女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第24話 巫女は笑い、魔女は憤る

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倒れ込んだリーザを、サテュロスは巨大な前足で踏み付けようとした。
「リーザ! 逃げて!」
 咄嗟にアリアは叫んだが、リーザは足を挫いてしまったようだ。うずくまったまま、足首を押さえている。

「イタタタタ……。フンッ! さあ来なさいよ! 足ごと燃やしてやるから!」
 その状態から呪文を唱えようと、リーザは杖を魔物に向けた。
 だが、杖から出たのは小さな蝋燭の炎程度の火だった。
「嘘!? しまった! 魔力が、もう……」

「リーザ!」
 アリアが走り出そうとしたその時、白い影がリーザの前に飛び込んで来た。

天祖神とをかみ 恵霊玉えみため、祓い給い、清め給え」
 ミサキは瞑目して素早くそう唱えると、右の人差し指と中指を立てて小さく息を吐いた。
「破ッ!」
 大きな足を踏み下ろそうとしたところで、突然サテュロスの動きが止まった。

「小娘がッ! 何をした! グアアッ!」
 ミサキの指先で蒼い光が閃くと、サテュロスは大きく仰け反り、横倒しになった。
「今です! アリア様!」

 黒髪の巫女の一声で、アリアは跳躍し、大上段に振りかざした剣を、思いきり山羊の首に斬りつけた。
「ギャアアアッ!」
 血しぶきが上がり、アリアの身体が紫に染まる。
 あと一撃あれば、魔物の息の根を止めることができそうだった。

「アリア様! とどめを!」
「待って!」

 前へ出ようとするミサキを押さえて、アリアは虫の息の魔物に、聞かねばならないことを聞いた。
「レオノーラ様は、ラルディールのレオノーラ王女殿下はどこだ」
 サテュロスの血まみれの顔は、底意地の悪い笑みを湛えた。

「グフッ……あの小娘か……。教えてやろうか……どうせ、生きて辿り着けるはずはないのだからな……」
 喋るごとに魔物の口からは血がこぼれ出している。

「あいつなら……魔王様の元だ。取り戻したければ……魔王様の城へ、行くのだな……」
「魔王の城? それは南の海に現れたという島にあるのか!?」
 アリアが勢いこんで訊ねた時だった。

「ガアアアアッ!!」
 サテュロスは顔だけを動かし、山羊の大きな口を開け、牙を剥いてアリアに襲いかかった。

「アリア様、下がってください!」
 薙刀の白刃を閃かせ、ミサキがアリアの頭上高くに飛び上がる。
「ヤアアアアアッ!!」

「グハアアアアアッ!!」
 アリアの斬った場所の近くへ薙刀を振り下ろす。渾身の斬撃は魔物の首を、一気に斬り落とした。

「やった! やりましたよ、アリア様!」
 ミサキは飛び跳ねて喜んでいる。肩の所で切り揃えた黒髪がふわふわと揺れる。
 アリアとて、これほどの大物を倒したのは初めてだった。三人の顔に安堵の表情が広がる。

「ふう。まったく、一時はどうなるかと思ったわ。アイタタタ、参ったわね。結構痛むわ、コレ」
 リーザはまだ足を押さえている。

「大丈夫? リーザ。歩けそう?」
「ちょっと厳しいけど、歩くしかないわね。もう私の魔法力はカラだし」
 そう言ってリーザは立ち上がろうとしたが、その足首にミサキがそっと手を当てた。
「少しジッとしてて下さいね。わたくしも多少は治癒の術を使えますので」
 言葉通り、ミサキの手を通してリーザの足首は光に包まれた。

「あ、ありがとう。アンタ、ミサキって言うのね。私はリーザよ。よろしくね」
 アリアが差し伸べた手を取り、リーザが立ち上がりながら挨拶する。



 黒髪の巫女が二人に向き直り、頭を下げて礼を述べた。
「アリア様、リーザさん。助けていただいて、本当に有難うございました」
 アリアは笑って手を振った。
「いいのよ、気にしないでね」
「ん? ちょっと待って。今なんて言った?」
 微妙な違いを聞き咎めたリーザが、眉をしかめる。

「はい? あの、有難うございますと……」
「違うわよ。アンタ今、アリア様、リーザさんって言わなかった?」
「はい。申しましたが、それが何か?」
 ミサキはキョトンとしている。

「何かじゃないわよ。何でアリアは『様』で、私は『さん』なのよ。おかしくない?」
 本気で怒っているわけではなさそうだが、どうやら魔法使いの名家出身のプライドを傷つけられたらしい。
「単なる言葉の綾よ。ねぇミサキ」
 宥めようとしたアリアだったが、帰ってきた反応は予想外のものだった。

「いえ、アリア様。言葉の綾ではございません。わたくしはアリア様を尊敬申し上げております。ですが、リーザさんはちょっとそこまでは……」
 淑やかな外見と物腰に反してハッキリと言ってのけたミサキに、一瞬二人の美女は目を丸くしたが、大陸最強と謳われた魔法使いはついに逆上した。
「何ですって!? 私とアリアと何が違うのよ、私だってアンタを助けたでしょ!」
「ちょっとリーザ、落ち着いて」

 だが東の果てからきた巫女に、全く動じる気配はない。
「アリア様の颯爽たる身のこなし、繊細でありながら大胆な剣さばき、美しい立ち居振る舞い。全てが大和撫子の範となるものであり、そのお姿はもはや優雅を越えて、典雅の極致に至っていらっしゃいます」
 右手を頬にあて、うっとりと宙を見つめている。

 何故か自分の世界に入っている様子のミサキを見て、怒り心頭の魔法使いは怒気をそがれたのか、傍らの相棒に囁いた。
「あのコ何を言ってんの? ヤマト……何ですって?」
「さあ……。でも、とにかく彼女が三人目の守護聖女なのは間違いないんだから、喧嘩なんかしてる場合じゃないのよ?」

 年下のアリアに姉のように諭されて、リーザはふくれた。
「むううう。アイツが仲間になるのか……」
「とりあえず、みんな疲れている上に貴女の魔力もカラなんだし、一旦街へ戻りましょう」

「そうね。お腹も空いたわね。で、アイツも連れて行くの?」
 リーザは親指でミサキを指さした。
「当たり前でしょう、もう。ほら、行くわよ」

 一瞬気を取り直しかけたリーザだったが、歩き出したアリアに声をかけられたミサキが、こちらを一切振り返ることもないまま、母親を追う子供のように足取りも軽くついて行く姿を見て、さっきと全く同じ言葉を繰り返した。美しい眉間には皺が寄っている。
「むううう。アイツが仲間になるのか……」

 難敵を倒し、一行はラルーク側の国境の街へと戻って行った。
 だが、その姿を少し離れた岩山の陰から追っている複数の目があることには、三人とも気づいてはいなかった。
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