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24.レン様と私
「わたくし、初めからレアンドル様はラピス様のような女性がお好みだと確信しておりました」
「げほっ」
「ラピス様!?」
本日はマリエッタ様とのお茶会です。
甘さ控えめ、ドライフルーツが入ったクッキーを摘まみつつ世間話で盛り上がっていたら突然、レアンドル様の話になり、驚いて咳き込んでしまいました。
顔が熱いのは呼吸が苦しくなったせいでしょう。恥ずかしいからではありません。断じて!
「失礼致しました、マリエッタ殿下」
「いいえ、わたくしの方こそごめんなさいね。お二人がやっといい仲になったと知って、はしゃいでしまいました」
「え、そ、それは……」
もしかしてレアンドル様がご報告されたのでしょうか。私が動揺していると、マリエッタ様は小さな笑い声を零しました。
「ちなみにレアンドル様からは何も報告を受けておりませんよ。あの方がご自身の恋の進捗状況など明かすはずがありませんので」
「でしたら何故……?」
レアンドル様……いえ、レン様との関係に変化が生じたことは、まだ誰にも話していません。マリエッタ様がどうやってお気付きになったのか、皆目検討がつかないのですが……。
不思議に思っていると、マリエッタ様は「王女の勘というものです」と仰り、澄んだ笑い声を発しました。
「それにラピス様はともかく、レアンドル様は分かりやすいですからね。とても」
「そうなのですか?」
「だって彼ってばラピス様のお勉強の時間になると、表情が柔らかくなるのです」
その時のレン様を想像すると、擽ったいような気持ちになりました。
確かに彼は、言葉よりも表情で語るタイプですからね……。
「……ですが、マリエッタ殿下。私には分かりません」
「何がでしょう?」
「レアンドル様が私に惹かれた理由です」
初対面での印象はいいものではなかったと思います。それに可愛げがなく、年頃の女性らしい華やかな会話も出来ない私に好意を抱けるものでしょうか。
「うふふ、確かにラピス様はちょっとお堅いところがありますね」
「は、はい……」
「ですが、そんな部分にレアンドル様は惹かれたのだと思いますよ。……ラピス様はレアンドル様とお話していて疲れることはありましたか?」
「いいえ、一度も」
これはリネオ様に限った話ではないのですが、私が政治や経済の話をすると多くの男性は眉を顰めるのです。
「女の分際で政治に口出しをするな」と言葉をぶつけられたこともあります。
ですがレン様は不快に思われるどころか、ご自分からそういった話題を出してくださいます。時に互いの意見がぶつかり合う時もありますが、最終的には相手の言い分を理解し合って終わりますね。
……あまり恋人らしいやり取りではない気がしますが。
「実はレアンドル様は見目は素晴らしいのですが、『頭が固くてお話していても全然楽しくない』と令嬢の方々からの評判が悪かったのです。平民からは自分たちのことをしっかり考えてくれて、差別もしないと人気があるようですけれど」
「まあ……」
「ですからレアンドル様は内心嬉しかったと思いますよ? 自分と相性ピッタリな女性がようやく現れたことが」
もしかしたらマリエッタ様はこうなることを分かって、レン様を私の教育係に?
いえ、それは流石に考え過ぎでしょう……。
お茶会が終わり、自室に戻る最中でした。困惑した表情で兵士に声をかけられました。
「ラピス様との面会を求める者たちが正門に居座っているようでして……如何なさいますか?」
「……私の元婚約者でしょうか?」
マーロア家は数日前に爵位剥奪により、平民となりました。もはやマーロア家ですらありません。
リネオ様が私に助けを求める可能性があることは、レン様とマリエッタ様も仰っていました。
面会には応じないつもりです。何があっても。
そう思っていたのですが。
「ツィトー男爵夫婦とヒスライン男爵令嬢でございます……」
「…………」
一応お会いしてみますか……。
「げほっ」
「ラピス様!?」
本日はマリエッタ様とのお茶会です。
甘さ控えめ、ドライフルーツが入ったクッキーを摘まみつつ世間話で盛り上がっていたら突然、レアンドル様の話になり、驚いて咳き込んでしまいました。
顔が熱いのは呼吸が苦しくなったせいでしょう。恥ずかしいからではありません。断じて!
「失礼致しました、マリエッタ殿下」
「いいえ、わたくしの方こそごめんなさいね。お二人がやっといい仲になったと知って、はしゃいでしまいました」
「え、そ、それは……」
もしかしてレアンドル様がご報告されたのでしょうか。私が動揺していると、マリエッタ様は小さな笑い声を零しました。
「ちなみにレアンドル様からは何も報告を受けておりませんよ。あの方がご自身の恋の進捗状況など明かすはずがありませんので」
「でしたら何故……?」
レアンドル様……いえ、レン様との関係に変化が生じたことは、まだ誰にも話していません。マリエッタ様がどうやってお気付きになったのか、皆目検討がつかないのですが……。
不思議に思っていると、マリエッタ様は「王女の勘というものです」と仰り、澄んだ笑い声を発しました。
「それにラピス様はともかく、レアンドル様は分かりやすいですからね。とても」
「そうなのですか?」
「だって彼ってばラピス様のお勉強の時間になると、表情が柔らかくなるのです」
その時のレン様を想像すると、擽ったいような気持ちになりました。
確かに彼は、言葉よりも表情で語るタイプですからね……。
「……ですが、マリエッタ殿下。私には分かりません」
「何がでしょう?」
「レアンドル様が私に惹かれた理由です」
初対面での印象はいいものではなかったと思います。それに可愛げがなく、年頃の女性らしい華やかな会話も出来ない私に好意を抱けるものでしょうか。
「うふふ、確かにラピス様はちょっとお堅いところがありますね」
「は、はい……」
「ですが、そんな部分にレアンドル様は惹かれたのだと思いますよ。……ラピス様はレアンドル様とお話していて疲れることはありましたか?」
「いいえ、一度も」
これはリネオ様に限った話ではないのですが、私が政治や経済の話をすると多くの男性は眉を顰めるのです。
「女の分際で政治に口出しをするな」と言葉をぶつけられたこともあります。
ですがレン様は不快に思われるどころか、ご自分からそういった話題を出してくださいます。時に互いの意見がぶつかり合う時もありますが、最終的には相手の言い分を理解し合って終わりますね。
……あまり恋人らしいやり取りではない気がしますが。
「実はレアンドル様は見目は素晴らしいのですが、『頭が固くてお話していても全然楽しくない』と令嬢の方々からの評判が悪かったのです。平民からは自分たちのことをしっかり考えてくれて、差別もしないと人気があるようですけれど」
「まあ……」
「ですからレアンドル様は内心嬉しかったと思いますよ? 自分と相性ピッタリな女性がようやく現れたことが」
もしかしたらマリエッタ様はこうなることを分かって、レン様を私の教育係に?
いえ、それは流石に考え過ぎでしょう……。
お茶会が終わり、自室に戻る最中でした。困惑した表情で兵士に声をかけられました。
「ラピス様との面会を求める者たちが正門に居座っているようでして……如何なさいますか?」
「……私の元婚約者でしょうか?」
マーロア家は数日前に爵位剥奪により、平民となりました。もはやマーロア家ですらありません。
リネオ様が私に助けを求める可能性があることは、レン様とマリエッタ様も仰っていました。
面会には応じないつもりです。何があっても。
そう思っていたのですが。
「ツィトー男爵夫婦とヒスライン男爵令嬢でございます……」
「…………」
一応お会いしてみますか……。
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