51 / 128
▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ
2-5 人の行く裏に未知あり孕む罠
しおりを挟む
sideウインザ
ガチャ
「保安部報告官ナリオ失礼しますっ。ただ今第四砦街より伝報鳥が届きましたっ」
「何⁉︎ 定期連絡は3日後だぞ、確かなのか?」
「ハイっ間違い有りません。こちら第四砦街団長ブライドウ様からですっ」
パサっ
興奮したナリオは肩をいからせて私の机に手紙を置いた。
「…………… 」
まさか…
第四でも何かあったのか。
スゥシャシャシャ…カサっ
一抹の不安を覚えつつ手紙を開封する。
「………………うむ」
「………っ… 」
固唾を飲むナリオ。
「間違いなくブライドウからの手紙だ。内容は何てことはない、来月こっちへ顔を出すとの事だ」
「こ、この時間にですか…… 」
やや呆れ気味に言うナリオだが仕方がない。
特別な連絡でもなければ通常は夜にイグアスを飛ばさない。
まぁアイツらしいのだが。
「ですがこの危機的なタイミングでイグアスが来たのは幸運としか言いようが無いかと。すぐに衛都への伝報依頼と救援要請を送り返しましょうっ」
「…………… 」
「団長?」
「…いや、送るのは明朝にしよう」
「いや、そんな悠長な場合ではないですよっ」
「…ナリオ、私達団幹部が解放されて直ぐに第四と第五砦街へ早馬を出した。ならば途中立ち寄る街の支部から伝報は出されている筈ではないのか?しかし現在までその様な報告は一切届いて来ない」
「…つまりビダンの手が、少なくとも私の様な連絡担当の保安員にまで及んでいると」
「私が奴の立場なら当然そうする。数の不利を覆すには、敵を孤立させるのは常道。これだけの事をする以上救援先に手を打つのは然るべき事だろう」
「…そうかも知れません」
ナリオの声が弱まる。
「そして今返せばイグアスは夜に着く。それではどの様な内容を送ろうともブライドウには伝わらない可能性が高い。だから明朝なのだ。少しでも多くの者の目に付けば、伝わる可能性も上がるかも知れん。とにかく明日また改めて指示を出す。以上だ」
「ハッ」
パタン
ナリオは礼をして出て行った。
だが全てが後手に回ってしまったこの状況、ナリオの言う通りこのイグアスは非常にありがたい。
貴重なこの手札、慎重に慎重を重ねて切らねばな。
sideシロ
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「…………… 」
旧道に入り闇の中を先行するのはオレ。
『ドドッドカラドドッドドッ… 』
その20m後ろをミレが馬麟で付いて来ている。
うん、アイツは何でも出来るな。
そして最後尾…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「…………… 」
無言で追走してるのはスオル。
スオルは自転車には直ぐに乗れた。
でもミレの背中を追うその表情は今も悔しそう…と言うか落ち込んでるっぽい。
まぁこの見た目で強いし賢いし偉いさんの娘とくれば納得なんだけど…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「………ブぷっ」
ヒロ君ピンチやんけー~笑
しかも今回は相手が悪いし笑笑
今の所ヒロ君の形振り構わない一生懸命さと恋愛方面に疎そうなミレが、違う世界のロマンス効果 × ヒロインの危機的シチュによって功を奏している様に見えるけど、ハッキリ言って両者のスペックは吊り合っていない。
こっちの世界はあっち程美醜に重きを置かないのなら問題無いけど、スオルは勿論のこと街中の人達の視線とか見てると同じなんだよなぁ…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
そして残念ながらオレは応援はするけど援護はしない主義。
実らせるために一喜一憂し、育んでいく為に四苦八苦するのが恋愛。
その一つ一つが歴史として2人の絆となるのだから、他人の力でどうこうなんてのは後々為になる筈が無い。
