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第二話 赤ずきん
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吹雪の中、長崎は二時間遅れでようやく駅に着いた列車から、降りてきたほろ酔い気分の両親を家に送りとどけた。
「竜也、ありがとうな! 助かったよ」
赤ら顔で感謝する父親に、
「俺はこれからまた出るから、戸締りして先に寝ちゃって」
そう言って、長崎は再び車を出した。
「アイツからの連絡はないが、たぶん上手くやっているだろう。前と同じ様に……」
ミラーに写った長崎の顔はだらしなくニヤけていた。
☆ ☆ ☆
(再び4ヶ月前)
宮崎明日香は、今、自分が何処にいるのか全く理解できずにいた。
「長崎さん、気が付いたみたいですよ」
メガネを外され、ぼやけた視線の先に知らない男の顔が近付く。
明日香は動こうとして初めて気付いた。手も足も動かない、何かベルトのようなモノで拘束されているのだ。
少しづつ記憶が戻ってくる。確か、長崎って言う男の人の車に乗って、何か飲み物を飲んだような……。
「おはよう、明日香ちゃん! 良く寝てたようだね」そう言って、声をかけてきたのはそのさっき知り合った男だった。
ぼやける視線で目をすがめて凝視すると、そこには自分の知っているのとは全く違う長崎の顔があった。
「だから言っただろう。知らない男にはついて行っちゃあダメだって!」
笑いながら長崎は外れていたメガネをつけ直し、強引に明日香のアゴを上げ唇を奪う。
「やっぱり、メガネっ子はメガネをしていないとね。魅力が半減しちゃうよ」
拘束されている明日香には抗うすべは何もなかった。
「長崎さん、俺にも次お願いしますね」
後ろからニヤついた顔で島原が言った。
「待ってろ、お前にも食わせてやるよ! そう急かすな」
明日香の叫び声は、ボイラーの音にかき消されていった。
☆ ☆ ☆
(再び2ヶ月前)
延岡美咲は暗闇の中で目を覚ました。
「確か……長崎さんと言う親切な男の人の車に乗って、カフェオレをいただいて……」
思い出した記憶と現在の状況が全く合致しない。
さらに手足が動かず、暗闇では何も分からない。
「パチッ!」
スイッチを入れる音がして、辺りが急に明るくなる。
「うっ、」
しばらくして目が慣れてきた美咲に見えた光景は……。
コンクリートの無機質な天井とそこを這う何本もの配管だった。
「ここは、何処なの?」
美咲の思わず呟いた声に動く人影があった。
「おっと、やっと気が付いたね」
覗き込んできたのは、全く知らない男だった。
「長崎さん! 女、気が付きましたよ」
その声に見知った男が近付いてきた。
美咲に紅葉を見せてくれると言った、長崎だった。
「美咲ちゃんだっけ? キミが悪いんだからね。誘っていただろ? 俺はただ答えただけ、ちょっと趣向を凝らしただけだから……」そう言って、美咲の長い髪をもてあそぶように口づけてから、嬉しそうに身動きの取れない美咲の上にまたがり、服のボタンを強引に外した。
「いや、止めて! お願いだから……」
美咲のすがるような声もボイラーの蒸気音に打ち消されたのだった。
☆ ☆ ☆
長崎は病院に向かう道すがら、以前の二人の女たちの事を思い出していた。
「しばらく遊び尽くしてから、一人は動かなくなり。もう一人はおかしくなちまったんで、島原に処分させたっけな……」
黒いスマホをチラッと見てから続けてひとり言を言った。
「島原とはこの飛ばしスマホでの連絡オンリーだ、病院の監視カメラも把握済み……。やばくなったらアイツを自殺に見せかけて殺しちまえば、俺との繋がりは全く無くなる……」
長崎はどうだとばかりバックミラーに映った自分の顔を見る、我ながら極悪人の顔だと思った。
長崎はふと思い出す。何年か前、まだ東京にいた頃のこと。髪の短い女が後ろから抱きつきながら耳元でささやいたあの声を……。
「そう、あなたなら出来るわよ。ばれそうになったら他のヤツに全部かぶせちゃえば良いじゃない」そんな甘いささやきが長崎の血を逆流させる。(そうだ、俺なら出来る!)
