女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第75話 甦る悪夢

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 把手が倒れると同時に、リーザの首輪から青白い光が管を通り、四角錐の台座に流れ込んで行く。
「あああ……ち、力が……抜けて行く……」
 鎖で拘束されている身体が、やや前に傾き始めた。

「うむ。上手く行っているようだ。だが、もう少し急ぎましょうか」
 把手をさらに倒す。
「あああああ~っ……」
 リーザから出る青白い光が強さと速さを増し、流れていく。薄暗い部屋が眩い光に満たされた。

 やがて球体は青白く光り始めた。それはまるでリーザの身体から出た光が、そのまま球体に移ったように思えた。
「ふむ。魔力というものは青白いのですか。これは非常に興味深い」
 
 それからおよそ三十分後。
 球体は完全に光で満たされ、一方リーザは両手を鎖に繋がれていなければ、とうに倒れているほどの疲労感に襲われていた。
「うううう……この、ダッサい魔法オタク……よくも……」
 だらりとうなだれた顔を上げて、気丈にもリーザは罵ってみせたが、額には玉の汗が浮かんでいる。

「無理はなさらぬことだ。貴女は最早抜け殻も同然。何の力も無い、どこにでもいるただの女だ」
 ザーベナルトは実験の集大成とでもいうような手つきで、リーザの首輪を外した。
「さあ、首の魔導器は外したぞ。何か呪文を唱えてみるがいい。私を倒してみろ」
 
「い、言われるまでもないわよ、インポ野郎……」
 リーザは残る力を振り絞り、攻撃呪文を唱えようとした。が、言葉が出ない。いや、正確には呪文が思い出せない。
「そんな、バカな」

 焦る心を抑えて、他の呪文を試そうとする。だが結果はいずれも同じだった。自分があれほど自由自在に操っていた魔法の言葉が何だったのか分からないのである。
「う、嘘……私の、魔力が……」

「アハハハハハハ! やったぞ大成功だ! この生意気な女から、魔力を完全に奪ってやったぞ! どうだ気分は? 唯一の取り柄が無くなった気分は」

 リーザは混乱の極みにあった。
 呪文が分からなくなるとは完全に想定外だった。
 しかも、どうにかして呪文を思い出せたとしても、アリアが敵の手中にある今、自分の魔力を回復する術は無い。そしてアリアを魔王の淫紋から覚醒させるには魔王を倒すほかは無い。

 だが、肝心のアリアはおろか、自分の魔力すらなくなった今、どうすればいい? ミサキとて厳しい状況にあるに違いない。

 一体、どうすればいい?
 
「さて、次の段階だ。ちょっと失礼しますよ」
 絶望に沈むリーザに容赦なく次の悲劇が襲う。
 今度は頭に鉄の輪を嵌められた。そしてまたも例の管が、頭の輪と台座とを繋いだ。

「こ、今度は……何を……?」
「ご心配なく。少しあなたの頭の中を拝見させていただくだけのことですよ」
「頭の中って……」

 リーザが言い終えぬうちに、ザーベナルトは台座に付いた別の把手を掴むと、一気に倒した。
 その途端、
「アアアアアアアッッ!!」

 突然リーザが全身を震わせて悶え始めた。頭の環から伸びた管が青白く光っている。
「イヤアアアアアアッ!! な、何をしたの……? うあああああッ! あ、頭が……割れそう……」
「クククッ。この鉄の輪も私が作り出した魔導器の一つでね。人の記憶を取り出すことが出来るのですよ。これで貴女の魔力の秘密が知れるというもの」
「き、記憶って……キャアアアアアアッ!」

 やがて透明の球体に変化が起こった。砂嵐のような中に、何かが像を結び始めたのである。
「おお、来たぞ。これだ……」

 その球体が映し始めたそれは、リーザにとって最も忌まわしい、二度と思い出したくもないはずの光景だった。
 
 三才か四才頃の少女が、手入れの行き届いた庭で遊んでいるところだった。
 輝くような金髪を持つその少女は、両手から自由自在に炎を揺らめかせている。傍らにあるのは満面の笑顔で拍手をする両親の姿だ。

 だが突然場面が切り替わり、その両親の笑顔は、すぐに激しい怒りの形相に変わった。いや、怒りだけではない。明らかに恐れの表情も含んでいた。
 先ほどより少し背が伸びた金髪の少女の横には、大火傷を負った男の子がいる。

「お兄様……」
 確か5才の時だっただろうか。忌まわしい記憶だった。あの時から両親は徐々に自分を恐れるようになった。
 そしてそれから数年後、ついには父親を魔法対決で打ち負かしてしまった。

 また場面が切り替わったが、そこからはリーザにとって地獄の日々の追体験だった。遠い昔の忘れたい記憶がまざまざと甦ったのである。

 そして場面はついに、リーザが当の屋根裏でエルフの書物を見つけた時に切り替わった。

 記憶の中にある一部始終を目撃したザーベナルトは、興奮のあまり血走った両目を球体に向けていた。
「そうか、エルフの秘術だったのか……。なるほど人間離れした魔力だったわけだ」

 独りごちた魔導士が満足そうな笑みを浮かべるのを、リーザはただ見ているしかなかった。

 幼い頃から友達を作ることも許されず、両親の罵声を浴びながら魔法の勉強に明け暮れた日々。たった一人、古びた塔に閉じ込められ泣きながら呪文を唱え続けたあの苦しい生活を、もう二度と繰り返したくはない。

 だが、このままでは魔力を失った自分は、あの頃の行き場の無い少女時代に逆戻りだ。
 いや、唯一の取り柄である魔力すら無くなった以上、状況はあの頃よりも酷い。

 最悪だ……。
 自分の存在意義が失われたことを悟ったリーザは、絶望に打ちのめされた。
 鎖に繋がれたまま力無くうなだれる。

 不意に頬を冷たいものが流れていることに気づいた。それはとめどなく溢れ、やがて自分が泣いているということに気づいた時には、感情を制御することもままならなくなっていた。

 一体自分の身体のどこからこれほどの水分が出てくるのかと訝しむほど、涙は止まらない。
 そして涙を流せば流すほど、身体からは力が失われて行くのが分かった。

 ザーベナルトによって拘束を解かれた時も、もう動く気力は残っていなかった。
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