上手く行かないのもまた恋あ…ッ⁉︎⁈
ヤバッッ‼︎
急ぎ後続に向かってハンディライトを点滅させる。
シャーーーーーーーザサザサザサーー~…
ドドッドカッドザッ…
そして草むらに曲がって隠れると、後方の馬麟蹄も即座に止まった。
見つかってないよな…
「…………、………… 」
ドド…
ドド…ドドド…
ドドッドドッドドッ
ドドドッドザッドドドカラッドドッ
『ドドッドカッーー2
『ドドドドッドザッーー6
『ドザッドドドガッドドッ』ーー10
ドドドッドザッドドドカラッ
ドドドカッドドッ
ドド…ドド…
ドド…
「…………フゥーー~… 」
見たことのない装束を纏った騎兵10。
どう見ても敵だよなぁ…あれは。
ザっザっザ…
「シロ、たすかった」
近付いて来たミレが奴らの消えた先を見つつ言う。
「なぁおい、敵ばっか多過ぎだろっ」
パサっ
「なんでこっちから来るんだよっ」
ピシピシっ
正に一難去ってまた一難。
腹が立って来たオレはポケットの地図を出し広げ、その勢いのまま旧道の先を指でつつく。
「…………… 」
「おいミレっ」
「あれ…オーダクイム」
「は?」
ザっザっザ…
「オーダクイム××××××××?(ってどう言うことすか) 」
「×××、××××××××××××××××××××××××… (分からない、でもあの灰色の装束は隣国の特殊暗殺部隊って聞いたことが… ) 」
「××××××っ(そんな奴らが) 」
近付いて来たスオルが慌てて捲し立て、ミレも慄く様に重く答えているその様は、何を言ってるのか全く分かんなくても深刻なのがヒシヒシと伝って来た。
「強いのか?」
「たぶん。…わたしと同じのかも」
「ハァぁ?」
戦闘狂が10人とかクソヤバだろっ
いやそうすると
「ミレっ、隊長達が… 」
「…………、わたしたち衛都行く」
目を瞑ったミレは悩んだ末に左右に首を振り、それを見たスオルは息を飲み込む様にして押し黙った。
「ッ……そう、だよな」
肩を叩いた隊長の笑顔が蘇る。
死ぬなよ隊長達…
sideベルキー
パサっ
「…こいつもか」
「…隊長、第9隊の奴らの遺体…どうしますか?このままだと獣に… 」
倒した敵の素顔を確認すると、中にはやはり第9の者も居た。
「……敵だ、って言って捨て置くのは良い気分じゃないな。そいつらのは別に集めてクテン粉だけ撒いといてやれ。流石に運ぶ余裕はないからな」
「分かりました」
(※、クテン粉=獣が嫌う粉末で、小型の獣程度にしか効果は無い)
「う…ゥゥっ、目を開けろよおいっ、何してんだよっ」
フゥ…
「一緒に連れ帰ってやれ」ポン
「~っ、はいぃ」ゴシゴシっ
そして負傷者の応急処置が全て終わり、継戦の難しい隊員の帰還準備が整った。
「街道とは言え夜だ、戻りでも決して油断はするな」
「すみません隊長… 」
「すみません… 」
「なら良い酒でも用意して待っててくれ」
「そうだ、サイコーのやつだぞっ」
残りは6人か。
『ドドッドガラッドガラッドドッ… 』
おそらく奴らはロエ辺り。
このまま行けば明方には追い付けるだろうが、奴らは殿に子飼いの部下を配置しているはず。
この人数ではとても戦いにはならんし無理をすれば全滅するだけ。
さてどうするかだな…
「た、隊長っ」
「どうしたァっ」
「後方200mより騎兵10っ、こっちへ向かい猛進して来ますっ」
おいおい何だよそれは。
ちったぁ考える時間くらい寄越せよ…
『ドガラッドドッドドッドドッ… 』
「味方っ…じゃないよなっ」
「詳細は不明ですが隊服では有りませんっ。速度を上げますかっ?」
10騎か…
半分じゃ足止めは不可能。
追い付かれれば馬をやられる。
このまま進んで挟まれるのも厄介か…
「500m先で馬を止めるっ。迎え討つぞっ」
「「「「「ハッ‼︎ 」」」」」
『ドドッドドッドドッドザっドザっザ… 』
ズサっ、ズサっ
50mほどの距離であちらは止まり、半数ほどが馬を降りて歩いて来た。
かなりの警戒が見て取れる。
ザス、ザス、ザス、ザス、ザス…
ザス、ザス、ザス、ザス…
「………… 」
この灰色の装束…
こいつらはオーダクイムの暗殺部隊か?
