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第22話 三人目
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リーザがサテュロスからようやく解放されたその頃、アリアは洞窟の中を走っていた。
時折現れる魔物たちを斬り倒し、リーザとレオノーラ王女を探す。
大声で名前を呼びながら走りたいところだが、そうもいかない。またオーガのような敵に捕まったら最後である。命はなんとか取り留めたとしても、大幅に時間を失うことになるだろう。
考えをめぐらしたアリアは、次に現れた魔物にはとどめを刺さず、情報を聞き出すことにした。
運悪くそこへ躍りかかってきた二匹のゴブリンのうち、一匹のゴブリンを蹴り飛ばし、もう一匹を
盾で殴りつけてから首元に刃を向けて訊ねた。
「人間の女性を捕まえているはずだ。どこにいる」
緋色の髪の女騎士は、本来の凛とした姿を取り戻し、苛烈なまでに鋭い眼光で睨みつけた。
「ヒィッ……! に、人間なら、サテュロス様の元で奉仕している……今頃はヨガり狂っているだろうよ」
狡猾そうにニヤリと笑ったゴブリンの顔に、美しい脚でさらに蹴りを入れる。
「ゲフゥッ!! き、貴様ァ!」
刃を向けられながら激昂するゴブリンに、アリアは真冬の冷気を思わせる冷酷な声で言った。
「どこにいるかと聞いている。貴様の予想などに興味は無い。答えないのならばこのまま突き殺し、薄汚い眷属もろとも血祭りにあげてやる」
言葉通りアリアは魔物の首を刃で貫いた。
「ギャアアアッ!!」
悲鳴を上げて魔物は絶命した。それを見届けると、残る一匹に歩み寄る。
「貴様はどうする?」
同じように刃を向けて訊ねる女騎士に、残った方のゴブリンは震えながら答えた。
「こ、この下の階だ。階段を降りて、突き当りを左に行った牢にいる……」
言い終わった魔物の脳天を、女騎士は無言で叩き斬った。
下の階へ降りたアリアは、ほどなくしてゴブリンの言った通りの場所に、木製の扉を見つけた。
頑丈そうな厚みで、鉄の鋲が打ってある。
把手に手をかけたが、やはり鍵がかかっているようだ。仕方なく何度か体当たりを試みたあと、体重を乗せて思いきり蹴破った。
踏み込むとそこには、またもゴブリンたちが数匹いた。
魔物たちの身体の間から、肌色の手足が見える。よく見ると、魔物たちは裸の女性に群がっているのがわかった。
「リーザ!!」
顔はゴブリンの陰になっているが、見間違えようもない美しい黄金色の髪が見えて、アリアは突進した。
恍惚の表情で腰をふる者、豊かな白い柔乳を揉む者、ひたすら身体を舐めまわす者、それらを全て薙ぎ払い、斬り倒す。
魔物たちを始末したあと、アリアは仲間の元へ駆け寄った。
「リーザ! 遅くなってごめんなさい。もう大丈夫よ」
裸で横たわる仲間を見て、何があったのかは簡単に察せられたが、リーザは意識を振り絞り、アリアと離されてから起こったことを話した。
「山羊の魔物ですって?」
「そう。それに、アリア……。もう一人、いるのよ……。ここに、捕まっている女の子が。あの人がアンタの王女様かしら……ね」
リーザは魔物たちの精液にまみれた身体を何とか起こして、苦しそうに言うと自分とアリアに回復魔法をかけた。
暖かい光が二人を包み、凌辱されて失った体力が戻ってきたのを感じた。
「ふう。なんとか元気になったわ」
人心地ついたリーザが片手で顔を扇ぐ。
「その人は十七、八才ぐらいの、亜麻色の髪の女性だった?」
「いえ、歳は同じくらいだったけれど、髪は黒髪だったわ。真っ黒な」
「黒髪……。じゃあ王女殿下ではないようね……。で、その女性は今どこに?」
「連れて行かれたのよ、可哀想に私と入れ替えに。もしかしてあのコ、国境の街で聞いた、エルムーデに向かったっていう女の子じゃないかしら」
アリアはリーザを抱き起して言った。
