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あれからと言うものの
アルガード様は普段通りの少し心配性になってしまった
私が仕事をするたびヒヨコの様についてくる
「エリオット」
「はい?」
アルガード様に呼ばれて私は振り返ると腕を広げていた
私は書類を置いて近付く
「………」
「ふ、来い」
ポスんと腕の中に収まる
優しい甘い香りがした
「最近寝ていないだろう」
アルガード様にはばれていた様だ
少し唸りつつ頷くとアルガード様に頭を撫でられる
「寝れば良い」
「まだ、仕事が」
そういう私を見つめるアルガード様に私は言葉を詰まらせた
「う、」
「俺が寝れば良いと言ったんだ、寝ろ」
アルガード様は立ち上がると私ごとベットに転がる
心臓の音が心地よくて、うとうとしてきた
「………」
ーアルガード
「寝たか」
すよすよと寝息を立てるエリオットに俺は微笑んだ
あの時、俺の部屋の前に靴が一足しかない時は心底心が折れそうになる
そんな感覚だった
探してもいない
そしたら聞こえるあいつの声
怖かっただろう
辛かっただろう
そんな気持ちだった
でもエリオットは今でも笑っている
まるで隠すかの様に
仕事に没頭している
俺はそんなエリオットはあまり見たくない
普段のエリオットはこんなにも甘えん坊で可愛いのだから
「お前は少し、頑張りすぎだ」
優しく、諭す様にそう言う
けれどその声は
静かな部屋に消えていく
ーアルガード 完

目を覚ますと夕方になっていた
私は慌てて起き上がろうとしたが起き上がれない
なぜかと言われればアルガード様が寝ているからだ
(困りましたね………)
私はじっとアルガード様のお顔を見る
とても綺麗な顔をしていた
「ふふ、好きですよ」
こんなこと、言えないですけどね
と思っていたが
「起きている時に言うてはくれないのか?」
「!!?!?」
起きていたことさえ気がつかなかった
私は真っ赤になりあたふたする
そしてアルガード様はニヤリと笑う
「愛しい奴だ」
「あの、そ、んぅ………!」
アルガード様に口付けをされる
甘くて
蕩けそうな
そんな口付けをされた
私は息を整えようとしたがそれすら許してくれない
「アル、ガー…ド、様」
「ん、すまないな、止まらない」
そのまま私の身体はベットに沈んでいく
長い口付けが終わるとアルガード様はまるで子犬の様な瞳で私を見る
「駄目だと分かっている」
それってつまり
「………」
「だが君を抱きたい」
そういうことだ
私は静かにアルガード様の首に腕を回す
アルガード様はそっと私を抱き締める
「後悔しませんか?」
「するわけないだろう」
そう言われて私はクスリと笑う
アルガード様はむすっとしている
互いに引き寄せられる様に口付けを交わし
二人でベットに沈んだ
それは甘くて
本当に一つになるかと思った
時間だった
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