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第二話 赤ずきん
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石川と陣内が案内された東北中央署の捜査本部には、夕方にもかかわらず署長以下お偉いさんが顔を揃えていた。
「すいません、遅くなりました。警視庁捜査一課から派遣されました石川と陣内です」
如何にも現場の刑事らしい腹からの太い声が、捜査本部として区切られた会議室に響いた。
「お待ちしておりました。ここではもう十年はこのような殺人事件は起こっていないんです。是非とも経験豊富な警視庁の方に助言をいただければとお呼びしたんです!」
気さくな感じの署長が喜んで石川たちを迎え入れた。
すぐに、石川たちも捜査状況の報告を次々と受け捜査の輪の中に入っていった。
「遺体は延岡美咲十八歳、都内在住の高校生です。二ヶ月前に行方不明で捜索依頼が出ています」
「最寄りの駅の監視カメラは?」
報告する刑事に石川がすぐに聞いた。
「いいえ、この近辺の駅にはありません。時間帯によっては、無人の駅もあるぐらいですから」
言いにくそうに答えた。
「厳しいな……」
石川はそう呟いて腕を組んだ。
「じゃあ、目撃者は?」
「すいません、それも出てきてはいません」
それに追い打ちを掛けるように、別の刑事が報告する。
「さらに悪いことに、発見現場の湖なんですが、すでに凍結が始まっていまして、潜水士による湖底の調査は来年三月以降になりそうなんです……」
石川は自分の顔が自然と引きつっていくのが分かった。(どうすりゃあ良いんだよ!)
大声を出して頭を掻きむしりたい石川だったが、それをこらえて隣に座った陣内に話を振った。
「何かないか? 俺達に出来ることは」
話を振られた陣内は、考えながら話し出した。
「被害者のスマホはまだ発見されていないのですよね……でも、今時の高校生なら持っているはずですね、肌見放さず……」
陣内は、サイバーセキュリティーの人間から聞いた話を思い出し石川に提案する。
「石川さん、被害者のスマホさえ特定出来れば、接続会社に問い合わせて位置情報も分かるんじゃあないでしょうか?」
「待て! スマホはたぶん湖の中だぞ」
いまさら、位置を特定してもどうなるんだと、石川が聞き返した。
「違います! スマホの履歴です。何処を通って何処で消えたか。何か足取りが掴めませんかね?」
陣内のアイデアに石川は即座に飛びつく。
「そうか、よし! 被害者のスマホの接続会社に至急問い合わせて、失踪時の詳しい位置情報と通信履歴を調べるんだ! もう一人失踪者がいるんだよな。そいつも同様にだ!」
これなら湖底を探さなくても、何かつかめるかも知れない。捜査本部が慌ただしく動き出した。
☆ ☆ ☆
慌ただしく動き出した刑事たちの中で、陣内は一人スマホを見ながら難しい顔をしていた。
「どうした? これはもしかしたら、お前のおかげで案外早く決着が着くかもしれないぞ!」
石川が肩を叩くが、陣内の反応が思ったより薄い。気になってのぞき込んだ石川に陣内が不安そうな顔で言った。
「石川さん、おかしいんですよ……さっきの娘、少し前まで矢継ぎ早にライン送って来てたのに、ぱったり止まって……。今、心配になったので通話したら、圏外か電源が切れているってアナウンスなんですよ」
「圏外って、この辺は田舎だからな……」
陣内を安心させようと言ったのだが、隣りにいた駐在の天草がすぐに否定した。
「この辺は田舎ですけど、圏外になる場所はさすがに道から外れた山奥ぐらいしかないです!」
「旅行に来てるからには、予備バッテリーぐらい持ってくるよな……」
石川の呟きに、さらに不安をつのらせた陣内は立ち上がった。
「石川さん!」
「ああ、行ってみるか。ここで待っていても、らちがあかないからな。天草さん、良いですか?」