ザス、ザス…
「「………… 」」
戦闘の男が目が合う距離近付くと、後ろの隊員達の緊張が伝わって来た。
「…あれ、ベルギーさんじゃないですか」
突然俺を呼んだのは二番目に居た男。
ザス、ザス、ザス…
「俺ですよ、リモーン」
そう言って覆面を捲り寄って来るのはかつての仲間。
「リモーン、お前かっ」ザス、ザス…
ザス、ザス、ザス…
「お久振りです」
「おぉ、本当だなッ『ガッ‼︎ 』
「「ッ… 」」
不意を突いたこめかみへの一撃はギリギリで防がれた。
「痛たた…、いきなりコレは酷いですよベルギーさん」
受けた腕をブラブラとさせ苦笑いするリモーン。
「お前こそ踏み込んで来る寸前だっただろ?」
「…フ、流石ですね。で、どうですか?元仲間なのでもう一度誘わせて頂きます。ベルギーさん、こちらに付きませんか?皆んな貴方を待っていますよ」
「お仲間がやられたのにか?」
「アレはビダンの部下らと金で雇われた兵隊です。仲間と言えなくも無いですがまぁそれほど… 」
「目的は?オーダクイムに鞍替えするなんて、片目になって変わったのか?ガラは」
「……変わっていませんよ、根っこはね。仲間と共に笑える日々を…です」
フ…いちいち答える訳ないよな。
懐かしい台詞だが。
「分かった。だが俺はオーダクイムに鞍替えする気は無い。今の仲間を傷付けるお前らはただの敵だ」
「…そうですか。こっちも色々あってオーダクイムって訳でもないのですけどね…残念です」スッ
リモーンが静かに手を上げると、後方の敵も馬を降りこっちへ向かって来た。
「俺の実力はご存知かと思いますが、この中の半分は俺よりも強いですよ」シュラ…
言い終えるとリモーンは剣を抜いた。
「ハ、それはまたご丁寧なことだな」シュッ
しかし本当ならマズイぞ。
リモーンは前の傭兵団でも五指の実力者。
ただでさえ7:3で分が悪いと思っていたのがこれでは8:2か9:1。
ッ…
部下の無駄死にだけは御免だ。
道連れに3、4人殺れば何とか逃がせるか?
夜空に浮かぶ端欠けの惑星を視界に捉えながら、後ろの部下達に撤退の合図を出すタイミングを図る。
ザっザっ…
「隊長、俺は最後までやりますよ」
ザっザっ…
「俺も、ここで自分だけ逃げるとか無理ですって」
他の奴らを見ると、そいつらも何も言わずに頷いた。
「ハァーーーーー~……ンっとに馬鹿ばっかだよなぁ、お前らは」
尚の事死なせたくなくなるだろ。
ガラ、お前のせいで10回目は出来なさそうだけどな、でも俺は今昔以上の仲間に囲まれているぞ?
ーーー『ドシュッ‼︎ 』
「うガッ⁉︎ 」
「何だッ」
フォッーー『バスッ』
「うぐッ」
フォッーーー『グサッ』
「ングぅ⁉︎ 」
突然敵の中を割って走る人影。
まさか…
ダタタタッ
ーーシュ『ギィッ‼︎ 』
「っ⁉︎」
『ドゥっ』
「グぉ… 」
ソイツは斬りつけたリモーンに斬撃を防がれると、即座に腹へと蹴りを見舞った。
彼か…いや…
「ンドリャーーーーーーッ……てハァハァ、あれ?蹴る前だったか?」
「「「「「スオルゥッ⁉︎ 」」」」」
「ハァハァハァハァッ…皆んなっ居るなっ、ッシ間に合ったぁぁっ」
驚く俺達を置いて人数を確かめたスオル。
「いやお前……何で戻って…ってかその装備は… 」
「隊長ォっ‼︎ 」
「お、おう」
勢い付いたスオルに気圧される。
「ハァハァ、命令違反すみませんっ。でも今まで言ってませんでしたけどねハァハァっ、実は俺と母ちゃん6年前に隊長に助けられてるんですよ」
…ろ、6年前?