「とにかく助けに行きましょう。これ以上アイツらの好きにはさせないわ」
「ええ、あのクソヤギ野郎の腐れチンポを引っこ抜いてへし折ってやりましょう」
「ちょっとリーザ、言い方が……まぁ元気になったんならいいけど」
リーザは慌てるアリアを尻目に魔法で服を再生し、二人は牢を出て連れ去られた娘を探し始めた。
洞窟内をくまなく探索するのだが、前回の轍は踏むまいと足元を注意しながら進むので、かなり時間を要した。
やがて二人は最下層の一角に、大きな扉を見つけた。
「きっとここね。リーザ、行くわよ。用意はいい?」
「大丈夫よ。いつでも腐れチンポを消し炭にしてやれるわ」
「だから言い方……」
「いいからいいから。さぁ、やっちゃいましょ!」
意を決して踏み込むと、そこは先刻リーザが捕まっていたサテュロスの大きな寝室だった。
「山羊の魔物ってアイツね」
「そうよ、あんなマヌケな顔してるけど、たぶんそこそこ強いから油断しちゃダメよ、アリア」
サテュロスはまたしても女を慰みものにしているようで、黒髪の若い娘が屈強な体に組み敷かれ、凌辱されている。その傍にはアリアが屈辱を味わわせられた、憎き土鬼の仲間が2匹、魔物の寝台を護るように立っており、侵入者の存在に気がついたようだった。
「貴様ら、どうやって牢を出た!?」
だがその時、二人はすでに走り出していた。
「リーザ! 山羊をお願い!」
「了解!」
阿吽の呼吸で二手に分かれた。
アリアは二匹の土鬼を斬り捨て、無防備になってもまだ娘を犯し続けるサテュロスの横っ腹に、リーザが得意の炎の呪文をぶつける。
大きな火球が炸裂し、魔物を弾き飛ばした。二発目をリーザが放ち、さらに魔物が後ろへと追いやられた隙に、アリアが疾駆して黒髪の娘のところへ辿り着いた時、思いがけないものが目に入った。
「これは……竜のアザ!」
裸体を晒す娘の腹に浮き出たそれはまぎれもなく、天空を駆ける竜の形をしたアザであった。
「この娘が、三人目の守護聖女なのね……」
だがその一瞬の隙を、サテュロスは見逃さなかった。
ドォン!!
「ぐはぁッ!」
アリアは壁まで弾き飛ばされた。
なおも攻撃を繰り出そうと近づくサテュロスだったが、そこへ氷塊が幾つも突っ込んでくる。
「アリア! 早く!」
リーザの魔法が敵を食い止めている間にアリアは渾身の力で走り、娘を寝台から助け出す。
二人は一端後方へ下がり、アリアが剣を構える後ろで、リーザは娘に回復魔法をかけ、さらに先刻自分にしたのと同じように、彼女の服を再生させた。
リーザも娘のアザに気づいてハッとしたが、今は時間が無い。
黒髪の娘の元の服は白衣と緋袴という出で立ちだった。
「アンタは下がってなさいね」
優しく声をかけると、リーザは娘を庇うようにアリアの横に立った。
「フフフッ。お嬢さん方、少しお仕置きが必要のようだね。私の愉しみの邪魔をするとは。それとも三人一緒に可愛がって欲しいのかな?」
サテュロスは不敵に笑い、立ち上がった。
「何がお仕置きよ。偉そうに言うんじゃないわよ。よくも散々私の身体を弄んでくれたわね、このヤギ頭!」
「その通りよ。貴様のようなクズは、絶対に許さん!」
「敵うとお思いなら、かかってきたまえ。但し、負けたらどうなるかはわかっているだろうね?」
サテュロスは、山羊の顔を好色そうに崩した。
「うっわ気持ち悪。アリア! とっととあのクソヤギ野郎の無駄に長い粗チンをぶった斬って、二度と使えない苦痛を味わわせてやりましょう!」
「そうね。私が斬りかかるからリーザはフォローをお願い。行くわよ!」
全速力で接近する女騎士に向かって、サテュロスは次々に魔法を飛ばしてくる。
間一髪のところでかわしつつ、アリアは跳躍して斬りかかった。
サテュロスは後ろに飛びすさって斬撃をよけるが、それは二人の計算のうちだった。
「ハァッ!」
すかさずリーザがそこへ向かって杖をかざす。稲妻の光が魔物に突き刺さった。
「グアアッ!」
一瞬動きを止めたサテュロスの隙を逃さず、アリアは剣を振りかぶった。
