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本編
42.疑惑③ 〈メイシー&シンシアside〉
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〈メイシー&シンシアside〉
家同士の約束で、ほぼ結婚は決まっているが、正式な婚約の手続きはまだされていない。
そして本人たちも恋愛感情がなさそうな、幼馴染みの二人。
ブラッドリーはそんなデニスとステファニーをどう思っただろう?
「ブリトニーは……? 彼女はなぜデニスと付き合い始めましたの?」
「え?」
「勘違いとはいえ、デニスが辺境伯を継げると思ってらしたのですよね?」
「それがどうかしたの?」
「彼女はそれまで、結婚しても王都に住めるような、王都から近い領地のご子息狙いでしたでしょう?」
「うーん。そう言われるとそうね。でも辺境伯なら、逆に遠過ぎてシーズン中はずっとタウンハウスに居られるんじゃない?」
「彼女は『一年中王都で暮らしたい』と言っていたと、そう聞きましたけど……」
納得いかないシンシアにメイシーが怪訝そうな顔をする。
「そう言えばヘンね。……誰かに何か言われたとか?」
その言葉にシンシアは思わずメイシーを凝視した。
「誰かに何かって……何ですの?」
聞かれたメイシーの目が泳ぎ、シンシアと目が合って二人はどちらとも無く目を逸らした。
「それは分からないけど……でも、デニスも爵位を継げるって知ったら、あの見た目と剣の腕よ? ブリトニーが他の人よりデニスのほうが良いかもって思っても不思議じゃ無い……かも?」
「そうですわね……。ステファニーとデニスの関係性なら、デニスと結婚できなくてもそれほどステファニーが落ち込まないって、よく見てたら分かりそうですしね」
「じゃあ……誰かが二人を出会わせた、とか?」
「……だだ会わせただけで、付き合うように焚き付けられます?」
「それは……ブリトニーは玉の輿狙いだし……面食いだし……」
「そうなると、可能性は高いかしら?」
「それで無いなら、二人がくっつくような事を直接されたんじゃない? デニスに『ブリトニーがあなたに気があるみたい』とか言ったとか?」
「さすがにそれは……彼が言いますの?」
「違うわよ。誰かに言わせるの。そうしたらデニスだもの、信じるわよ」
「そこまで浅はかかしら? いえ……でもデニスですものね」
「有り得なくも……無さそうな……」
二人の脳裏には、黒髪に蒼い瞳で酷薄そうに笑む青年の姿が浮かんでいたが、慌ててぐちゃぐちゃにして消した。
「まさか……さすがに考え過ぎよね?」
「えぇ、ただの妄想ですわ」
二人は無言で深く頷き合った。
家同士の約束で、ほぼ結婚は決まっているが、正式な婚約の手続きはまだされていない。
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「え?」
「勘違いとはいえ、デニスが辺境伯を継げると思ってらしたのですよね?」
「それがどうかしたの?」
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「誰かに何かって……何ですの?」
聞かれたメイシーの目が泳ぎ、シンシアと目が合って二人はどちらとも無く目を逸らした。
「それは分からないけど……でも、デニスも爵位を継げるって知ったら、あの見た目と剣の腕よ? ブリトニーが他の人よりデニスのほうが良いかもって思っても不思議じゃ無い……かも?」
「そうですわね……。ステファニーとデニスの関係性なら、デニスと結婚できなくてもそれほどステファニーが落ち込まないって、よく見てたら分かりそうですしね」
「じゃあ……誰かが二人を出会わせた、とか?」
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「それは……ブリトニーは玉の輿狙いだし……面食いだし……」
「そうなると、可能性は高いかしら?」
「それで無いなら、二人がくっつくような事を直接されたんじゃない? デニスに『ブリトニーがあなたに気があるみたい』とか言ったとか?」
「さすがにそれは……彼が言いますの?」
「違うわよ。誰かに言わせるの。そうしたらデニスだもの、信じるわよ」
「そこまで浅はかかしら? いえ……でもデニスですものね」
「有り得なくも……無さそうな……」
二人の脳裏には、黒髪に蒼い瞳で酷薄そうに笑む青年の姿が浮かんでいたが、慌ててぐちゃぐちゃにして消した。
「まさか……さすがに考え過ぎよね?」
「えぇ、ただの妄想ですわ」
二人は無言で深く頷き合った。
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