Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

文字の大きさ
50 / 94
第3幕 男を愚かにさせるものとは

第1章 集団洗脳イベントの準備①

しおりを挟む
季節は秋――、

生徒達があのお祭り騒ぎで沸き立つ季節だった。

そんな喧噪とはよそに、静かな図書室の一角で、二人の少年がちょうどその話をしていたところだ。


「文化祭? 聞いたことはある。
“自主性”という建前で、労働力と資金を子供からしぼり取る――そんな文化の名を借りた集団洗脳イベントだろ」


「サルヴァ、お前の親は文化祭にでも殺されたのか? 
他校のことは知らんが、あいにく蛍雪けいせつは少し違う」


サルヴァと愛称で呼ばれた生徒は、金髪に紫の瞳、高い鼻梁びりょうと女性のような紅を引いたかのような中性的な顔立ちのイギリス出身の少年だった。

傍らで椅子に腰かける友人・侑斗ゆきとに対して吐き捨てる日本への皮肉は、相変らず切れ味は最高だ。

本棚の前で手に持っている分厚い医学書に再び視線を戻すと更に毒を吐いた。


「学生にまでブラック労働文化を叩き込む日本の教育とは……もはやお前達は子供から大人まで国民単位で狂ってるな」


「いいから最後まで聞け。今年は一年生は各クラスとも演劇をすることになった。
お前が学校休んで、そして俺が生徒会の用事で抜けていた日、クラスの連中が演目と配役も決めた」


そう言って、侑斗ゆきとは立ち上がると、この金髪の彼に脚本らしき冊子を手渡した。

彼もまた、サルヴァトーレに負けず劣らずの整った外見をしている日本人高校生だ。

黒髪は校則に従って切り揃えられて、学ランのボタンはきっちり第一ボタンまで留めている。

いかにもこの富裕層の子弟していが通う上流階級の象徴たる生徒だった。

そして、脚本のタイトルを見たサルヴァトーレは嘲笑の表情を浮かべて一言。


「ハッ……シンデレラ? 成金願望なりきんがんぼうに魔法かけて、王子に拾われるまで全てがご都合主義のサクセスストーリーか。
やはりお前達日本人は“夢の国”に住んでるだろ?」


「サルヴァ……お前はもはやただ拗らてるだけだ。病だ。イギリス出身であることは関係ない。一緒に病院に行こう」


「うるせぇ、余計なお世話だ。結局、ガラスの靴もサイズが合えば誰でも良かったんだろ。
他にも探す手立てはあっただろうに。もはや王子も探すのが途中で面倒臭くなったに違いない」


世界中の憧れ、シンデレラストーリーに、夢もロマンもクソもない男子高校生の評価が続いていたが、


「……ふふ」


どこか意味深に笑う侑斗ゆきとに、サルヴァトーレは嫌な予感がした。


「なんだ?」


「いや、それより休んでいたお前の配役が決まった。今日はそれを伝えに来た」


「俺はその日は休む」


「やめておけ。蛍雪けいせつでは、周囲と適応する力――
つまり“社会性”が、成績を測る上で最も重要な指標の一つだ。うちは座学ざがくだけで卒業はできないぞ。
形だけでもいい、少しは溶け込め」


「…………」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

猫と王子と恋ちぐら

真霜ナオ
BL
高校一年生の橙(かぶち)は、とある理由から過呼吸になることを防ぐために、無音のヘッドホンを装着して過ごしていた。 ある時、電車内で音漏れ警察と呼ばれる中年男性に絡まれた橙は、過呼吸を起こしてしまう。 パニック状態の橙を助けてくれたのは、クラスで王子と呼ばれている千蔵(ちくら)だった。 『そうやっておまえが俺を甘やかしたりするから』 小さな秘密を持つ黒髪王子×過呼吸持ち金髪の高校生BLです。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

処理中です...