「俺は絶対捕まらない!」
そう自分に宣言し、下品な笑い声をあげた。
長崎の車は病院の裏口、監視カメラに写らない場所へと入っていく。全てを降りつける雪が隠していった。
「竜也、ありがとうな! 助かったよ」
赤ら顔で感謝する父親に、
「俺はこれからまた出るから、戸締りして先に寝ちゃって」
そう言って、長崎は再び車を出した。
「アイツからの連絡はないが、たぶん上手くやっているだろう。前と同じ様に……」
ミラーに写った長崎の顔はだらしなくニヤけていた。
☆ ☆ ☆
(再び4ヶ月前)
宮崎明日香は、今、自分が何処にいるのか全く理解できずにいた。
「長崎さん、気が付いたみたいですよ」
メガネを外され、ぼやけた視線の先に知らない男の顔が近付く。
明日香は動こうとして初めて気付いた。手も足も動かない、何かベルトのようなモノで拘束されているのだ。
少しづつ記憶が戻ってくる。確か、長崎って言う男の人の車に乗って、何か飲み物を飲んだような……。
「おはよう、明日香ちゃん! 良く寝てたようだね」そう言って、声をかけてきたのはそのさっき知り合った男だった。
ぼやける視線で目をすがめて凝視すると、そこには自分の知っているのとは全く違う長崎の顔があった。
「だから言っただろう。知らない男にはついて行っちゃあダメだって!」
笑いながら長崎は外れていたメガネをつけ直し、強引に明日香のアゴを上げ唇を奪う。
「やっぱり、メガネっ子はメガネをしていないとね。魅力が半減しちゃうよ」
拘束されている明日香には抗うすべは何もなかった。
「長崎さん、俺にも次お願いしますね」
後ろからニヤついた顔で島原が言った。
「待ってろ、お前にも食わせてやるよ! そう急かすな」
明日香の叫び声は、ボイラーの音にかき消されていった。
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「確か……長崎さんと言う親切な男の人の車に乗って、カフェオレをいただいて……」
思い出した記憶と現在の状況が全く合致しない。
さらに手足が動かず、暗闇では何も分からない。
「パチッ!」
スイッチを入れる音がして、辺りが急に明るくなる。
「うっ、」
しばらくして目が慣れてきた美咲に見えた光景は……。
コンクリートの無機質な天井とそこを這う何本もの配管だった。
「ここは、何処なの?」
美咲の思わず呟いた声に動く人影があった。
「おっと、やっと気が付いたね」
覗き込んできたのは、全く知らない男だった。
「長崎さん! 女、気が付きましたよ」
その声に見知った男が近付いてきた。
美咲に紅葉を見せてくれると言った、長崎だった。
「美咲ちゃんだっけ? キミが悪いんだからね。誘っていただろ? 俺はただ答えただけ、ちょっと趣向を凝らしただけだから……」そう言って、美咲の長い髪をもてあそぶように口づけてから、嬉しそうに身動きの取れない美咲の上にまたがり、服のボタンを強引に外した。
「いや、止めて! お願いだから……」
美咲のすがるような声もボイラーの蒸気音に打ち消されたのだった。
☆ ☆ ☆
長崎は病院に向かう道すがら、以前の二人の女たちの事を思い出していた。
「しばらく遊び尽くしてから、一人は動かなくなり。もう一人はおかしくなちまったんで、島原に処分させたっけな……」
黒いスマホをチラッと見てから続けてひとり言を言った。
「島原とはこの飛ばしスマホでの連絡オンリーだ、病院の監視カメラも把握済み……。やばくなったらアイツを自殺に見せかけて殺しちまえば、俺との繋がりは全く無くなる……」
長崎はどうだとばかりバックミラーに映った自分の顔を見る、我ながら極悪人の顔だと思った。
長崎はふと思い出す。何年か前、まだ東京にいた頃のこと。髪の短い女が後ろから抱きつきながら耳元でささやいたあの声を……。
「そう、あなたなら出来るわよ。ばれそうになったら他のヤツに全部かぶせちゃえば良いじゃない」そんな甘いささやきが長崎の血を逆流させる。(そうだ、俺なら出来る!)
「俺は絶対捕まらない!」
そう自分に宣言し、下品な笑い声をあげた。
長崎の車は病院の裏口、監視カメラに写らない場所へと入っていく。全てを降りつける雪が隠していった。
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