サークル主俺、アンソロ寄稿者に“販売担当者”呼ばわりされた挙句、サークルを乗っ取られた件

月代零

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2.名無しの字書き

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 そして、アンソロジーの参加メンバーも決まり、企画は順調に動き出した。俺は表紙はどんなものにしようか、装丁はどうしよう、ノベルティは何がいいかなと、うきうきしながら考えていた。その前に原稿を書かなきゃだけど。

 参加者は全員、優良進行の神だった。締め切り前に、続々と原稿が揃った。好きな作家の書き下ろし作品が、一番に読める。アンソロ主宰の特権だね。公募で応募してきた人たちの原稿も、面白いものばかりだった。
 その状況で、主宰が締め切りに遅れるわけにはいかない。俺も何とか、意地で原稿を書き上げた。

 原稿が揃ったら、後は俺が頑張らないと本が出ない。原稿をチェックしながら、編集作業を日々行った。本文の他にも目次や扉、奥付けを作り、サイズを揃えてページ番号を入れる。時間との勝負だ。

 そんな中、件のAからは、小説を書くのは初めてだから、おかしなところがないか見てほしいと、あらかじめ言われていた。しかし、締め切りよりもだいぶ前に、なんなら参加者の中で一番に届いたAの作品を読んだ俺の感想は、初めて書いたのならこんなのもかな、というものだった。悪いけど。

 誤字や脱字が多い他、てにをはの使い方がおかしかったり、単語の誤用も随所にあった。何と言うか、下手な自動翻訳をした外国語みたいだった。こんな文章を書く人だっただろうかと思うレベルだった。

 そして、肝心のストーリーはというと……ツッコミどころが多くて、色々指摘してしまった。正直、キャラの造形や、物語中の出来事にリアリティがなくて、読んでいる最中ずっと頭に「?」マークが浮かんでいた。何かを誤学習したAIが書いた文章のようだった。俺はアンソロの主宰だから頑張って読んだけど、もしこれをネットで見かけたとしても、最初の数行で読むのを止められてしまうのではないかと思った。

 それらをオブラートに包んで返信し、数日後「直しました」とAから再び原稿が送られてきた。俺はさっそくそれを開いて読んだが……指摘した箇所は、言い回しを変えただけで、根本的な解決にはなっていなかった。
 再びそれを指摘したが、暖簾に腕押しというか、いまいち理解してもらえないようだった。何回か同じような指摘を繰り返したが、全く改善されなかった。

 その過程で、場面によってフォントや文字サイズを変えたり、挿絵を入れてきたり(AIで生成したような画像だった)してきたことがあり、ちょっとイラっとした。挿絵は今回募集していないし、フォントや文字サイズを変えるのも、通常の小説ではやらない。やっている作品もあるかもしれないけど、Aは叫ぶ台詞のフォントを大きく太字にしたりとか、明らかに余計なことをしてきた。それらはテキストエディタのデフォルトの設定だったら効果的に見えるかもしれないけど、今回の本は文庫サイズだ。そのサイズに編集したら、バランスがおかしくなるし、それをきれいに見えるように編集してやる義理もない。余計なことをしないでほしい。

 俺も辟易して、時間もなくなってきたし、そのような演出は今回は不可、もういいので内容もこのまま入稿すると伝えた。でも、もしかしたらこの時点で参加を断るべきだったのかもしれない。
 けどまあ、冷静に考えたら、俺だって人様の作品にあれこれ言えるような立場じゃないし、作品に優劣をつけるのが、このアンソロの目的ではない。よほどふざけたものでない限り、提出された作品はそのまま掲載するべきだろう。そう思い直した。

 そして、全ての作業を終え、後は印刷所に原稿データを送るだけになった段階で、Aからメッセージが来た。なんと、書き直したので差し替えさせてほしいという内容だった。

 しかし、俺も仕事の合間に活動している社会人だ。もう本来の締め切りは過ぎているし、編集し直す余裕もない。これ以上伸ばせば印刷所の早割も利かなくなり、印刷代が高くなってしまう。アンソロジーはページ数も発行部数も多いから、早割と言っても元から印刷代は高めだ。今からの差し替えは無理だった。

 うんざりしながら、申し訳ないがそれはできかねると返信し、俺は印刷データを入稿した。これで、秋のイベントで無事本が出せる。参加者の皆も、SNSでイベントや本の宣伝をしてくれていた。

 ところが、ひとまず役目を終えてほっとしていた俺の目に、ある投稿が目に飛び込んできた。
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