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しおりを挟む第一章
エルウィン王国――それは、大陸西部の高地にある王政の国家だ。
国土は小さいながらも豊かな水資源に恵まれており、爽やかな風が吹き抜ける平原では農業と畜産業が盛んである。
また、かつて大陸を圧倒的な武力で支配したという伝説が残る【覇王】と魔族の軍勢に抵抗した、最古の国家の一つだと言われている。荘厳で美しい白亜の王都、ウィンダミアは覇王との決戦の舞台となったが、高くそびえる堅牢な城壁で最後まで民を守り通したという。
千年近い歴史を持つエルウィン王国の王城にて現在、神聖な儀式が行われていた。
「なんだ、その貧相な卵は?」
国王の失望した声と、周囲からの笑い声が謁見の間に響く。
「見たまえ。あれが聖獣の卵らしいぞ」
「ハハッ、目玉焼きにしたら美味しそうではないか」
「下級貴族の息子にお似合いの、実に立派な卵であるなあ」
一体、どうしてこうなったのか。
俺――レヴィン・エクエスも、目の前の光景に落胆していた。
謁見の間に集まった人々の視線は、二つの卵に注がれている。
人の背丈ほどもある黄金の卵と、手のひらに収まるほど小さくて蒼白い卵の二つだ。
俺の前にはその小さい方の卵が置かれている。
これは、《聖獣使い》が女神から授かる聖獣の卵だ。
この世界には、魔獣と呼ばれる【魔力】を持つ獣と心を通わせ、彼らを使役する《魔獣使い》という職業がある。
《聖獣使い》は、それら《魔獣使い》よりもさらに強大な力を持つ【天職】だ。
彼らの一番の仕事は、女神より聖獣を授かることにある。俺たち《聖獣使い》だけが聖獣の卵を召喚し、生涯の相棒として【契約】できるのだ。
十八歳を迎える年の今日、俺はもう一人の《聖獣使い》アーガスと一緒に、その卵を召喚する儀式である【聖獣降臨の儀】に臨んでいた。
ここで立派な聖獣を授かれば、その報酬で貧乏な故郷のみんなの暮らしをよくすることができる。
すでに騎士として活躍している幼馴染の横にも並び立てる……はずだった。
「これが聖獣の卵だと? ……《聖獣使い》の面汚しめ」
隣に立っていたアーガスが、俺の召喚した卵を見て鼻で笑った。
彼の前にある黄金の卵に比べ、俺の卵はみすぼらしい。
「説明したまえ、ギデオン」
苛立ったような口調で、国王は側に控えるおどおどした男を指名した。
この国のテイマーをまとめる男、ギデオンが答える。
「じ、自分もこんな小さな卵は見たことがありませんな。ただ、基本的に聖獣降臨の儀で授かる卵は、大きいほど強い聖獣が誕生すると聞きます」
「そのみすぼらしい卵から生まれるものには期待できぬと?」
「端的に言えばその通りです」
「なんということだ……」
国王がわなわなと肩を震わせながら玉座から立ち上がる。
「これまで貴様を育成するのに、どれほど金を掛けたと思っているんだッ‼」
怒号と共に、彼は手にしていたワイングラスを俺の頭に投げつけた。
「衛兵! 即刻、その目障りな卵を破壊しろ。そして、今すぐ無能な《聖獣使い》もどきをワシの前から遠ざけよ‼」
王の命を受けて、衛兵たちがあっという間に俺を取り囲んだ。
衛兵の一人が、俺の召喚した卵に向かって剣を振り下ろそうとする。
「へ、陛下、それだけはお止めください!」
咄嗟に卵に覆いかぶさると、剣が背中を切り裂いた。
「かはっ……‼」
衛兵の手元が狂ったのか致命傷には至らなかったが、ドクドクと血が流れていくのが分かる。耐え難い痛みのあまり、呻き声が漏れる。
「どけ、無能が!」
「ど、どけま……せん‼」
衛兵が再び剣を振り上げたが、それでも俺は退かなかった。
たとえなんと言われようと、俺の腕の中にあるのは命の宿った卵だ。それが破壊されるのを見過ごすことはできない。
「何もできない無能のクセに、ワシに逆らいおって‼」
俺の行動がいっそう神経を逆撫でしたのだろう。国王は傷口を刺激するように俺の背中を思い切り踏みつけた。
「テイマーの育成は国の要だ。強力な聖獣を手に入れ、他国を圧倒する。そのための最重要国家プロジェクトだ。それなのに……恥を知れ‼」
憤懣やるかたないといった様子で、国王が俺を蹴りつける。
傷口に当たる度に激痛が走った。
しかし、彼の行いを止められる者はこの場にいない。俺はひたすら耐え続けた。
「このクズテイマーが! ゴミしか生み出せないのなら、今すぐに死んでしまえ‼」
ゴミだって?
