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現実のエドウィン①
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次に目を覚ましたのは、またもや事情を聞かれたあの相談室。
「え? なに? なんでここ?」
驚きをそのまま口にしてキョロキョロ見回すと……さっきと違い教師ではなく騎士服を纏った中年の男性が扉の横に立っていた。
ただ、パナピーアの取り乱した姿を見ても、彼の感情はまったく動かなかったらしい。
真面目な顔を崩す事なく、冷静な瞳で注視されたパナピーアはこれでほんの少し冷静になる。
「えーと、あたし何でここに?」
「…………」
返事は無い──ただの屍のようだ……って、そうじゃないわと自分でツッコんだ。
パナピーアの半分はゲーム、残りは妄想でできている。
めげない彼女は気を取り直しもう一度声をかけてみた。
「あなたが助けてくれたとか……では無いのよね?」
「…………」
騎士は何の反応も見せず、身動き一つしない。
しかし状況把握するためには何か喋ってくれないと困る。
彼女が再度何か言おうとしたその時。
ノックも無しにドアが開いた。
「エドウィン様!」
思わず駆け寄ろうとして手で制される。
「お前に私の名を口にする許しを与えたつもりは無いが?」
「え? あ……」
パナピーアは忘れていた。
自分がまだこの世界では誰の名前も教えられていない事実を……。
「あの、申し訳ありません……?」
パナピーアは萎らしく見えるように座った。
エドウィンは向かい側の椅子にドカリと座り足を組み、その隣からアンセムが冷たい眼差しで睨みを利かせている。
ガイウスはパナピーアの顔が見える位置の壁に寄りかかって腕を組んだ。
パナピーアはこの冷えびえとした空気の中、上目遣いに目だけ動かし様子を見た。
エドウィンはそれをマルっと無視。
感情の見えない冷たい眼差しでパナピーアを睨む。
「あの林で何をしていた?」
「え?」
「今日入学した新入生なのだろう? ほかの者は皆家族と面会をしている時間だぞ? それなのになぜお前だけあのような場所にいた?」
エドウィンの声音は低く視線は鋭い。
入学式の壇上で見せた微笑を知っているだけにギャップが激しく『別人では?』と疑うレベルだ。
そしてパナピーアはこれに答えられなかった。
もし特別寮を探して彷徨いていたと知られたら?
今はまだ誰の好感度も上がっていない──誰も味方してくれない状態では、さすがに疑われたら言い逃れができず罪に問われるだろう事は知っている。
「お前は私に会いに来たのではなかったのか?」
「へ?」
思いがけないことを言われ、パナピーアは目を瞬いた。
エドウィンはカマをかけるつもりで聞いたのだが、それは彼女に伝わっていない。
それどころか、この場にいる誰もが思いもよらない方向に閃いていた。
あ!
もしかしてエドウィン様はあたしのこと待ってたの?
そうだ、そうに違いない。
きっとエドウィン様も転生者で、ヒロインのあたしと結ばれるのが正解なんだって知ってるんじゃないかしら?
謎のポジティブ思考の結果、根拠のない自信を胸に彼女はニッコリ笑う。
「エドウィン様もあたしの事が好きなんですね?」
「「「はぁ⁉︎」」」
三人の貴公子の声が重なった。
綺麗な重奏である。
そしてそれぞれの顔に怒気が宿る。
「だって、待っててくれてたのに、来るのが遅かったから怒っているのでしょう?」
「はぁ? そんなワケあるか!」
「あらら……。顔真っ赤で震えちゃってたらバレバレですって!」
エドウィンは血管がブチ切れそうなほどの怒りを必死で耐えた。
口を開けば罵倒の言葉しか出そうにないが、ここで怒りのまま振る舞って醜態を晒したくない。
しかしパナピーアは、それらすべてを照れ隠しと受け取った。
のちにエドウィンは『人間なのに人の言葉が通じないのが、これほど不気味なものとは思わなかった……』と語っている。
「あ、もしかしてアンセム様も? 私がアンセム様ルートを選ばないで、エドウィン様一筋になって欲しかったんですか? ──アンセム様って真面目だし、逆ハーは許せないのかな? それとも王家至上主義だから⁉︎ あの設定本当だったんだ!」
途中からは独り言に近かったので全部は聞こえなかったが、それでも彼女の不気味さは伝わった。
アンセムは言葉の嵐に驚きつつ、魔物を警戒するかのような慎重さで口を開く。
「キミは何を言ってる? あの廊下でも猪のように突進して来て……。やはり頭がおかしかったのか……」
「え? 何? どういう事?」
本気で訳が分からなそうなパナピーアに三人は戦慄する。
もうこのまま騎士団に引き渡してしまいたい。
しかしいくら気が進まない事でも、このまま問題を放り出すなどできない。
エドウィンは今一度気を引き締め尋問を再開した。
「もう一度聞く。あの林で何をしていた?」
エドウィンの鋭い声音もゲーム内で慣れていたパナピーアは動揺しない。
むしろレアボイスを生で聴けるとはご褒美だ。
うっとりするパナピーアに、エドウィンたちはドン引きしている。
「え? だから迷子になっちゃって……テヘ」
彼女はお約束通り舌を出してウインクを決め、エドウィンは明からさまに目を逸らす。
