女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第13話 魔女を探し求めて

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「クッ!」
 両手で地面を掴み必死で抵抗するが、驚くほどの強さで触手はアリアを引っ張ろうとする。
「マズいわ……。このままでは……」

 その時、ゴオッという風を切る音と共に何やらオレンジ色のものが空を舞って飛んで来た。
「えっ? 炎?」
 はっ、とよく見ると子供の頭ほどの火球である。炎の玉が後ろから飛んで来たのだった。

 火球はすぐに、アリアが引き込まれようとしている茂みに向かって真っすぐに飛んで行った。
 やがて緑の向こうにオレンジ色が消えたかと思うと、小さな爆発音のようなものがして、一気に炎がたちのぼった。

 パチパチと小枝が爆ぜる音に交じって、布を割くような耳障りな音が聞こえてきた。どうやら、魔物の断末魔の声であるらしい。
 何が起こったのか分からず茫然としているアリアの後ろで、若い女の声がした。

「ふう。辛うじて間に合ったわね。」
 

 アリアが振り向くとそこには、何とも派手な出で立ちの若い女が立っていた。
 真っ白でタイトなロングドレスを身に着けているが、胸元は大きく開き、こぼれそうに豊かな胸を覗かせており、襟の周りは金の飾りで彩られている。
 首にも金の首輪をはめ、おまけにそれらの装飾と同じくらい煌びやかな金髪を、頭の後ろのやや上のあたりで大きく一つにまとめて上げていた。

「もう大丈夫よ。ドリアードは火に弱いの」
 派手な女はそう言いながらアリアのそばへ近づいてきた。服の大部分が身体に密着しているため、動くたびに艶めかしい身体の線が明らかになる。
 腰から伸びるスリットが、美しい脚をしっかりと見せていた。

「ドリアード?」
 傍らに膝をついて助け起こしてくれた女に、アリアは訊ねた。
「そうよ。さっきの魔物の名前。アイツに捕まったら魔物の精を飲まされて、種を植え付けられちゃうのよ」
 ということは先ほどの火球は炎の魔法で、この女性は魔法使いということか。アリアは得心した。

「とは言っても……」
 女はアリアの大きく膨らんだ腹を見てやや眉をしかめた。
「もう飲まされちゃってるもんね……。まあいいわ、すぐに出させてあげる」
 そう言うと女は手に持っていた銀色の杖をアリアの腹にかざして、何やら口の中で唱え始めた。

 杖の先は明るい光を灯している。すぐにその光は大きくなりアリアの腹へと吸い込まれたかと思うと、しばらくして今度は腹から光が浮き上がってきた。
 急に気分が良くなったのを感じたアリアが腹を見ると、さっきまでの臨月の妊婦のような腹の膨らみはスッキリと消えていた。

「凄い……。有難うございます。危ないところを助けていただいて」
「いいのよ。でも気を付けなきゃダメよ。森には他にも魔物がいるんだから。まあ私ぐらいの魔法使いなら一人でも平気だけどね」
 ようやく礼が言えたアリアに、魔法使いの女は嫣然と微笑みかけた。
 女のアリアでも驚くような美女である。

「アンタも見たところ騎士のようだし、それなりに遣い手なんでしょうけど、とにかく油断しないことね。それでなくても女の一人旅は物騒なんだから」
 自分のことは棚に上げて忠告している。それとも自分は身を守り切る自信があるのだろうか。
「で、どこへ行くの?」

 事情を話すわけにはいかないアリアは、とりあえずアーフェンガルド城下の知り合いのところへ、とだけ答えておいた。
「そう。じゃあアタシも国境の街までついて行ってあげる。あなたこの森は初めてなんでしょう? その様子じゃまだ危なそうだからね」

 どうやら魔法使いはこの森のことは相当詳しいらしく、街までの道すがら、近道だと言って獣道を抜けることしばしばだった。
 魔物にも一、二度出会ったが、何なく倒してくれた。かなりの実力らしい。
 魔法の使い手は、昔に比べると減っているとは聞いていたが、それでも十分な強さである。

 やがて木々が徐々に数を減らし、視界が開けてきた。
 まっすぐに伸びる道の向こうに街が見えている。

「あれが国境の街、ワレンハイムよ。アーフェンガルドの都レナルディアはそのまた向こうにあるわ」
 美貌の魔法使いはスラリとした足を伸ばし、眩しそうに手のひらを額に当てて、片方の手で街の遠景を指さして言った。
「私の案内はここまで。気を付けていってらっしゃいね」