こっちはそんな前の事憶えてないっての。
「フゥーーーーー~っ…だからさ、隊の皆んなもだけど恩人を見捨てて行けるワケないし…」
パキッパキッ
「ましてやそれを害しようとするヤツらなんかはね、全部まとめてブッ倒してやるよォッッ」
ズザッ
ガチャ
「保安部報告官ナリオ失礼しますっ。ただ今第四砦街より伝報鳥が届きましたっ」
「何⁉︎ 定期連絡は3日後だぞ、確かなのか?」
「ハイっ間違い有りません。こちら第四砦街団長ブライドウ様からですっ」
パサっ
興奮したナリオは肩をいからせて私の机に手紙を置いた。
「…………… 」
まさか…
第四でも何かあったのか。
スゥシャシャシャ…カサっ
一抹の不安を覚えつつ手紙を開封する。
「………………うむ」
「………っ… 」
固唾を飲むナリオ。
「間違いなくブライドウからの手紙だ。内容は何てことはない、来月こっちへ顔を出すとの事だ」
「こ、この時間にですか…… 」
やや呆れ気味に言うナリオだが仕方がない。
特別な連絡でもなければ通常は夜にイグアスを飛ばさない。
まぁアイツらしいのだが。
「ですがこの危機的なタイミングでイグアスが来たのは幸運としか言いようが無いかと。すぐに衛都への伝報依頼と救援要請を送り返しましょうっ」
「…………… 」
「団長?」
「…いや、送るのは明朝にしよう」
「いや、そんな悠長な場合ではないですよっ」
「…ナリオ、私達団幹部が解放されて直ぐに第四と第五砦街へ早馬を出した。ならば途中立ち寄る街の支部から伝報は出されている筈ではないのか?しかし現在までその様な報告は一切届いて来ない」
「…つまりビダンの手が、少なくとも私の様な連絡担当の保安員にまで及んでいると」
「私が奴の立場なら当然そうする。数の不利を覆すには、敵を孤立させるのは常道。これだけの事をする以上救援先に手を打つのは然るべき事だろう」
「…そうかも知れません」
ナリオの声が弱まる。
「そして今返せばイグアスは夜に着く。それではどの様な内容を送ろうともブライドウには伝わらない可能性が高い。だから明朝なのだ。少しでも多くの者の目に付けば、伝わる可能性も上がるかも知れん。とにかく明日また改めて指示を出す。以上だ」
「ハッ」
パタン
ナリオは礼をして出て行った。
だが全てが後手に回ってしまったこの状況、ナリオの言う通りこのイグアスは非常にありがたい。
貴重なこの手札、慎重に慎重を重ねて切らねばな。
sideシロ
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「…………… 」
旧道に入り闇の中を先行するのはオレ。
『ドドッドカラドドッドドッ… 』
その20m後ろをミレが馬麟で付いて来ている。
うん、アイツは何でも出来るな。
そして最後尾…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「…………… 」
無言で追走してるのはスオル。
スオルは自転車には直ぐに乗れた。
でもミレの背中を追うその表情は今も悔しそう…と言うか落ち込んでるっぽい。
まぁこの見た目で強いし賢いし偉いさんの娘とくれば納得なんだけど…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
「………ブぷっ」
ヒロ君ピンチやんけー~笑
しかも今回は相手が悪いし笑笑
今の所ヒロ君の形振り構わない一生懸命さと恋愛方面に疎そうなミレが、違う世界のロマンス効果 × ヒロインの危機的シチュによって功を奏している様に見えるけど、ハッキリ言って両者のスペックは吊り合っていない。
こっちの世界はあっち程美醜に重きを置かないのなら問題無いけど、スオルは勿論のこと街中の人達の視線とか見てると同じなんだよなぁ…
カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー
そして残念ながらオレは応援はするけど援護はしない主義。
実らせるために一喜一憂し、育んでいく為に四苦八苦するのが恋愛。
その一つ一つが歴史として2人の絆となるのだから、他人の力でどうこうなんてのは後々為になる筈が無い。
