紅蒼の双子はただ世界を生きる

蒼葉縁

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二刻

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俺は無月蒼月
姉とも妹とも言える紅月の兄であり弟
俺は紅月が大好きなのと同時に大切な人だ
紅月はいつもあの部屋を嫌がる
俺はそれも分かるけどあの親と呼ばれたその人を忘れたくはなかった
忘れたら紅月が生まれたことも俺が生まれたこともなくなると思ったから
騒がしい人々の声も紅月は興味なさそうだ
俺は嫌いだけどね
でも俺としては紅月のその顔が俺にだけ笑うなら人々が騒がしいのも得かも………冗談だよ………半分は
紅月は力について言おうとしないけど俺は言おうかな
俺の力は 自由
例えばー
自然を自由に操れる
木を生やしたり~とか?
最恐で最強なんだよ
俺と紅月は男女の双子
俺は髪色が二束白で他は蒼
紅月は二束白で他は紅
お揃いなんだよー
でも学校って嫌だよね~
なんで教室は一緒なのに性別ってだけで分かれているんだろー
皆も思わない?
そんでさ
やっとやっと終わったと思ったら煩い女共に囲まれて苛々するし紅月待たせてるって言った
そしたら
「あんな女なんて待たせちゃえ!」
なんて言われたんだ
そしたら俺の中で何かが切れた
気付いたら机が割れてて目の前に紅月が居る
ボロボロ流れる涙が止まらない
紅月を引き寄せて顔を伏せた
紅月は優しく俺を撫でるが皆に言った言の葉は酷く冷たく他人行儀
まるで別人かのようだ
皆が去って行った後、俺は机を直す
紅月は本を読んでいた
俺が直したと同時に本が閉じる
「帰りましょう?」
その顔は
あの冷たい言葉を吐いていたのか分からないくらい綺麗な夕陽に照らされた微笑みだった
「紅月」
「はい?」
俺と紅月の繋がれた手を俺は離したくない
そう思った
夕飯を食べて、歯磨きしていると紅月が俺に抱き付く
俺はキョトンとする
「ほーひた?」
「いえ、何故か己が嫌になりました」
俺は口をゆすいでタオルで口を拭く
そして
俺はくるりと振り返り、紅月を抱き締める
と言うよりは包み込む
「大丈夫、紅月」
「………」
微かに震えている小さな紅月を俺は静かに見つめる
紅月は顔を見せたくないようにフルフルと俺の胸元に顔を埋めた
泣いてると分かる
「紅月は泣き虫?」
「………ん」
ほんの少しの反応でも俺としては嬉しい
俺は紅月を抱き上げてベッドへと向かう
「俺は一緒だよ」
ベットに入っても紅月は離れようとしない
「…うん」
紅月は今きっとこう思ってる
「消えそうだから?」
「!」
ピクンと肩が跳ねた
あたりだ
紅月の癖は図星だと肩が跳ねる
そして俺に擦り寄るのだ
「よしよし、じゃあ寝ようか」
「ん」
俺の心音を聴くと紅月はいつもより早く眠りに落ちる
俺は紅月の額に口付けを落とし、目を閉じた
明日はきっと元の紅月だけど
俺はそんな紅月も大好きなんだよ?
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