、僕はむっとした。
「あんなの鶏肉じゃないよ。パサパサしてて臭くて、飲み込むのにどんだけ時間がかかったと思ってんの?」
「まあ、何てことを言うの!? 私が一生懸命焼いたのに……!」
母上がわざとらしく泣きそうな声を出す。あ~、やだやだ。しおらしいところを見せれば許してくれると思ってるのかな?
僕たちのご飯をこれから作っていくのも、掃除も、洗濯もやるのは母上だ。でもこんなんじゃ先行きが不安って言うかさぁ。
安いパンは保存性もあるらしいけど、その分固くて味もいまいち。だから父上と同じように、スープに浸して食べて見るけど……。
「まっずいよ、これぇ。食べられたもんじゃないね」
「リネオ、お前……」
「ねえ、食べ盛りの息子がお腹空かせてるんだよ? もっと食べ応えがあって美味しいのないの~?」
僕は知っているんだ。家具や母上のアクセサリーを売って結構お金が出来たことを。
今後のためにあまり使えないとは言うけど、可愛い息子が空腹を訴えているなら使うべきだよ。
「……分かった」
父上は大きく息を吐いてから、三枚の紙幣を僕に突き出した。
そうそう、こういうこと。材料を買って来ても、どうせ母上じゃまともに作れない。
だったら金を貰って外で食べて来た方がいいでしょ!
「これで足りるか?」
よく分からないけど、まあ一食分にはなるだろ。僕はそれを握り締めて屋敷を出た。
あ~、久しぶりに食べた食べた。それにデザートも食べれて酒も飲めたし、幸せな気分だ。
以前の食事には劣るレベルだけど、母上のまずい料理を食べるよりは全然ましだった。
こんな感じなら平民になってもいけ……。
「あ、あれ?」
屋敷に帰ってみると、どうしてか真っ暗になっていた。父上も母上ももう寝たのかな。
明日の朝食代ももらうつもりだったけど、まあ明日でもいいや。今夜は僕も寝よう……。
おかしいと気付いたのは翌日。いくら待っても父上と母上が起きて来ない。もう昼近くだ。
ふざけんな、僕はお腹が空いたぞ! 叩き起こすついでに二人を起こしに行ったけど、寝室はもぬけの殻だった。
もしかして僕への嫌がらせで、どこか高い宿屋に泊まりに行ったのか!?
そう思ってキッチンに残されていたスープの残りを飲みながら、あいつらの帰りを待った。
だけどいくら待っても帰って来ない。
……もしかして僕、置いて行かれた?
しかも揃いも揃って、僕たちに暴言を吐き捨てていくんだ!
「どうか平民になってもお元気で。まあ、元気でいられるかは分かりませんが」
「いつかリネオ様がやらかす時が来ると思ってましたが、案外早かったですね」
「ラピス様はさっさと逃げて正解でしたね。こんな人と結婚なんてしたら苦労続きだったろうし」
誰がお前たちを雇ってやっていたと思っているんだ!
薄情な奴ら過ぎる。
「はい、リネオ。今晩の食事よ」
何これ……。固めのパンと野菜のクズしか入ってないスープが出てきた。
柔らかいふわふわなパンは?
甘くてとろりとしたポタージュは?
濃いソースがかかった肉汁たっぷりの牛肉ステーキは?
食後の冷たいシャーベットは?
「我慢してちょうだい、リネオ。今後のためにあまりお金は使えないのよ」
「そんなこと言ったって、昨日もこんな夕飯だったじゃん……」
「昨日は鶏肉のソテーがついていただろ」
そう言って父上がパンを千切ってスープに浸している。
どこか馬鹿にしたような言い方に、僕はむっとした。
「あんなの鶏肉じゃないよ。パサパサしてて臭くて、飲み込むのにどんだけ時間がかかったと思ってんの?」
「まあ、何てことを言うの!? 私が一生懸命焼いたのに……!」
母上がわざとらしく泣きそうな声を出す。あ~、やだやだ。しおらしいところを見せれば許してくれると思ってるのかな?
僕たちのご飯をこれから作っていくのも、掃除も、洗濯もやるのは母上だ。でもこんなんじゃ先行きが不安って言うかさぁ。
安いパンは保存性もあるらしいけど、その分固くて味もいまいち。だから父上と同じように、スープに浸して食べて見るけど……。
「まっずいよ、これぇ。食べられたもんじゃないね」
「リネオ、お前……」
「ねえ、食べ盛りの息子がお腹空かせてるんだよ? もっと食べ応えがあって美味しいのないの~?」
僕は知っているんだ。家具や母上のアクセサリーを売って結構お金が出来たことを。
今後のためにあまり使えないとは言うけど、可愛い息子が空腹を訴えているなら使うべきだよ。
「……分かった」
父上は大きく息を吐いてから、三枚の紙幣を僕に突き出した。
そうそう、こういうこと。材料を買って来ても、どうせ母上じゃまともに作れない。
だったら金を貰って外で食べて来た方がいいでしょ!
「これで足りるか?」
よく分からないけど、まあ一食分にはなるだろ。僕はそれを握り締めて屋敷を出た。
あ~、久しぶりに食べた食べた。それにデザートも食べれて酒も飲めたし、幸せな気分だ。
以前の食事には劣るレベルだけど、母上のまずい料理を食べるよりは全然ましだった。
こんな感じなら平民になってもいけ……。
「あ、あれ?」
屋敷に帰ってみると、どうしてか真っ暗になっていた。父上も母上ももう寝たのかな。
明日の朝食代ももらうつもりだったけど、まあ明日でもいいや。今夜は僕も寝よう……。
おかしいと気付いたのは翌日。いくら待っても父上と母上が起きて来ない。もう昼近くだ。
ふざけんな、僕はお腹が空いたぞ! 叩き起こすついでに二人を起こしに行ったけど、寝室はもぬけの殻だった。
もしかして僕への嫌がらせで、どこか高い宿屋に泊まりに行ったのか!?
そう思ってキッチンに残されていたスープの残りを飲みながら、あいつらの帰りを待った。
だけどいくら待っても帰って来ない。
……もしかして僕、置いて行かれた?
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