上手く行かないのもまた恋あ…ッ⁉︎⁈
ヤバッッ‼︎
急ぎ後続に向かってハンディライトを点滅させる。
シャーーーーーーーザサザサザサーー~…
ドドッドカッドザッ…
そして草むらに曲がって隠れると、後方の馬麟蹄も即座に止まった。
見つかってないよな…
「…………、………… 」
ドド…
ドド…ドドド…
ドドッドドッドドッ
ドドドッドザッドドドカラッドドッ
『ドドッドカッーー2
『ドドドドッドザッーー6
『ドザッドドドガッドドッ』ーー10
ドドドッドザッドドドカラッ
ドドドカッドドッ
ドド…ドド…
ドド…
「…………フゥーー~… 」
見たことのない装束を纏った騎兵10。
どう見ても敵だよなぁ…あれは。
ザっザっザ…
「シロ、たすかった」
近付いて来たミレが奴らの消えた先を見つつ言う。
「なぁおい、敵ばっか多過ぎだろっ」
パサっ
「なんでこっちから来るんだよっ」
ピシピシっ
正に一難去ってまた一難。
腹が立って来たオレはポケットの地図を出し広げ、その勢いのまま旧道の先を指でつつく。
「…………… 」
「おいミレっ」
「あれ…オーダクイム」
「は?」
ザっザっザ…
「オーダクイム××××××××?(ってどう言うことすか) 」
「×××、××××××××××××××××××××××××… (分からない、でもあの灰色の装束は隣国の特殊暗殺部隊って聞いたことが… ) 」
「××××××っ(そんな奴らが) 」
近付いて来たスオルが慌てて捲し立て、ミレも慄く様に重く答えているその様は、何を言ってるのか全く分かんなくても深刻なのがヒシヒシと伝って来た。
「強いのか?」
「たぶん。…わたしと同じのかも」
「ハァぁ?」
戦闘狂が10人とかクソヤバだろっ
いやそうすると
「ミレっ、隊長達が… 」
「…………、わたしたち衛都行く」
目を瞑ったミレは悩んだ末に左右に首を振り、それを見たスオルは息を飲み込む様にして押し黙った。
「ッ……そう、だよな」
肩を叩いた隊長の笑顔が蘇る。
死ぬなよ隊長達…
sideベルキー
パサっ
「…こいつもか」
「…隊長、第9隊の奴らの遺体…どうしますか?このままだと獣に… 」
倒した敵の素顔を確認すると、中にはやはり第9の者も居た。
「……敵だ、って言って捨て置くのは良い気分じゃないな。そいつらのは別に集めてクテン粉だけ撒いといてやれ。流石に運ぶ余裕はないからな」
「分かりました」
(※、クテン粉=獣が嫌う粉末で、小型の獣程度にしか効果は無い)
「う…ゥゥっ、目を開けろよおいっ、何してんだよっ」
フゥ…
「一緒に連れ帰ってやれ」ポン
「~っ、はいぃ」ゴシゴシっ
そして負傷者の応急処置が全て終わり、継戦の難しい隊員の帰還準備が整った。
「街道とは言え夜だ、戻りでも決して油断はするな」
「すみません隊長… 」
「すみません… 」
「なら良い酒でも用意して待っててくれ」
「そうだ、サイコーのやつだぞっ」
残りは6人か。
『ドドッドガラッドガラッドドッ… 』
おそらく奴らはロエ辺り。
このまま行けば明方には追い付けるだろうが、奴らは殿に子飼いの部下を配置しているはず。
この人数ではとても戦いにはならんし無理をすれば全滅するだけ。
さてどうするかだな…
「た、隊長っ」
「どうしたァっ」
「後方200mより騎兵10っ、こっちへ向かい猛進して来ますっ」
おいおい何だよそれは。
ちったぁ考える時間くらい寄越せよ…
『ドガラッドドッドドッドドッ… 』
「味方っ…じゃないよなっ」
「詳細は不明ですが隊服では有りませんっ。速度を上げますかっ?」
10騎か…
半分じゃ足止めは不可能。
追い付かれれば馬をやられる。
このまま進んで挟まれるのも厄介か…
「500m先で馬を止めるっ。迎え討つぞっ」
「「「「「ハッ‼︎ 」」」」」
『ドドッドドッドドッドザっドザっザ… 』
ズサっ、ズサっ
50mほどの距離であちらは止まり、半数ほどが馬を降りて歩いて来た。
かなりの警戒が見て取れる。
ザス、ザス、ザス、ザス、ザス…
ザス、ザス、ザス、ザス…
「………… 」
この灰色の装束…
こいつらはオーダクイムの暗殺部隊か?
