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第3幕 男を愚かにさせるものとは
第1章 集団洗脳イベントの準備①
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季節は秋――、
生徒達があのお祭り騒ぎで沸き立つ季節だった。
そんな喧噪とはよそに、静かな図書室の一角で、二人の少年がちょうどその話をしていたところだ。
「文化祭? 聞いたことはある。
“自主性”という建前で、労働力と資金を子供から搾り取る――そんな文化の名を借りた集団洗脳イベントだろ」
「サルヴァ、お前の親は文化祭にでも殺されたのか?
他校のことは知らんが、あいにく蛍雪は少し違う」
サルヴァと愛称で呼ばれた生徒は、金髪に紫の瞳、高い鼻梁と女性のような紅を引いたかのような中性的な顔立ちのイギリス出身の少年だった。
傍らで椅子に腰かける友人・侑斗に対して吐き捨てる日本への皮肉は、相変らず切れ味は最高だ。
本棚の前で手に持っている分厚い医学書に再び視線を戻すと更に毒を吐いた。
「学生にまでブラック労働文化を叩き込む日本の教育とは……もはやお前達は子供から大人まで国民単位で狂ってるな」
「いいから最後まで聞け。今年は一年生は各クラスとも演劇をすることになった。
お前が学校休んで、そして俺が生徒会の用事で抜けていた日、クラスの連中が演目と配役も決めた」
そう言って、侑斗は立ち上がると、この金髪の彼に脚本らしき冊子を手渡した。
彼もまた、サルヴァトーレに負けず劣らずの整った外見をしている日本人高校生だ。
黒髪は校則に従って切り揃えられて、学ランのボタンはきっちり第一ボタンまで留めている。
いかにもこの富裕層の子弟が通う上流階級の象徴たる生徒だった。
そして、脚本のタイトルを見たサルヴァトーレは嘲笑の表情を浮かべて一言。
「ハッ……シンデレラ? 成金願望に魔法かけて、王子に拾われるまで全てがご都合主義のサクセスストーリーか。
やはりお前達日本人は“夢の国”に住んでるだろ?」
「サルヴァ……お前はもはやただ拗らてるだけだ。病だ。イギリス出身であることは関係ない。一緒に病院に行こう」
「うるせぇ、余計なお世話だ。結局、ガラスの靴もサイズが合えば誰でも良かったんだろ。
他にも探す手立てはあっただろうに。もはや王子も探すのが途中で面倒臭くなったに違いない」
世界中の憧れ、シンデレラストーリーに、夢もロマンもクソもない男子高校生の評価が続いていたが、
「……ふふ」
どこか意味深に笑う侑斗に、サルヴァトーレは嫌な予感がした。
「なんだ?」
「いや、それより休んでいたお前の配役が決まった。今日はそれを伝えに来た」
「俺はその日は休む」
「やめておけ。蛍雪では、周囲と適応する力――
つまり“社会性”が、成績を測る上で最も重要な指標の一つだ。うちは座学だけで卒業はできないぞ。
形だけでもいい、少しは溶け込め」
「…………」
生徒達があのお祭り騒ぎで沸き立つ季節だった。
そんな喧噪とはよそに、静かな図書室の一角で、二人の少年がちょうどその話をしていたところだ。
「文化祭? 聞いたことはある。
“自主性”という建前で、労働力と資金を子供から搾り取る――そんな文化の名を借りた集団洗脳イベントだろ」
「サルヴァ、お前の親は文化祭にでも殺されたのか?
他校のことは知らんが、あいにく蛍雪は少し違う」
サルヴァと愛称で呼ばれた生徒は、金髪に紫の瞳、高い鼻梁と女性のような紅を引いたかのような中性的な顔立ちのイギリス出身の少年だった。
傍らで椅子に腰かける友人・侑斗に対して吐き捨てる日本への皮肉は、相変らず切れ味は最高だ。
本棚の前で手に持っている分厚い医学書に再び視線を戻すと更に毒を吐いた。
「学生にまでブラック労働文化を叩き込む日本の教育とは……もはやお前達は子供から大人まで国民単位で狂ってるな」
「いいから最後まで聞け。今年は一年生は各クラスとも演劇をすることになった。
お前が学校休んで、そして俺が生徒会の用事で抜けていた日、クラスの連中が演目と配役も決めた」
そう言って、侑斗は立ち上がると、この金髪の彼に脚本らしき冊子を手渡した。
彼もまた、サルヴァトーレに負けず劣らずの整った外見をしている日本人高校生だ。
黒髪は校則に従って切り揃えられて、学ランのボタンはきっちり第一ボタンまで留めている。
いかにもこの富裕層の子弟が通う上流階級の象徴たる生徒だった。
そして、脚本のタイトルを見たサルヴァトーレは嘲笑の表情を浮かべて一言。
「ハッ……シンデレラ? 成金願望に魔法かけて、王子に拾われるまで全てがご都合主義のサクセスストーリーか。
やはりお前達日本人は“夢の国”に住んでるだろ?」
「サルヴァ……お前はもはやただ拗らてるだけだ。病だ。イギリス出身であることは関係ない。一緒に病院に行こう」
「うるせぇ、余計なお世話だ。結局、ガラスの靴もサイズが合えば誰でも良かったんだろ。
他にも探す手立てはあっただろうに。もはや王子も探すのが途中で面倒臭くなったに違いない」
世界中の憧れ、シンデレラストーリーに、夢もロマンもクソもない男子高校生の評価が続いていたが、
「……ふふ」
どこか意味深に笑う侑斗に、サルヴァトーレは嫌な予感がした。
「なんだ?」
「いや、それより休んでいたお前の配役が決まった。今日はそれを伝えに来た」
「俺はその日は休む」
「やめておけ。蛍雪では、周囲と適応する力――
つまり“社会性”が、成績を測る上で最も重要な指標の一つだ。うちは座学だけで卒業はできないぞ。
形だけでもいい、少しは溶け込め」
「…………」
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