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第一章
第5話 変転する運命
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地上に上がるに連れて、外の喧噪がはっきりと聞こえるようになってきた。
すると、ふとリヴィエラが足を止めた。
「ジーク様、この先から戦いの音が……」
通路の先にあるのは一際大きな扉だ。その向こうから、魔法が放たれる音と悲鳴が聞こえてくる。
この反響具合、どうやらこの先はかなり広い空間のようだ。
俺はリヴィエラの手を引くと、中がこっそりと見通せる位置につき、扉をそっと開いて中の様子を窺う。
「ジーク様、どうしたのですか?」
「出来れば、姿を見られたくないんだ」
もしかしたら、騎士団がヨトゥン教徒と戦っているのかもしれない。中に父がいたら面倒だ。
ひとまず身を隠しながら、中で起こっている戦闘の様子を窺う。
「これは……」
そこで行われていたのは、戦闘などという生易しいものではなかった。
「ひやぁああああああああああああああ!!!!!!! ぎやあああああああああああああああ!!!!!!! 許して、許してぇええええええええええええ!!!!!!!!!!」
生かさず殺さず、丁度いい火加減でヨトゥン教徒が焼かれていた。
一体どれほどそうされていたのか、男は終わらない苦痛に曝されながら絶叫を上げている。
「黙れ。自分たちは散々、人を弄んできたのに、命乞いなどムシが良すぎるんだよ!!」
男の命乞いに苛立ったのか、敵対している少年が教徒の首を掴み上げた。
すると、その身体を包む火が一気に燃え上がり、一瞬でその身が焼失した。
「き、貴様、良くも仲間を!!」
仲間を焼かれたヨトゥン教徒達は、仇を討たんという勢いで、少年に一斉に襲いかかった。
「ゴミが……」
勝敗は一瞬であった。少年は次々に襲いかかる敵を軽くいなすと、感電、凍結、窒息といったあらゆる魔法属性の攻撃によって死に追いやっていく。
しかも、一瞬で片を付けるのではなく、なるべく最大限に苦しませるように、苦痛の多い方法をあえて選択していた。
「嘘……だろ……?」
それまで背を向けていた少年の顔が露わになった。俺はそれを見て驚愕する。
何故なら、その人物こそが、親友でありこの世界の主人公でもあるクライドであったからだ。
「あれが本当にクライドなのか…?」
ゲームにおけるクライドは穏やかで、理想に燃える人物であった。
自身が〝加護なし〟だった経験から、〝加護なし〟や亜人への差別を撤廃しようと苦心し、様々な仲間と信頼関係を結び、この世界を脅かす魔王と魔族の軍勢と戦った。
そんな人物が今は、徹底的に敵を嬲り苦しめる、悪鬼羅刹のような人物となっていた。
全身から禍々しい瘴気が漏れ出て、憎悪に染まり切った少年に、ゲームにおける好青年の面影は欠片もなかった。
「ジーク様、もしかして、あれは……」
流石に血縁だけあって、リヴィエラはその正体にすぐ気付いたようだ。
「いや……クライドはあんな人間じゃないはずだ」
一体、何が起こったんだ。
俺とクライドは幼馴染であった。当然、彼のことはゲーム知識以上によく知っている。
当然、あんな残酷な方法で敵を惨殺するような、苛烈な面は全くなかった。
「フフ……素晴らしいよクライド。君の加護は凄いね。確か、味方の加護と共鳴し、その力を借りるんだっけ? 凄まじい力だね」
クライドが完全に敵を殲滅した頃、手を叩いてその戦果を賞賛しながら、もう一人の少年がやって来た。
「えっ……あ、あの人は……?」
リヴィエラが困惑する様子を見せた。
無理もない。やってきたのは、俺と全く同じ顔をしていたオルトなのだから。
「……複雑な事情があるんだ。あれは俺の弟で、今は彼がジークを名乗っている」
「弟……?」
「混乱するよな。俺だってそうだ。なにせ、クライドがあんな風になってるなんて……」
俺の行動で、クライドの運命が変わってしまったのか……?