ザス、ザス…
「「………… 」」
戦闘の男が目が合う距離近付くと、後ろの隊員達の緊張が伝わって来た。
「…あれ、ベルギーさんじゃないですか」
突然俺を呼んだのは二番目に居た男。
ザス、ザス、ザス…
「俺ですよ、リモーン」
そう言って覆面を捲り寄って来るのはかつての仲間。
「リモーン、お前かっ」ザス、ザス…
ザス、ザス、ザス…
「お久振りです」
「おぉ、本当だなッ『ガッ‼︎ 』
「「ッ… 」」
不意を突いたこめかみへの一撃はギリギリで防がれた。
「痛たた…、いきなりコレは酷いですよベルギーさん」
受けた腕をブラブラとさせ苦笑いするリモーン。
「お前こそ踏み込んで来る寸前だっただろ?」
「…フ、流石ですね。で、どうですか?元仲間なのでもう一度誘わせて頂きます。ベルギーさん、こちらに付きませんか?皆んな貴方を待っていますよ」
「お仲間がやられたのにか?」
「アレはビダンの部下らと金で雇われた兵隊です。仲間と言えなくも無いですがまぁそれほど… 」
「目的は?オーダクイムに鞍替えするなんて、片目になって変わったのか?ガラは」
「……変わっていませんよ、根っこはね。仲間と共に笑える日々を…です」
フ…いちいち答える訳ないよな。
懐かしい台詞だが。
「分かった。だが俺はオーダクイムに鞍替えする気は無い。今の仲間を傷付けるお前らはただの敵だ」
「…そうですか。こっちも色々あってオーダクイムって訳でもないのですけどね…残念です」スッ
リモーンが静かに手を上げると、後方の敵も馬を降りこっちへ向かって来た。
「俺の実力はご存知かと思いますが、この中の半分は俺よりも強いですよ」シュラ…
言い終えるとリモーンは剣を抜いた。
「ハ、それはまたご丁寧なことだな」シュッ
しかし本当ならマズイぞ。
リモーンは前の傭兵団でも五指の実力者。
ただでさえ7:3で分が悪いと思っていたのがこれでは8:2か9:1。
ッ…
部下の無駄死にだけは御免だ。
道連れに3、4人殺れば何とか逃がせるか?
夜空に浮かぶ端欠けの惑星を視界に捉えながら、後ろの部下達に撤退の合図を出すタイミングを図る。
ザっザっ…
「隊長、俺は最後までやりますよ」
ザっザっ…
「俺も、ここで自分だけ逃げるとか無理ですって」
他の奴らを見ると、そいつらも何も言わずに頷いた。
「ハァーーーーー~……ンっとに馬鹿ばっかだよなぁ、お前らは」
尚の事死なせたくなくなるだろ。
ガラ、お前のせいで10回目は出来なさそうだけどな、でも俺は今昔以上の仲間に囲まれているぞ?
ーーー『ドシュッ‼︎ 』
「うガッ⁉︎ 」
「何だッ」
フォッーー『バスッ』
「うぐッ」
フォッーーー『グサッ』
「ングぅ⁉︎ 」
突然敵の中を割って走る人影。
まさか…
ダタタタッ
ーーシュ『ギィッ‼︎ 』
「っ⁉︎」
『ドゥっ』
「グぉ… 」
ソイツは斬りつけたリモーンに斬撃を防がれると、即座に腹へと蹴りを見舞った。
彼か…いや…
「ンドリャーーーーーーッ……てハァハァ、あれ?蹴る前だったか?」
「「「「「スオルゥッ⁉︎ 」」」」」
「ハァハァハァハァッ…皆んなっ居るなっ、ッシ間に合ったぁぁっ」
驚く俺達を置いて人数を確かめたスオル。
「いやお前……何で戻って…ってかその装備は… 」
「隊長ォっ‼︎ 」
「お、おう」
勢い付いたスオルに気圧される。
「ハァハァ、命令違反すみませんっ。でも今まで言ってませんでしたけどねハァハァっ、実は俺と母ちゃん6年前に隊長に助けられてるんですよ」
…ろ、6年前?
こっちはそんな前の事憶えてないっての。
「フゥーーーーー~っ…だからさ、隊の皆んなもだけど恩人を見捨てて行けるワケないし…」
パキッパキッ
「ましてやそれを害しようとするヤツらなんかはね、全部まとめてブッ倒してやるよォッッ」
ズザッ
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる