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一刻
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朝を知らせる時計が鳴る
唸りながらも目を開く
隣には己より背の高い弟の蒼月が居た
己は静かに蒼月の頭を一撫でして起き上がろうとする
布団の微かな音でさえ耳にした蒼月は片目を眠そうに開き、私を見た
「まだ早くない?」
蒼月はそう言いつつも己と同じように起き上がると己を抱き締める
己は静かに蒼月を受け止めて擦り寄ると蒼月の肩に顎を乗せた
「夜はいつも待ってはくれないですね」
己は静かにそう言った
「………紅月はいつもそれ言うね」
蒼月もまた己と同じようにいつもそれを言う
朝をいよいよと迎えた外は明るく
騒がしい人々が群がる
それを蒼月は嫌がるが己はそれをただただ見つめた
学校という学びの屋敷へ向かうため着替えを行うが己は力を使い素早く制服に変わる
「紅月」
蒼月に呼ばれ渋々部屋に入った
その部屋は他の部屋より薄暗くそして心が異様に絞られるかの如く痛くなる
かつて親と呼ばれたその人達が映る写真は一言で言うならば哀しいものだ
己はその写真を前に蒼月と手を合わせる
「「いってきます」」
扉を開けると光が入っきた
己はそれを眩しそうに目を細めつつも歩みを進める
「紅月は今日何すんの」
己は溜息を吐きながら蒼月を見た
「蒼月はいつも言わせますね」
蒼月はさも当然かのように頷くと笑っている
「俺は~、大っ嫌いな日本の話と世界の話~」
「己は確か化学系だったと思いますよ?」
スタスタと歩く己とゆっくり歩く蒼月の歩幅は何気なくも一緒の幅
己と蒼月の教室は同じだが男と女で別れている
寂しいものだがそれはまた同じ気持ちでこうして最後まで一緒にいるのだ
力のことは学校では秘密としている
何故だろうと言われればこう答えよう
それを知るのは直だと言うこと
そして
それを知る覚悟はまだないと
放課後
互いの授業が終わりを告げ、教室が騒がしくなる
だが
流石蒼月と言ったところだ
女に囲まれている
生憎己は興味がないので待つことにした
しかし蒼月もそこまで同じらしく己を待たせている事が苛ついていたのか机を蹴り上げる
「来んな!散れ!」
暴れそうになる蒼月の所へ己は行く
皆は止める
だが己の弟は己の家族たるものこの程度で怯えていては拉致が開かない
それに喧嘩などしてみろ
これでは済まないしそうだった
「蒼月」
殴りかかる拳を人差し指で止めて静かに名前を口にする
目に光を灯し、己を見る蒼月の目は次第に潤いをあらわにした
「ヴー!!紅月ー!!」
己より二十センチも高い蒼月の抱き締める力を苦にもせず己は溜息を吐きながら皆を見る
「あまりにも酷すぎる反応の皆々様、お引き取り願いたいものですが?」
バラバラと散るように去って行く皆に冷ややかな目を向けて睨む
蒼月は泣き病もうと目を擦っていた
己はその手を優しく触れて微笑む
「よく人に当たりませんでしたね?」
「うん」
蒼月は人には決して当たらない
当たろうとしない
だから当たるのは物になる
己は知ってるからこそあの皆が嫌いだ
あぁ、憂鬱だ
唸りながらも目を開く
隣には己より背の高い弟の蒼月が居た
己は静かに蒼月の頭を一撫でして起き上がろうとする
布団の微かな音でさえ耳にした蒼月は片目を眠そうに開き、私を見た
「まだ早くない?」
蒼月はそう言いつつも己と同じように起き上がると己を抱き締める
己は静かに蒼月を受け止めて擦り寄ると蒼月の肩に顎を乗せた
「夜はいつも待ってはくれないですね」
己は静かにそう言った
「………紅月はいつもそれ言うね」
蒼月もまた己と同じようにいつもそれを言う
朝をいよいよと迎えた外は明るく
騒がしい人々が群がる
それを蒼月は嫌がるが己はそれをただただ見つめた
学校という学びの屋敷へ向かうため着替えを行うが己は力を使い素早く制服に変わる
「紅月」
蒼月に呼ばれ渋々部屋に入った
その部屋は他の部屋より薄暗くそして心が異様に絞られるかの如く痛くなる
かつて親と呼ばれたその人達が映る写真は一言で言うならば哀しいものだ
己はその写真を前に蒼月と手を合わせる
「「いってきます」」
扉を開けると光が入っきた
己はそれを眩しそうに目を細めつつも歩みを進める
「紅月は今日何すんの」
己は溜息を吐きながら蒼月を見た
「蒼月はいつも言わせますね」
蒼月はさも当然かのように頷くと笑っている
「俺は~、大っ嫌いな日本の話と世界の話~」
「己は確か化学系だったと思いますよ?」
スタスタと歩く己とゆっくり歩く蒼月の歩幅は何気なくも一緒の幅
己と蒼月の教室は同じだが男と女で別れている
寂しいものだがそれはまた同じ気持ちでこうして最後まで一緒にいるのだ
力のことは学校では秘密としている
何故だろうと言われればこう答えよう
それを知るのは直だと言うこと
そして
それを知る覚悟はまだないと
放課後
互いの授業が終わりを告げ、教室が騒がしくなる
だが
流石蒼月と言ったところだ
女に囲まれている
生憎己は興味がないので待つことにした
しかし蒼月もそこまで同じらしく己を待たせている事が苛ついていたのか机を蹴り上げる
「来んな!散れ!」
暴れそうになる蒼月の所へ己は行く
皆は止める
だが己の弟は己の家族たるものこの程度で怯えていては拉致が開かない
それに喧嘩などしてみろ
これでは済まないしそうだった
「蒼月」
殴りかかる拳を人差し指で止めて静かに名前を口にする
目に光を灯し、己を見る蒼月の目は次第に潤いをあらわにした
「ヴー!!紅月ー!!」
己より二十センチも高い蒼月の抱き締める力を苦にもせず己は溜息を吐きながら皆を見る
「あまりにも酷すぎる反応の皆々様、お引き取り願いたいものですが?」
バラバラと散るように去って行く皆に冷ややかな目を向けて睨む
蒼月は泣き病もうと目を擦っていた
己はその手を優しく触れて微笑む
「よく人に当たりませんでしたね?」
「うん」
蒼月は人には決して当たらない
当たろうとしない
だから当たるのは物になる
己は知ってるからこそあの皆が嫌いだ
あぁ、憂鬱だ
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