【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵

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本編

11 .辺境伯領②

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 部屋にはグランデ家の侍従セボスを相手に、ブリトニーを連れたデニスが文句を言っているらしい。



「だから、俺の部屋はここじゃなかっただろう?」

「ですが、デニス様はこちらのお部屋をと申しつかっていますので……」

「いらっしゃいデニス。久しぶりね。ブリトニーさんもようこ……」

「ステファニー、良いところに! お前からも言ってくれよ」

「ちょっと待って。何があったの?」



 いきなり話を振られて私は混乱した。



「セボスが俺の部屋はここだって言うんだ」

「え? デニスの部屋? ここで間違ってないわ」

「はぁ? お前なに言ってるんだ? 俺がいつも使っていた部屋はここじゃないだろう?」



 そう言われてやっと意味が分かった。

 去年まではデニスが私の婚約者で婿も同然だったから、デニスの部屋は辺境伯本家の家族が使う東棟の一室だったのだ。

 でも今年はもう私との縁が無くなって、分家の一人に戻った。

 だから普通の客間に変わっている。

 それをデニスは忘れているんだわ。



「デニス。あなたはブリトニー嬢と結婚するのでしょう?」

「そうだけど?」

「だから今年はこの部屋なのよ」

「はぁ? それとこれとは関係ないだろう」



 困ったわね。

 今は頭に血が上ってて正しい判断ができてないんだわ。

 どう言ったら分かってもらえるのかしら?



「とにかくこんなところで大きな声で話しても良くないわ。どうか落ち着いて話しましょう。セボス。悪いけどお茶をお願いできるかしら?」



 私は部屋の応接セットに座るように促してみる。

 デニスは不服そうで立っていたけど、ブリトニー嬢はくたびれていたみたいで、デニスの袖を引いて三人掛けのソファーにピッタリ身を寄せて座ってくれた。 

 私も戸口に立って待ってくれていたブラッドに『座ろう』と目で合図した。

 学園は一緒だし、同じ騎士科だから知っているはずなのに、胡乱うろんな目を向けられて困ってしまう。

 でも、ブラッドに席を外させる必要性を感じなかった私は、肩をすくめて視線をやり過ごした。
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