勘とノリでやってたら、七戦士に選ばれた

第三章 火の街カーネリアン

世界の裏切り者

火山の中に入っていくと、
そこにはロイドとグレイがいた。

「エンヘル、どうしてここにいるんだ
ここは危ないから離れた方が良い」

「ロイド先輩、その人って
本当にエンヘルって人なんですか？
ただ顔が似てるだけかもしれませんよ」

「いや、彼女は間違いなくエンヘルだ
ずっと見ていた顔だから間違いない」

「そのエンヘルって、
結局何者なんだよ」

「エンヘルは、昔俺の傍観者だったんだ。
ここにいるってことは、今は誰かの傍観者なのだろう」

「そうか、ロイドにも傍観者が…
だから傍観者のイーツを気にしていたんだな」

「でも今回はどちらだ？
破壊神か、創造神の使いかによっては、
目的も変わってくるな…」

この世界には、二柱の神が存在する。

万物を創造して作り出す創造神と、
不要となった物を破壊する破壊神の二柱だ。

この世界は遥か昔から、
破壊して創造してを繰り返して生まれたものだ。

ちなみにイーツは創造神の使いだ。

『ロイド、久しぶりね
だけど、今の私はあなたの味方じゃないの』

「何？ということは、破壊神の使いか？」

『いいえ、私は創造神様の使い
あなた達の邪魔をする為にここにいるの』

『創造神様が？一体何の為に…』

『決まってるじゃない
私は世界の裏切り者、それが役目なのよ
上手くいけば創造神様が人間に戻して下さるの』

『創造神様、それは本当ですか？』

…………ああ、上手くいけば…の話だがな。

だがそれだけの役目だ。

勝てない相手ではないだろう？

神の試練だと思って頑張ってくれ。

『そうですか…
これが神の試練なのであれば、
僕はこの試練の壁を超えてみせましょう』

イーツは抜いた剣の先をエンヘルへと向ける。

『ならば踏み倒そう
僕の前に立ち塞がるのならば、蹴散らすまでだ』

『ああ、創造神様！どうか私に神の加護を！』

金色に光る剣が、エンヘルを照らしている。

『勝負は一瞬、
勝った者は生きて、負けた者は死ぬ
ただそれだけの単純な勝負だ』

『良いわね単純で、
私、そんなシンプルな勝負好きよ』

周りの空気に異様な雰囲気が立ち込める。

キィン！

勝負は一瞬で決まった。

本来なら相手が死ぬのだろうが、
エンヘルはまだ生きていた。

『ああ、創造神様！
あなた様はまだ私を生かして下さるのですね！』

『…………創造神様の力ですか』

『ええ、創造神様の力ならば、
本来死んでいるはずの私を生かすことも出来るの
見ておられますか創造神様！
私の目を通して！イーツの目を通して！
私の今の姿を、御覧になっていますか！』

もういい、充分だ。

君は立派に役目を全うしてくれた。

約束通り、君を人間に戻してあげよう。

ああそうすれば、君は一度死なないといけないな。

最後に、俺が介錯をしてあげよう。

イーツ、君の体を借りるよ。

「見るが良い、オルティス
これが世界の裏切り者の末路だ
せめて安らかに、死ぬが良い」

哀れな傍観者エンヘルは、
他ならぬ創造神の手によって息絶えた。