 アリアは馬から降りて恩人に訊ねた。
「貴女はこれからどうなさるのですか?」
「私はちょっと用があるから、またね」
 しなやかな手を軽く振って、女は去って行った。
 
 その背中に、アリアは声をかけた。
「あの、お名前をお聞かせ下さい」
 派手な格好の女は、後ろ姿のままこう言った。
「ただの通りすがりの魔法使いよ、女騎士さん」


 次の日。アリアの姿はアーフェンガルド王国の王城、シュテルネンリヒト城内にあった。
 城門のところで衛兵に侍従への取次ぎを頼み、やってきた初老の侍従にバルコニア皇帝のクレイオスⅡ世から預かった書状を見せると、さほど待たされることもなく城内へ招じ入れられた。

 マグダレーナ・ジークリンデ・フォン・ベルムバッハ。それが、大陸全土に聞こえた魔法大国アーフェンガルド王国の現在の君主の名である。
 歳は四十代の半ば。女王としての威厳を示すかのように、黒髪を大きくまとめている。
 濃い目の化粧とやや吊り上がり気味の目尻のせいで、威圧的な印象を与えているが、それも君主としての計算のうちであろう。

 その女王が今、アリアの前に鎮座している。一通り、クレイオスⅡ世からの書状を読み終えて、皮肉っぽく話しかけてきた。
「なるほどな。マルヴェローナの伝説の盾に、わずか一度の戦闘で傷がついたか。そなた、よほど乱暴に扱ったのではないか?」

 アリアは畏まって答える。
「滅相もございません。魔物の攻撃を幾度か防いだだけにございます」
「さようか。まあそんなことはどうでも良い。要するに、時が惜しいゆえバルコニアで盾のひび割れを直している間に、破邪の魔法につうじた魔法使いを連れ帰りたいと、そういうことだな」

「御意にございます、女王陛下。魔王の軍勢は強力で、こうしている間にも幾つもの街が敵の手に落ちております。しかしながら、伝説の盾無くして奴らと戦うことはできませぬ」
 アリアはさらに低頭して懇願した。
「誠に畏れ多いことながら、何卒ご助力を賜りますよう、伏してお願い申し上げます」

「ふむ」
 と一言低く頷くと、女王は従者を招き寄せた。
「エルネストを呼べ」

 ほどなくして大扉が開けられ、痩せぎすで背の高い中年の紳士が現れた。紺色のビロードのローブを羽織り、右目には片眼鏡モノクルをかけている。細身の割には貫禄のある口髭を蓄えていた。

「お呼びと伺いました。女王陛下」
 恭しく頭を下げる。
「ご苦労、エルネスト。ここへ参れ」

 エルネストと呼ばれた男に、女王はことの顛末をかいつまんで聞かせた。

「ほう……あの魔法が破られたとは……」
「うむ。盾は今バルコニアにあるため、どのような状態であるかはわからぬがな」
「なんにせよ、たった一度の戦いで傷つき、ひびを生じるなどとは面妖ですな。よほどの強敵であったのでしょうか」
「うむ。他でもない。そなたを呼んだのはまさしくそのことだ」
「はっ」
 エルネストは居ずまいを正した。

「そなたの娘を連れて来なさい。どうやらあの娘にも、人の役に立つ時が来たようだ」

「畏れながら陛下。臣の愚女めは先日来、またも行方をくらましておりまして、その……」
「わかっておる。まったく、ひと月と同じ所に居られぬ娘だわ。とにかく、おらぬなら探さねば仕方あるまい。決して国からは出るなと言ってある以上、くまなく探せばすぐに見つかるであろう。すぐに行け」
 だがエルネストは申し訳なさそうに首を振った。

「例の魔法陣の完成には未だ時を要します。私めが出かけて行きますのは、いかがなものでございましょうか。あの魔法陣も極めて重要な役目をもっておりますれば」
「おお、そうであったな。確かに、あれも重要なことには違いない。さて、では誰を遣ろうか」

 一組の主従の視線は、やがて他国から来た女騎士の顔に注がれた。
「うむ。そなたが良い。行ってくれるか」
「私ですか!?」
「さようでございますな。適任かと存じます」
 アリアはうろたえた。

「ご命令とあらば従いますが、私はこの方のご息女のお顔を存じ上げませぬ。どのように探したものでしょうか」
 美しい眉をやや顰めながら問うと、女王は鷹揚に答えた。
「案ずるな。無論一人で行けとは言わぬ。案内人をつけよう」


 しばらくして、玉座の間に招じ入れられてきたのは、まだあどけない表情の少年だった。年の頃は十三、四才ぐらいだろうか。端正な顔立ちで、美しい金髪がその顔を一層引き立たせている。
 少年は、目の前の女騎士の胸や股間に食い込んだショーツをちらちらと見ている。
 子供のように見えても、そういうことに興味を持つ年頃であるらしかった。