「ギャアッ!」
斬撃は魔物の脇を抉った。だが、傷を負いながらも、サテュロスはアリアを蹴り飛ばした。
「くっ!」
アリアはすぐに立ち上がったが、態勢を整えたのは敵も同じだった。
「おのれ調子に乗りおって! もう許さぬ、まとめて嬲り殺しにしてくれる!」
山羊の顔は憤怒の形相に変わり、部屋の天井を向いて吠えた。
先ほどのオーガよりも激しく咆哮したかと思うと、サテュロスの体はみるみるうちに膨張し、顔は山羊のまま、体は人間の姿から獣のような紫色の毛に覆われた四本足に変わっていく。
そうしてやがて、かなり高いはずの天井にまで届きそうな大きさにまで巨大化した。
「ちょっと何よあれは!」
魔術や魔物には詳しいはずのリーザでさえ驚きを隠せないようだった。
「グオオオオオオン!!」
さらに大きく叫び声を上げてサテュロスの変身は完了し、巨大な山羊に似た化け物が現れた。
「どうするリーザ? あんなに大きくなられたら、ここでは戦う場所がないわ」
「そうね。仕方ない、地上へ出ましょう、奴を連れて。アンタはあのコをお願い。私が呪文で牽制するわ」
「了解。急ぎましょう」
この時二人は、良き相棒に巡り合えたことを、お互い天に感謝していたのだが、言葉にしている暇は無かった。
「大丈夫? 走れる?」
アリアの気遣いに娘は弱い笑顔で答えた。
「有難うございます。なんとか大丈夫です。ただ、私の武器があそこに」
黒髪の娘が指さしたのは、部屋の反対側の壁だった。
何やら長い柄と、革袋に収めた反った長い刃が付いた厳めしい武器が立てかけてあった。
騎士たるアリアでも書物でしか見たことのない、珍しい東方の国の武器である。
「あれは、薙刀? あなたのものなの?」
「はい。魔物に捕まった時に、取り上げられたんです」
「わかったわ。取ってきてあげるから、すぐにここから出ましょう」
そう言うとアリアは、魔法使いに向かって一声叫んだ。
「リーザ! 援護して!」
「任せて!」
リーザが両手で火球を繰り出し、魔物めがけて飛ばしている間に猛然と走りだし、薙刀を取って戻ってきた。
その勇ましい姿に、黒髪の娘はわずかに憧れの眼差しを送っていたが、無論アリアは気づかない。
「さあ、行きましょう!!」
それを合図に、三人の女たちは地上へと向かって部屋を飛び出した。
時折現れる魔物たちを斬り倒し、リーザとレオノーラ王女を探す。
大声で名前を呼びながら走りたいところだが、そうもいかない。またオーガのような敵に捕まったら最後である。命はなんとか取り留めたとしても、大幅に時間を失うことになるだろう。
考えをめぐらしたアリアは、次に現れた魔物にはとどめを刺さず、情報を聞き出すことにした。
運悪くそこへ躍りかかってきた二匹のゴブリンのうち、一匹のゴブリンを蹴り飛ばし、もう一匹を
盾で殴りつけてから首元に刃を向けて訊ねた。
「人間の女性を捕まえているはずだ。どこにいる」
緋色の髪の女騎士は、本来の凛とした姿を取り戻し、苛烈なまでに鋭い眼光で睨みつけた。
「ヒィッ……! に、人間なら、サテュロス様の元で奉仕している……今頃はヨガり狂っているだろうよ」
狡猾そうにニヤリと笑ったゴブリンの顔に、美しい脚でさらに蹴りを入れる。
「ゲフゥッ!! き、貴様ァ!」
刃を向けられながら激昂するゴブリンに、アリアは真冬の冷気を思わせる冷酷な声で言った。
「どこにいるかと聞いている。貴様の予想などに興味は無い。答えないのならばこのまま突き殺し、薄汚い眷属もろとも血祭りにあげてやる」
言葉通りアリアは魔物の首を刃で貫いた。
「ギャアアアッ!!」
悲鳴を上げて魔物は絶命した。それを見届けると、残る一匹に歩み寄る。
「貴様はどうする?」
同じように刃を向けて訊ねる女騎士に、残った方のゴブリンは震えながら答えた。
「こ、この下の階だ。階段を降りて、突き当りを左に行った牢にいる……」
言い終わった魔物の脳天を、女騎士は無言で叩き斬った。