そりゃ、ゲームと比べたら多少の変化は起こるだろうが、今のところ俺がしたのは、《魔王の核》の移植を回避したことと、リヴィエラの命を救ったぐらいだ。
少なくともこのわずかな期間に、クライドの性格をここまで一変させるなど考えがたい。
「さて、これでヨトゥン教徒の掃討は完了だ。あとは、施設を完全に破壊して、連中の研究資料をこの世から消してしまおう。それがあの子のためだ」
「ああ……」
クライドはぽつりと涙を流すと、詠唱を始めた。
「跡形も無く消し飛べ……《ノヴァ・エクスプロージョン》」
悲しげに呟かれた詠唱と共に、クライドの右手から計り知れない魔力が放たれた。
それは父の得意とする《エクスプロージョン》の更に上位の魔法であった。
「まずい!?」
俺は咄嗟にリヴィエラを抱きかかえた。
あの魔法は半径数十メートルを消し飛ばす程の爆発を引き起こす。
魔法というのは、任意の相手を魔法効果の対象外として、味方への誤爆を防ぐことが出来る。
しかし、クライドは俺とリヴィエラがいることを知らない。
つまり、俺は全力であの魔法からリヴィエラを守らなければならないのだ。
「リヴィエラ、絶対に守り抜いてみせるからな……」
直後、太陽を思わせるほどの爆炎が辺りを包み込んだ。
すると、ふとリヴィエラが足を止めた。
「ジーク様、この先から戦いの音が……」
通路の先にあるのは一際大きな扉だ。その向こうから、魔法が放たれる音と悲鳴が聞こえてくる。
この反響具合、どうやらこの先はかなり広い空間のようだ。
俺はリヴィエラの手を引くと、中がこっそりと見通せる位置につき、扉をそっと開いて中の様子を窺う。
「ジーク様、どうしたのですか?」
「出来れば、姿を見られたくないんだ」
もしかしたら、騎士団がヨトゥン教徒と戦っているのかもしれない。中に父がいたら面倒だ。
ひとまず身を隠しながら、中で起こっている戦闘の様子を窺う。
「これは……」
そこで行われていたのは、戦闘などという生易しいものではなかった。
「ひやぁああああああああああああああ!!!!!!! ぎやあああああああああああああああ!!!!!!! 許して、許してぇええええええええええええ!!!!!!!!!!」
生かさず殺さず、丁度いい火加減でヨトゥン教徒が焼かれていた。
一体どれほどそうされていたのか、男は終わらない苦痛に曝されながら絶叫を上げている。
「黙れ。自分たちは散々、人を弄んできたのに、命乞いなどムシが良すぎるんだよ!!」
男の命乞いに苛立ったのか、敵対している少年が教徒の首を掴み上げた。
すると、その身体を包む火が一気に燃え上がり、一瞬でその身が焼失した。
「き、貴様、良くも仲間を!!」
仲間を焼かれたヨトゥン教徒達は、仇を討たんという勢いで、少年に一斉に襲いかかった。
「ゴミが……」
勝敗は一瞬であった。少年は次々に襲いかかる敵を軽くいなすと、感電、凍結、窒息といったあらゆる魔法属性の攻撃によって死に追いやっていく。
しかも、一瞬で片を付けるのではなく、なるべく最大限に苦しませるように、苦痛の多い方法をあえて選択していた。
「嘘……だろ……?」
それまで背を向けていた少年の顔が露わになった。俺はそれを見て驚愕する。
何故なら、その人物こそが、親友でありこの世界の主人公でもあるクライドであったからだ。
「あれが本当にクライドなのか…?」
ゲームにおけるクライドは穏やかで、理想に燃える人物であった。
自身が〝加護なし〟だった経験から、〝加護なし〟や亜人への差別を撤廃しようと苦心し、様々な仲間と信頼関係を結び、この世界を脅かす魔王と魔族の軍勢と戦った。
そんな人物が今は、徹底的に敵を嬲り苦しめる、悪鬼羅刹のような人物となっていた。
全身から禍々しい瘴気が漏れ出て、憎悪に染まり切った少年に、ゲームにおける好青年の面影は欠片もなかった。
「ジーク様、もしかして、あれは……」
流石に血縁だけあって、リヴィエラはその正体にすぐ気付いたようだ。
「いや……クライドはあんな人間じゃないはずだ」
一体、何が起こったんだ。
俺とクライドは幼馴染であった。当然、彼のことはゲーム知識以上によく知っている。
当然、あんな残酷な方法で敵を惨殺するような、苛烈な面は全くなかった。
「フフ……素晴らしいよクライド。君の加護は凄いね。確か、味方の加護と共鳴し、その力を借りるんだっけ? 凄まじい力だね」
クライドが完全に敵を殲滅した頃、手を叩いてその戦果を賞賛しながら、もう一人の少年がやって来た。
「えっ……あ、あの人は……?」
リヴィエラが困惑する様子を見せた。
無理もない。やってきたのは、俺と全く同じ顔をしていたオルトなのだから。
「……複雑な事情があるんだ。あれは俺の弟で、今は彼がジークを名乗っている」
「弟……?」
「混乱するよな。俺だってそうだ。なにせ、クライドがあんな風になってるなんて……」
俺の行動で、クライドの運命が変わってしまったのか……?
そりゃ、ゲームと比べたら多少の変化は起こるだろうが、今のところ俺がしたのは、《魔王の核》の移植を回避したことと、リヴィエラの命を救ったぐらいだ。
少なくともこのわずかな期間に、クライドの性格をここまで一変させるなど考えがたい。
「さて、これでヨトゥン教徒の掃討は完了だ。あとは、施設を完全に破壊して、連中の研究資料をこの世から消してしまおう。それがあの子のためだ」
「ああ……」
クライドはぽつりと涙を流すと、詠唱を始めた。
「跡形も無く消し飛べ……《ノヴァ・エクスプロージョン》」
悲しげに呟かれた詠唱と共に、クライドの右手から計り知れない魔力が放たれた。
それは父の得意とする《エクスプロージョン》の更に上位の魔法であった。
「まずい!?」
俺は咄嗟にリヴィエラを抱きかかえた。
あの魔法は半径数十メートルを消し飛ばす程の爆発を引き起こす。
魔法というのは、任意の相手を魔法効果の対象外として、味方への誤爆を防ぐことが出来る。
しかし、クライドは俺とリヴィエラがいることを知らない。
つまり、俺は全力であの魔法からリヴィエラを守らなければならないのだ。
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直後、太陽を思わせるほどの爆炎が辺りを包み込んだ。
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