Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第1幕 企業研修編

第6章 決意とビジネス戦略ストーキング②

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だが、次の瞬間、いつものふてぶてしい表情に変わってこう言った。


「……ずっと不可解だった。何故知っていた?」


「図書室で、君が医学書を読んでいるのを偶然見かけた」


「……本当に偶然か?」


「最初はね。そこからは少し隠れて観察したり、君の情報を集めてた。
綺麗な子が分厚い医学書を読みあさっているのがすごく印象的だった。
ずっと話しかけるチャンスを伺ってた」


「………ビジネス戦略みたいに、ストーキングを誇らしげに語るな。
お前、かなりの粘着気質だろ?」


「ふふ……まあ、そんなとこだ。お前に話しかけるタイミングも、初めから全て計算済みだ」


「理屈つけて人の背後取ってくる変質者が、一番タチが悪い。
しかも笑顔でやるあたりが……お前、末恐ろしいな」


「俺は、一度決めたことは絶対諦めない。夢も――、そして」


一呼吸置くと、いつの日か虫けらのように無視された時のように、再び侑斗ゆきとは手を差し出す。


「仲良くなりたい友達もね。よろしく、サルヴァ」


当然、侑斗ゆきとはまた同じ反応を返されると思った。

だが、その手を金髪の彼は、今度は暫し黙って見つめていた。

そして、


「……粘着ストーカー野郎とは握手はしない。ただし――」


もちろん無視された。

彼は侑斗ゆきとに背中を向けて歩き出したが、顔だけ振り返りこう言った。


「俺の名前、イギリスでの愛称は、“サルヴォ”だった。だが、その呼び方も悪くはない」


「そうか、気に入ってくれて良かった!」


サルヴァトーレなりの「まずは、名前で呼ぶことは認めてやる。話はそれからだ」という意思表示だと侑斗ゆきとは、解釈した。

まるで、好きな子と少しだけ仲が進展したかのように、彼はとても嬉しそうだった。

そして数日後、この金髪の美しい彼が、この優等生の仮面を被ったこの少年を、何の躊躇ためらいもなく当たり前のように「侑斗ゆきと」と呼ぶようになった。

これが、貧しい家庭出身の異国の少年と、日本が誇る大企業の御曹司が、生涯の友となるきっかけとなった最初の出来事だ。

本来なら、交わることがなかった二人の出会いが、後に互いの運命を大きく変えていくことになることは、この時、二人はまだ知らなかった。


〈 第1幕、完 〉


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今回は春夏秋冬のうち春のお話でした。お次は夏です。

今後も、5分単位で読める内容を毎日更新予定ですので、お気軽にお越しくだされば幸いです。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!


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