下の階へ降りたアリアは、ほどなくしてゴブリンの言った通りの場所に、木製の扉を見つけた。
頑丈そうな厚みで、鉄の鋲が打ってある。
把手に手をかけたが、やはり鍵がかかっているようだ。仕方なく何度か体当たりを試みたあと、体重を乗せて思いきり蹴破った。
踏み込むとそこには、またもゴブリンたちが数匹いた。
魔物たちの身体の間から、肌色の手足が見える。よく見ると、魔物たちは裸の女性に群がっているのがわかった。
「リーザ!!」
顔はゴブリンの陰になっているが、見間違えようもない美しい黄金色の髪が見えて、アリアは突進した。
恍惚の表情で腰をふる者、豊かな白い柔乳を揉む者、ひたすら身体を舐めまわす者、それらを全て薙ぎ払い、斬り倒す。
魔物たちを始末したあと、アリアは仲間の元へ駆け寄った。
「リーザ! 遅くなってごめんなさい。もう大丈夫よ」
裸で横たわる仲間を見て、何があったのかは簡単に察せられたが、リーザは意識を振り絞り、アリアと離されてから起こったことを話した。
「山羊の魔物ですって?」
「そう。それに、アリア……。もう一人、いるのよ……。ここに、捕まっている女の子が。あの人がアンタの王女様かしら……ね」
リーザは魔物たちの精液にまみれた身体を何とか起こして、苦しそうに言うと自分とアリアに回復魔法をかけた。
暖かい光が二人を包み、凌辱されて失った体力が戻ってきたのを感じた。
「ふう。なんとか元気になったわ」
人心地ついたリーザが片手で顔を扇ぐ。
「その人は十七、八才ぐらいの、亜麻色の髪の女性だった?」
「いえ、歳は同じくらいだったけれど、髪は黒髪だったわ。真っ黒な」
「黒髪……。じゃあ王女殿下ではないようね……。で、その女性は今どこに?」
「連れて行かれたのよ、可哀想に私と入れ替えに。もしかしてあのコ、国境の街で聞いた、エルムーデに向かったっていう女の子じゃないかしら」
アリアはリーザを抱き起して言った。
「とにかく助けに行きましょう。これ以上アイツらの好きにはさせないわ」
「ええ、あのクソヤギ野郎の腐れチンポを引っこ抜いてへし折ってやりましょう」
「ちょっとリーザ、言い方が……まぁ元気になったんならいいけど」
リーザは慌てるアリアを尻目に魔法で服を再生し、二人は牢を出て連れ去られた娘を探し始めた。
洞窟内をくまなく探索するのだが、前回の轍は踏むまいと足元を注意しながら進むので、かなり時間を要した。
やがて二人は最下層の一角に、大きな扉を見つけた。
「きっとここね。リーザ、行くわよ。用意はいい?」
「大丈夫よ。いつでも腐れチンポを消し炭にしてやれるわ」
「だから言い方……」
「いいからいいから。さぁ、やっちゃいましょ!」
意を決して踏み込むと、そこは先刻リーザが捕まっていたサテュロスの大きな寝室だった。
「山羊の魔物ってアイツね」
「そうよ、あんなマヌケな顔してるけど、たぶんそこそこ強いから油断しちゃダメよ、アリア」
サテュロスはまたしても女を慰みものにしているようで、黒髪の若い娘が屈強な体に組み敷かれ、凌辱されている。その傍にはアリアが屈辱を味わわせられた、憎き土鬼の仲間が2匹、魔物の寝台を護るように立っており、侵入者の存在に気がついたようだった。
「貴様ら、どうやって牢を出た!?」
だがその時、二人はすでに走り出していた。
「リーザ! 山羊をお願い!」
「了解!」
阿吽の呼吸で二手に分かれた。
アリアは二匹の土鬼を斬り捨て、無防備になってもまだ娘を犯し続けるサテュロスの横っ腹に、リーザが得意の炎の呪文をぶつける。
大きな火球が炸裂し、魔物を弾き飛ばした。二発目をリーザが放ち、さらに魔物が後ろへと追いやられた隙に、アリアが疾駆して黒髪の娘のところへ辿り着いた時、思いがけないものが目に入った。
「これは……竜のアザ!」
裸体を晒す娘の腹に浮き出たそれはまぎれもなく、天空を駆ける竜の形をしたアザであった。
「この娘が、三人目の守護聖女なのね……」
だがその一瞬の隙を、サテュロスは見逃さなかった。
ドォン!!
