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しおりを挟むあの子が嫌い、と僕に話していたはずの彼女が、その子と楽しげに歩いているのを見かけた。気になってそのことを聞いてみると、彼女はこう答えた。
「うん、嫌いだよ。でも、それとこれとは別。だって、あの子はクラスで幅を利かせてる子ともそれなりに仲が良いの。だからわたしもあの子と仲いいふりをしておいた方がいいんだよね」
「なるほど。つまりは処世術のひとつだと」
「そう。じゃないとあの子とは話さないよ。人気者なんだもの」
「君らしい」
「嫌い?」
「いいや、凄く好き」
僕がそう言うと、彼女はにひひ、とひねくれた笑い方をする。
僕がこの子と一緒にいるのは、こういう打算的で現実的な人間関係の構築をするからだ。僕はそういう割り切った関係が好きだ。僕の場合はメリットを考えて選ぶのではなく、いっさい笑わなくてもいい相手を探しているのだけど。
「君はあの子のこと、どう思ってるの?」
「なんとも思ってないよ。知ってるだろ、僕はああいうタイプの子と話すような人間じゃない」
「話さなくても、密かに憧れていたり、好意を抱いていたりすることはあるでしょう?」
「あると思う? カーストのトップにいるような人とは少しの関わりも持ちたくないよ」
「わたしはカースト下位なの?」
「だから学校ではまったく話さないだろう? そもそも、君はカーストのどこにも居座ろうとしない。話しかけられたら答えて、気取られない程度に話しかける。それでのらりくらりやるタイプじゃない?」
「ご名答。わたしのことよく見てるね」
「学校では君も、僕の平穏を脅かしかねない因子のひとつだからね」
「ひどい言い草」
やはり彼女はにひひ、と笑う。学校では一度も見せたことのない笑い方だ。
「君はなんで、僕と付き合ってくれてるの?」
「こんなに素を出せる相手、学校には他にいないでしょ? 素を出すのはストレスの発散になるの」
「光栄だね」
僕が無感動に言うと、彼女はにひひと笑う。
「ま、ちょっとやそっとじゃストレスなんてたまらないから、意味なんてないけどね」
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