「はい、わたしがご案内します! 行きましょう」
そう言って三人は吹雪の中、ヒナタの向かったはずの病院へと向かったのだった。
「すいません、遅くなりました。警視庁捜査一課から派遣されました石川と陣内です」
如何にも現場の刑事らしい腹からの太い声が、捜査本部として区切られた会議室に響いた。
「お待ちしておりました。ここではもう十年はこのような殺人事件は起こっていないんです。是非とも経験豊富な警視庁の方に助言をいただければとお呼びしたんです!」
気さくな感じの署長が喜んで石川たちを迎え入れた。
すぐに、石川たちも捜査状況の報告を次々と受け捜査の輪の中に入っていった。
「遺体は延岡美咲十八歳、都内在住の高校生です。二ヶ月前に行方不明で捜索依頼が出ています」
「最寄りの駅の監視カメラは?」
報告する刑事に石川がすぐに聞いた。
「いいえ、この近辺の駅にはありません。時間帯によっては、無人の駅もあるぐらいですから」
言いにくそうに答えた。
「厳しいな……」
石川はそう呟いて腕を組んだ。
「じゃあ、目撃者は?」
「すいません、それも出てきてはいません」
それに追い打ちを掛けるように、別の刑事が報告する。
「さらに悪いことに、発見現場の湖なんですが、すでに凍結が始まっていまして、潜水士による湖底の調査は来年三月以降になりそうなんです……」
石川は自分の顔が自然と引きつっていくのが分かった。(どうすりゃあ良いんだよ!)
大声を出して頭を掻きむしりたい石川だったが、それをこらえて隣に座った陣内に話を振った。
「何かないか? 俺達に出来ることは」
話を振られた陣内は、考えながら話し出した。
「被害者のスマホはまだ発見されていないのですよね……でも、今時の高校生なら持っているはずですね、肌見放さず……」
陣内は、サイバーセキュリティーの人間から聞いた話を思い出し石川に提案する。
「石川さん、被害者のスマホさえ特定出来れば、接続会社に問い合わせて位置情報も分かるんじゃあないでしょうか?」
「待て! スマホはたぶん湖の中だぞ」
いまさら、位置を特定してもどうなるんだと、石川が聞き返した。
「違います! スマホの履歴です。何処を通って何処で消えたか。何か足取りが掴めませんかね?」
陣内のアイデアに石川は即座に飛びつく。
「そうか、よし! 被害者のスマホの接続会社に至急問い合わせて、失踪時の詳しい位置情報と通信履歴を調べるんだ! もう一人失踪者がいるんだよな。そいつも同様にだ!」
これなら湖底を探さなくても、何かつかめるかも知れない。捜査本部が慌ただしく動き出した。
☆ ☆ ☆
慌ただしく動き出した刑事たちの中で、陣内は一人スマホを見ながら難しい顔をしていた。
「どうした? これはもしかしたら、お前のおかげで案外早く決着が着くかもしれないぞ!」
石川が肩を叩くが、陣内の反応が思ったより薄い。気になってのぞき込んだ石川に陣内が不安そうな顔で言った。
「石川さん、おかしいんですよ……さっきの娘、少し前まで矢継ぎ早にライン送って来てたのに、ぱったり止まって……。今、心配になったので通話したら、圏外か電源が切れているってアナウンスなんですよ」
「圏外って、この辺は田舎だからな……」
陣内を安心させようと言ったのだが、隣りにいた駐在の天草がすぐに否定した。
「この辺は田舎ですけど、圏外になる場所はさすがに道から外れた山奥ぐらいしかないです!」
「旅行に来てるからには、予備バッテリーぐらい持ってくるよな……」
石川の呟きに、さらに不安をつのらせた陣内は立ち上がった。
「石川さん!」
「ああ、行ってみるか。ここで待っていても、らちがあかないからな。天草さん、良いですか?」
「はい、わたしがご案内します! 行きましょう」
そう言って三人は吹雪の中、ヒナタの向かったはずの病院へと向かったのだった。
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