「ぐはぁッ!」
アリアは壁まで弾き飛ばされた。
なおも攻撃を繰り出そうと近づくサテュロスだったが、そこへ氷塊が幾つも突っ込んでくる。
「アリア! 早く!」
リーザの魔法が敵を食い止めている間にアリアは渾身の力で走り、娘を寝台から助け出す。
二人は一端後方へ下がり、アリアが剣を構える後ろで、リーザは娘に回復魔法をかけ、さらに先刻自分にしたのと同じように、彼女の服を再生させた。
リーザも娘のアザに気づいてハッとしたが、今は時間が無い。
黒髪の娘の元の服は白衣と緋袴という出で立ちだった。
「アンタは下がってなさいね」
優しく声をかけると、リーザは娘を庇うようにアリアの横に立った。
「フフフッ。お嬢さん方、少しお仕置きが必要のようだね。私の愉しみの邪魔をするとは。それとも三人一緒に可愛がって欲しいのかな?」
サテュロスは不敵に笑い、立ち上がった。
「何がお仕置きよ。偉そうに言うんじゃないわよ。よくも散々私の身体を弄んでくれたわね、このヤギ頭!」
「その通りよ。貴様のようなクズは、絶対に許さん!」
「敵うとお思いなら、かかってきたまえ。但し、負けたらどうなるかはわかっているだろうね?」
サテュロスは、山羊の顔を好色そうに崩した。
「うっわ気持ち悪。アリア! とっととあのクソヤギ野郎の無駄に長い粗チンをぶった斬って、二度と使えない苦痛を味わわせてやりましょう!」
「そうね。私が斬りかかるからリーザはフォローをお願い。行くわよ!」
全速力で接近する女騎士に向かって、サテュロスは次々に魔法を飛ばしてくる。
間一髪のところでかわしつつ、アリアは跳躍して斬りかかった。
サテュロスは後ろに飛びすさって斬撃をよけるが、それは二人の計算のうちだった。
「ハァッ!」
すかさずリーザがそこへ向かって杖をかざす。稲妻の光が魔物に突き刺さった。
「グアアッ!」
一瞬動きを止めたサテュロスの隙を逃さず、アリアは剣を振りかぶった。
「ギャアッ!」
斬撃は魔物の脇を抉った。だが、傷を負いながらも、サテュロスはアリアを蹴り飛ばした。
「くっ!」
アリアはすぐに立ち上がったが、態勢を整えたのは敵も同じだった。
「おのれ調子に乗りおって! もう許さぬ、まとめて嬲り殺しにしてくれる!」
山羊の顔は憤怒の形相に変わり、部屋の天井を向いて吠えた。
先ほどのオーガよりも激しく咆哮したかと思うと、サテュロスの体はみるみるうちに膨張し、顔は山羊のまま、体は人間の姿から獣のような紫色の毛に覆われた四本足に変わっていく。
そうしてやがて、かなり高いはずの天井にまで届きそうな大きさにまで巨大化した。
「ちょっと何よあれは!」
魔術や魔物には詳しいはずのリーザでさえ驚きを隠せないようだった。
「グオオオオオオン!!」
さらに大きく叫び声を上げてサテュロスの変身は完了し、巨大な山羊に似た化け物が現れた。
「どうするリーザ? あんなに大きくなられたら、ここでは戦う場所がないわ」
「そうね。仕方ない、地上へ出ましょう、奴を連れて。アンタはあのコをお願い。私が呪文で牽制するわ」
「了解。急ぎましょう」
この時二人は、良き相棒に巡り合えたことを、お互い天に感謝していたのだが、言葉にしている暇は無かった。
「大丈夫? 走れる?」
アリアの気遣いに娘は弱い笑顔で答えた。
「有難うございます。なんとか大丈夫です。ただ、私の武器があそこに」
黒髪の娘が指さしたのは、部屋の反対側の壁だった。
何やら長い柄と、革袋に収めた反った長い刃が付いた厳めしい武器が立てかけてあった。
騎士たるアリアでも書物でしか見たことのない、珍しい東方の国の武器である。
「あれは、薙刀? あなたのものなの?」
「はい。魔物に捕まった時に、取り上げられたんです」
「わかったわ。取ってきてあげるから、すぐにここから出ましょう」
そう言うとアリアは、魔法使いに向かって一声叫んだ。
「リーザ! 援護して!」
「任せて!」
リーザが両手で火球を繰り出し、魔物めがけて飛ばしている間に猛然と走りだし、薙刀を取って戻ってきた。
その勇ましい姿に、黒髪の娘はわずかに憧れの眼差しを送っていたが、無論アリアは気づかない。
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それを合図に、三人の女たちは地上へと向かって部屋を飛び出した。
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