「カールだ。私が預かっている魔術師見習いの少年でな、この子を連れて行くがいい。リーザの顔なら良く知っている。」
「リーザ?」

 エルネストの説明に突如出てきた女性名詞に、アリアは戸惑った。
「私の不肖の娘の名前だ。貴殿はリーザを探しているのではないのか」
 訝しむエルネストの顔を見て、アリアは迂闊にも探すべき相手の名前を聞いていなかったことに気付いた。

「誠に失礼ですが、ご息女のお名前をお聞かせ願えますか」
「リーゼロッテ・フォン・ローエンベルンだ。幼い頃からの呼び名はリーザというのだ」
 そう言うと名門の宮廷魔術師は悪戯っぽく笑った。
「人はローエンベルンの魔女と呼んでいるがね」

 翌朝早く、アリアとそのお供につけられたカールの二人はアーフェンガルドの城を出発した。


 さて、どこから探したものだろうか。いくら案内人がいるとは言え、見知らぬ土地で会ったこともない人間を探すというのは至難の業に思われた。
 案内人といえば、カールというこの少年は果たして頼りになるものだろうか。

 アーフェンガルドの王都、レナルディアの城下町を歩きながら、少年は慣れた様子で先を歩いている。時々、ちゃんとついて来ているか確しかめるようにちらちらと後ろを振り返っている。

「カール、これはどこへ向かってるの?」
 先を行く少年に声をかけてみると、
「あっ、はい……。とりあえず、街の商店の人たちに当たってみようと思います。普通なら酒場で情報を集めるのが筋ですけど、この時間ではまだ開いてませんから」
 目のやり場に困っている様子だが、なかなか抜け目のない返事だった。

 多少は頼りになりそうだと安心したアリアは、少し話をしてみる気になった。
「あなた、見習いの魔術師なんですってね。まだ若いのに宮廷魔術師に教えてもらっているなんて凄いのね」
「そんなことないですよ。たまたま父がローエンベルン閣下の知り合いだっただけです。僕には偉大な魔法使いになる素質なんてないですよ」
 控えめにそう言って笑った。屈託のないその笑顔につられて、アリアも微笑んだ。
 我ながら、久しぶりの笑顔だと思った。

 結局、ニ、三日経っても城下町では有力な情報は得られず、翌日アリアたちはレナルディアを出て、国境の街、ワレンハイムまで足を伸ばしていた。
 だが街のあちこちを巡ってリーザの行方を聞き込んではいるものの、はかばかしい答えは返ってこなかった。
 すでに日は傾き、アリアは慣れぬ人探しを続けて、やや疲れてきていた。

「そろそろ酒場が開きますね。行ってみましょう」
 カールの声に励まされて、アリアは酒場の扉を開けた。

 例によって、アリアの下着同然の真っ赤なビキニアーマー姿を見て、男たちの視線は一気にこちらに向いた。
 一瞬カールはたじろいだようだったが、
「まあこっちの方が都合がいいや。皆さんちょっと聞いて下さーい」
 そう言って店内の耳目を集めていることに乗じて、聞き込みを始めた。
 アリアが聞いてもほとんどの場合が、
「よう姉ちゃん。人にものを教えてもらうんならそれなりの礼をしてもらわなくっちゃな」
 などと言って肩や尻に手を回されるのが関の山であることは、初日のうちに学んでいたので、一人離れた所で腰掛けていた。

 酔っ払い相手に聞いたところで、どれほどあてになるものやら……。
 そう思っていると、近くに座っていた老人たちの会話が聞こえてきた。
 老人たちは、妙な話を始めた。

「それはそうとよ、おめえんとこの息子は帰ってきたのかい?」
「ああ、おかげさんで帰ってきたよ。だがな、帰ってきた時はなんだか様子がおかしくてな」
「何だと?」

「おとといの夕方頃だったかな。ふらりと帰って来たんだが、妙に腑抜けた顔してやがってよ。げっそり痩せて、おまけに足腰がフラフラになってやがるんだ。しかも女ものの香水の匂いをプンプンさせてるんだよ」
「ハハハッ! そりゃおめえ、女のとこにシケこんでたんだろう。決まってるじゃねえか」
「それは確かにそうなんだが、あの野郎おかしなことを言いやがるんだ」
「へえ。何て?」
「魔女にやられたって言うんだよ」

 アリアは雷に打たれたように顔を上げた。
 老人たちの傍まで詰め寄る。
「魔女って言ったんですか、その人!」

 半裸の美しい女騎士に迫られて、老人たちは仰け反った。
「なんだなんだ、一体」
「姉ちゃん何慌ててるんだよ、魔女がどうかしたのか」
「探してるんです、魔女を」
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