女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第23話 戦う美女たち

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  ドゴオォォォォン!!

  つい今出てきたばかりの大きな扉が、けたたましい音とともに周りの壁ごと打ち砕かれた。
  そこから巨大な山羊の顔をした魔物が躍り出てくる。
  すさまじい唸り声を上げて三人の獲物を追いかけてきた。

「来たわよアリア! 外に出る道はわかってるんでしょうね!?」
  走りながら魔法使いが女騎士に叫ぶ。
「さあ、何となくしかわからないわ! 貴女が知ってるんじゃないの!? あの部屋から連れ出されたんでしょう!?」

「知ってるわけないわよ。散々犯されて、気を失ってたんだから! アンタこそどうやって来たのよ!」
「私も同じよ。気がついた時には、知らない場所だったんだから! 入口からどうやってそこまで行ったのかはわからないわ!」
  先ほどまでの連携もどこへやら、全速力で走りながら揉めだした。

  やがて、なんとか階段を上がり、先ほどの牢の前の通路までは戻って来られた。
「この先は!?」
「う~ん……どっちだったかしら。貴女を探してあちこち走り回ってたから……」
「ほらほら来たわよ! どうすんのよもう! あ~アイツ四本足だから早いわ。クソヤギのくせに!」
  サテュロスは、周囲の壁を砕きながら近づいてくる。

  その時、二人の美女の会話に、一歩遅れて走っている黒髪の娘が割って入った。

「道なら私が知ってます! ここの通路をまっすぐ行って右です! その奥に階段があります!」
「偉い! アンタ先頭を行きなさい! 次はアリアよ! 私は奴を足止めするわ」
「リーザ、無茶しないでよ」
「するわけないでしょう、私が。ちょっと罠を置いてくだけよ」
 相棒に軽く片目をつぶって見せてから、魔法使いは洞窟の地面に杖で魔法陣を描き出した。

「これで良し。ふふん、覚悟しろ家畜野郎。丸焦げにな~れっと」
 目一杯の憎しみを込めて魔法陣を仕上げた後、リーザは悪態をついてから仲間を追いかけた。

 アリアと黒髪の娘は順調に出口へと進んでいた。
「そこを右です!」

 彼女の案内は正確だった。聞けば、捕まっている間に何度か脱走を試みたらしい。繰り返すうちに徐々に道を覚えたのだと言う。

「大変だったのね。そうだ、あなた名前は?」
 黒髪の娘はやや照れくさそうに答えた。
「ミサキと申します。この度は、助けていただき本当に有難う存じます」

「無事にここから出られれば助けたことになるけれどね。私はアリア。仲間の魔法使いはリーザよ」

「リーザさんは大丈夫でしょうか」
 ミサキと名乗った娘は、気遣わし気な顔を見せた。伏し目がちになると、肩の所で切り揃えた漆黒の髪が垂れ、気弱そうな印象を受ける。

「大丈夫よ。あの人、ああ見えて結構凄腕だから」

 アリアはにこりと笑って見せた。

 だが次の瞬間、風を切る音と共に、鈍い光を放って刃が振り下ろされた。突然通路の角からミイラの魔物が斬りかかってきたのである。

「キャアアアッ!」

 ミサキは頭上に閃く刃に一瞬死を覚悟したが、間一髪そこへ緋色の髪が颯爽と割って入った。

 ガキィィィィン!

 ミサキが顔を上げると、そこには魔物の刃を左腕の盾で受け止める、美しく凛々しい女騎士の姿があった。
 アリアは盾で魔物を押し返し、相手が体勢を崩したところを袈裟斬りに斬って捨てた。

「す、凄い……」
「大丈夫? ミサキ」

「はいっ。あの、有難うございます! また助けていただいて。わたくし、自分でも武器を持っていながら、申し訳ありません」

「気にしないでいいのよ、そんなこと。さ、急ぎましょう」
 爽やかな一陣の風のように走り出そうとする女騎士に、ミサキははっきりと憧れの眼差しを注いでいた。

 その時、バリバリバリッ!と落雷のような音が洞窟内に轟いた。
「何でしょうか、今の」
「わからないわ。でも、もしかすると……」

 振り返ると女騎士の予想通り、後ろから豪奢な金髪を揺らして、魔法使いが走って来る。

「何してんのよ、停まってる場合じゃないでしょう」
「リーザ、今のは?」
 再び走り出しながらアリアが訊ねる。

「電撃魔法の罠にあのマヌケ面がひっかかったのよ。しばらくは動けないはずよ。そんなことより、さっさと走るの!」」
 
 走り続けるアリアたちの前に、見覚えのある場所が現れた。
「この先が出口だわ!」
「確かに、私たちがあの忌々しい雑魚どもに捕まったところね」

 やがて三人は出入り口になっている前線基地へと戻ってきた。
「グオオオオオオン!!」

 洞窟の奥から叫び声が響いてくる。

「チッ、もう来たか。全く、女には手が早いし、おまけに足まで速いときたらホント迷惑な家畜よね」
「のんきなこと言ってないで、早く外へ出ましょう!」
 毒づく相棒を促し、アリアは久しぶりの陽光が降り注ぐ外へ飛び出した。

