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第6話 影の国
4 風は夜空をこえて
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風はすさまじい速さで、夜をとびこえていった。
きらめく王都をあっというまに抜けて、草原を走り、山々をこえた。
広がる夜空に、溶けてしまいそうだ。
砂漠を吹きぬけながら、そんなことを思った。
だが、砂漠をこえて岩山と岩山のあいだにすべりこんだかと思うと、その先には、またあの夢のような街明かりの王都が見えた。
「戻ってきたの?」
るりなみの問いかけに、風の子は「いや」と答えた。
「いつもの街じゃないのがわかるだろう、るりなみ」
そう言いながら、風の子は王都のまわりを囲む城壁の外におりた。
「俺様が案内できるのはここまでだ。るりなみ、おりても大丈夫だよ」
風の背からおりると、るりなみは城壁を見あげた。
「この先は、影の国だ」
風の子は人の姿になって、深刻な顔つきでそう言った。
るりなみは背すじが震えた。
「ここからは、世界がひっくりかえっているらしい。そこは、心の世界なのだとも言われているんだ。るりなみ、心をしっかり持つんだぞ」
「うん、大丈夫」
「震えているぞ、るりなみ」
だが、そう言う風の子も、がちがちに緊張しているように顔がこわばっていた。
るりなみはそんな風の子を見て、ふ、と微笑んで、手をさし出した。
「ありがとう」
風の子はその手をにぎるようにひゅっ、とかすめると、風の姿に戻った。
「気をつけろよ、るりなみ! 影の国がどうなるか、上空で見ててやるよ!」
風の子はそう言い残し、はるか空の上のほうへと去っていった。
るりなみは深呼吸をして、城壁の門を改めて見あげた。
門は、まだ開かれたことのない分厚い本のように、重々しく閉ざされている。
……どうやったら、この門は開くんだろう。
るりなみはそう思いながらも、扉に手を触れた。
すると、るりなみは気づかなかったのだが……るりなみの足もとから、るりなみの影がひょい、と扉の下をくぐり、門の向こうに伸びていった。
そして、ぎぎぎ、と重い音をたてて、扉が向こうに開いた。
扉の向こうには、誰もいない。
ひとりでに開いたかのような扉に、るりなみはびっくりした。
るりなみの影が先に国の中へ入ったから開いたのだ、とは、思いもしなかった。
るりなみの影は誰にも気づかれることなく、るりなみの足もとに戻った。
* * *
きらめく王都をあっというまに抜けて、草原を走り、山々をこえた。
広がる夜空に、溶けてしまいそうだ。
砂漠を吹きぬけながら、そんなことを思った。
だが、砂漠をこえて岩山と岩山のあいだにすべりこんだかと思うと、その先には、またあの夢のような街明かりの王都が見えた。
「戻ってきたの?」
るりなみの問いかけに、風の子は「いや」と答えた。
「いつもの街じゃないのがわかるだろう、るりなみ」
そう言いながら、風の子は王都のまわりを囲む城壁の外におりた。
「俺様が案内できるのはここまでだ。るりなみ、おりても大丈夫だよ」
風の背からおりると、るりなみは城壁を見あげた。
「この先は、影の国だ」
風の子は人の姿になって、深刻な顔つきでそう言った。
るりなみは背すじが震えた。
「ここからは、世界がひっくりかえっているらしい。そこは、心の世界なのだとも言われているんだ。るりなみ、心をしっかり持つんだぞ」
「うん、大丈夫」
「震えているぞ、るりなみ」
だが、そう言う風の子も、がちがちに緊張しているように顔がこわばっていた。
るりなみはそんな風の子を見て、ふ、と微笑んで、手をさし出した。
「ありがとう」
風の子はその手をにぎるようにひゅっ、とかすめると、風の姿に戻った。
「気をつけろよ、るりなみ! 影の国がどうなるか、上空で見ててやるよ!」
風の子はそう言い残し、はるか空の上のほうへと去っていった。
るりなみは深呼吸をして、城壁の門を改めて見あげた。
門は、まだ開かれたことのない分厚い本のように、重々しく閉ざされている。
……どうやったら、この門は開くんだろう。
るりなみはそう思いながらも、扉に手を触れた。
すると、るりなみは気づかなかったのだが……るりなみの足もとから、るりなみの影がひょい、と扉の下をくぐり、門の向こうに伸びていった。
そして、ぎぎぎ、と重い音をたてて、扉が向こうに開いた。
扉の向こうには、誰もいない。
ひとりでに開いたかのような扉に、るりなみはびっくりした。
るりなみの影が先に国の中へ入ったから開いたのだ、とは、思いもしなかった。
るりなみの影は誰にも気づかれることなく、るりなみの足もとに戻った。
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