露骨に嫌がられているのだが、まだ照れ隠しと思っているようで『ヤダ、かわいい~!』と呟かれ、エドウィンの腕に鳥肌が立った。
「え? なに? なんでここ?」
驚きをそのまま口にしてキョロキョロ見回すと……さっきと違い教師ではなく騎士服を纏った中年の男性が扉の横に立っていた。
ただ、パナピーアの取り乱した姿を見ても、彼の感情はまったく動かなかったらしい。
真面目な顔を崩す事なく、冷静な瞳で注視されたパナピーアはこれでほんの少し冷静になる。
「えーと、あたし何でここに?」
「…………」
返事は無い──ただの屍のようだ……って、そうじゃないわと自分でツッコんだ。
パナピーアの半分はゲーム、残りは妄想でできている。
めげない彼女は気を取り直しもう一度声をかけてみた。
「あなたが助けてくれたとか……では無いのよね?」
「…………」
騎士は何の反応も見せず、身動き一つしない。
しかし状況把握するためには何か喋ってくれないと困る。
彼女が再度何か言おうとしたその時。
ノックも無しにドアが開いた。
「エドウィン様!」
思わず駆け寄ろうとして手で制される。
「お前に私の名を口にする許しを与えたつもりは無いが?」
「え? あ……」
パナピーアは忘れていた。
自分がまだこの世界では誰の名前も教えられていない事実を……。
「あの、申し訳ありません……?」
パナピーアは萎らしく見えるように座った。
エドウィンは向かい側の椅子にドカリと座り足を組み、その隣からアンセムが冷たい眼差しで睨みを利かせている。
ガイウスはパナピーアの顔が見える位置の壁に寄りかかって腕を組んだ。
パナピーアはこの冷えびえとした空気の中、上目遣いに目だけ動かし様子を見た。
エドウィンはそれをマルっと無視。
感情の見えない冷たい眼差しでパナピーアを睨む。
「あの林で何をしていた?」
「え?」
「今日入学した新入生なのだろう? ほかの者は皆家族と面会をしている時間だぞ? それなのになぜお前だけあのような場所にいた?」
エドウィンの声音は低く視線は鋭い。
入学式の壇上で見せた微笑を知っているだけにギャップが激しく『別人では?』と疑うレベルだ。
そしてパナピーアはこれに答えられなかった。
もし特別寮を探して彷徨いていたと知られたら?
今はまだ誰の好感度も上がっていない──誰も味方してくれない状態では、さすがに疑われたら言い逃れができず罪に問われるだろう事は知っている。
「お前は私に会いに来たのではなかったのか?」
「へ?」
思いがけないことを言われ、パナピーアは目を瞬いた。
エドウィンはカマをかけるつもりで聞いたのだが、それは彼女に伝わっていない。
それどころか、この場にいる誰もが思いもよらない方向に閃いていた。
あ!
もしかしてエドウィン様はあたしのこと待ってたの?
そうだ、そうに違いない。
きっとエドウィン様も転生者で、ヒロインのあたしと結ばれるのが正解なんだって知ってるんじゃないかしら?
謎のポジティブ思考の結果、根拠のない自信を胸に彼女はニッコリ笑う。
「エドウィン様もあたしの事が好きなんですね?」
「「「はぁ⁉︎」」」
三人の貴公子の声が重なった。
綺麗な重奏である。
そしてそれぞれの顔に怒気が宿る。
「だって、待っててくれてたのに、来るのが遅かったから怒っているのでしょう?」
「はぁ? そんなワケあるか!」
「あらら……。顔真っ赤で震えちゃってたらバレバレですって!」
エドウィンは血管がブチ切れそうなほどの怒りを必死で耐えた。
口を開けば罵倒の言葉しか出そうにないが、ここで怒りのまま振る舞って醜態を晒したくない。
しかしパナピーアは、それらすべてを照れ隠しと受け取った。
のちにエドウィンは『人間なのに人の言葉が通じないのが、これほど不気味なものとは思わなかった……』と語っている。
「あ、もしかしてアンセム様も? 私がアンセム様ルートを選ばないで、エドウィン様一筋になって欲しかったんですか? ──アンセム様って真面目だし、逆ハーは許せないのかな? それとも王家至上主義だから⁉︎ あの設定本当だったんだ!」
途中からは独り言に近かったので全部は聞こえなかったが、それでも彼女の不気味さは伝わった。
アンセムは言葉の嵐に驚きつつ、魔物を警戒するかのような慎重さで口を開く。
「キミは何を言ってる? あの廊下でも猪のように突進して来て……。やはり頭がおかしかったのか……」
「え? 何? どういう事?」
本気で訳が分からなそうなパナピーアに三人は戦慄する。
もうこのまま騎士団に引き渡してしまいたい。
しかしいくら気が進まない事でも、このまま問題を放り出すなどできない。
エドウィンは今一度気を引き締め尋問を再開した。
「もう一度聞く。あの林で何をしていた?」
エドウィンの鋭い声音もゲーム内で慣れていたパナピーアは動揺しない。
むしろレアボイスを生で聴けるとはご褒美だ。
うっとりするパナピーアに、エドウィンたちはドン引きしている。
「え? だから迷子になっちゃって……テヘ」
彼女はお約束通り舌を出してウインクを決め、エドウィンは明からさまに目を逸らす。
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