 三人の女たちは建物の方に向きなおり、武器を構えて魔物の出現に備える。
 ミサキが武器の先端にかぶせた革袋を取り払うと、日の光を反射してきらめく刃が現れた。
 まぎれもなく東方の国の、主に支配階級の婦女子が能よくするという薙刀である。

 さっと一目見たアリアには、それがかなりの業物であることがわかった。

「アンタ、可愛い顔して凄い武器持ってんのね。いったい何者?」

 リーザが柄の先を見て、心底驚いた顔で訊ねる。

「はい。わたくしは、遥か東の国オオヤマトより参りたる、巫女でございます。詳しいお話はまた後ほど……」

「ミサキの言う通りね。とにかく今はあの化け物を倒すことを考えましょう。ほら、出てくるわよ!」

 アリアが注意を促すと同時に、前線基地の建物の一部を吹き飛ばして、巨大な山羊の魔物が姿を現した。

「ガアアアアッ!! 逃がさん、逃がさんぞォォォォ! 俺様の愉しみを奪いおって! 貴様ら全員捕まえて奴隷にしてやる!!」
「まーだあんなこと言ってる。さっさと退治しちゃいましょ、アリア」
「そうね。ミサキ、あなたも行ける?」
「はいっ! やります!」

 異国から来た巫女の威勢の良い返事に、二人の美女は破顔した。

「私は左、ミサキは右から攻める! リーザは距離を取って呪文で攻撃して! 散開!!」
 アリアはかつて騎士団にいた時のように、指示を飛ばす。
 ミサキの実力の程が分からないが、遥かな大陸の東の果てから薙刀一本、女一人でやってきたのである。かなりの腕だと期待するしかない。

 横を見れば、しっかりアリアのスピードについて来ている。あの大きな武器を持っている事を考えれば、アリア並みかそれ以上に敏捷な方だと言えるだろう。

 ドドドドォォォン!!
 リーザの氷の呪文が命中した。が、ほとんど効いていない。サテュロスは平然とこちらを見下ろしている。

「何で!? さっきは効いたのに……。まさかあの分厚そうな毛皮のせいだって言うんじゃないでしょうね!」
 リーザが苛立つ。
 一声咆哮して、巨大な山羊の魔物は、自らに歯向かう女たちに突進した。
「キャアアアッ!!」
 土煙と共に、美女たちが宙に舞う。
 そこへ狙いすましたように、山羊の口から雷撃の呪文が放たれる。

「アアアアアアアッッ!!」
 空中で電撃を喰らい、三人は地面に叩きつけられた。

「あぐぅっ!!」
 三人とも落下の衝撃に息を飲むが、寝転んでいる余裕は無い。なんとか起き上がり、武器を構える。そこへすかさずサテュロスが呪文を唱え、三人の足元から丸太のように太い氷の柱が幾つも突き出した。
「キャアアアアアッ!!」

 間髪入れずにサテュロスは頭を下げ、山羊の角を押し出して突進してくる。
 今度は氷の柱ごと吹き飛ばされ、三人の美女たちはかなりのダメージを負ってしまった。
「くうううっ!!」

「だ、大丈夫? 二人とも」
 アリアが気遣う。
「は、はい。わたくしは大丈夫です」
「もう怒った! 本気で行くわよ。これならどう!? クソヤギ野郎!」

 リーザは爆炎の呪文を放った。山羊の体に大きな炎に包まれる。

「グアアアアアッ!」
 今度はかなり効いたようだ。アリアとミサキの二人がその間に駆け出し、それぞれの方向から斬りかかった。
「ギャアアアッ」

 山羊の体から紫色の鮮血がほとばしる。だが、まだ魔物は倒れる気配はない。
 そこへ立て続けに火球が炸裂する。怒りのこもった大きな雄叫びの後、サテュロスは牙を剥きだした

「おのれ小癪な魔法使いめ! 先に貴様から片づけてくれるわ!」
 サテュロスは大きく口を開けると、カッと目を見開いて体を震わせた。
「あううっ!」
 突然リーザが後ろに吹き飛ばされた。今のは衝撃波だったらしい。

「死ねェェェェェェッ!!」
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