その言葉に胸の奥から怒りが湧いてきた。
執拗な暴行で口からも血がこぼれるが、そんなことはどうでもいい。
自分への侮辱や暴力は、まだ我慢ができる。
だが、この卵は俺のもとに舞い降りたパートナーとも言うべき存在だ。
その命を国王はゴミ扱いした。それが俺には許せなかった。
どんなに小さくても、俺たちの目の前にあるのは、尊い命だ。それをゴミ呼ばわりなんて、あまりにも酷すぎる。
こんな男に卵を壊させたくない。俺は必死にこの場に留まった。
「クソッ……なぜ、そうまでしてかばう? もういい。それならば、そのみすぼらしい卵と共にこの国から出ていくがよい」
俺が思わず顔を上げると、国王が苦い顔をして続ける。
「当然だろう? 貴様は、我が国に計り知れない損失を与えたのだ。不死鳥を育てていれば、灰から万病に効く薬を作れた。ペガサスを育てていれば、強力な空戦部隊が編制できただろうに……貴様はこんなクズみたいな卵を授かりおって!」
確かに強力な聖獣を授かれば、エルウィン王国は大きく発展するだろう。しかもこれまで、国は《聖獣使い》への投資として、俺や故郷の村を支援してきた。
だがそれは、この卵をクズ呼ばわりしていい理由にはならない。
その時、召喚された二つの卵の殻が割れ、新たな聖獣が誕生した。
「ピュイピュイ……」
「ガァアアアアアアアアアア‼」
アーガスの前には、人の背丈ほどはある屈強な獅子の身体に、雄々しい翼を生やした鷲頭のグリフォンが。俺の下には白いトカゲがいた。
「あ……」
俺は、手のひらに触れる命の輝きに目を奪われた。
生まれたばかりの小さなトカゲは、懸命に力を振り絞って俺にすがりついていたのだ。
「大丈夫。君のことは俺が守る」
この小さな命が弱かろうとなんだろうと、必ず俺が守り通す。俺はいっそう決意を強固にした。
「ブハハハハ! なんと貧相でひ弱な生き物か。これが聖獣だと? ただのトカゲではないか」
俺の手の中にある生き物を見て、周りの者たちが大笑いした。
国王は上機嫌でグリフォンを眺め、感嘆する。
「それに比べて、このグリフォンの雄々しいことよ」
基本的に聖獣は、ある程度肉体が成長した状態で誕生すると言われている。金の卵から生まれたグリフォンも例外ではなかったようだ。
「陛下、これが私の聖獣でございます。屈強な肉体、大きな翼……そして、並みの魔獣では到底及ばない膨大な魔力。彼がいれば、様々な飛行魔獣を支配下に置くことができます。我が国の航空戦力は他国を圧倒するでしょう」
「うむ。よくやった、アーガスよ。そなたはエルウィンの発展に大きく貢献した。必ずや我が国の歴史に名を残すだろう」
先ほどまでの激昂から一転して、国王がアーガスを褒め称える。
「ありがたきお言葉。では、先日の約束については?」
「おう……そうであったな。件の申し出、許可しようではないか」
二人のやり取りに、俺は疑問を抱いた。
先日の約束……アーガスは一体、国王となんの約束をしたんだ?
「フッ……」
アーガスは訝しむ俺をチラリと見て、冷笑した。
謁見の間に集まる人々を見渡し、国王が口を開く。
「ちょうどいい。そこのクズも聞いておれ。このワシ、国王ドルカスの名において、《聖獣使い》アーガス・アレス・アルベリヒと《神聖騎士》アリア・レムスの婚姻を認めよう」
アーガスと、アリアが婚姻?
思ってもみなかった人物の名前が登場して、俺は言葉を失う。
アリア・レムスは俺の幼馴染だ。
幼少期に実の親を亡くした彼女を俺の両親が引き取り、俺たちは家族同然に育った。
俺は怪我の痛みを堪えて立ち上がり、国王に詰め寄る。
「陛下、それはどういうことで――」
「黙っていろ。聖獣を生み出せなかったクズが」
しかし国王は、煩わしいといった様子で俺の問いかけを遮った。聖獣を授かることのできなかった者の言葉など、もはや聞く気はないようだ。
「そんな……」
俺は呆然として立ち尽くす。
幼い頃から一緒に過ごしてきたアリアに、俺は想いを寄せていた。だが彼女は今、アーガスの婚約者となったのだ。
「クク……いいザマだな、レヴィン。所詮、貴様は三流貴族のゴミテイマー。彼女にふさわしいのは僕のような人間だ」
アーガスが勝ち誇った表情を浮かべて言った。
「さっさと失せろ、無能。お前の居場所はこの国にはない」
直後、俺は衛兵によって羽交い締めにされてしまう。
国王が兵士たちに指示を出す。
「そいつはすでに用済みだ。適当な森にでも放り込んで処分しろ」
こうして、俺は全てを失った。
◆ ◆ ◆
聖獣降臨の儀での騒動のあと、俺はエルウィン王国の国境付近にある樹海の奥地に放り出された。
「ピュイピュイ、ピューイ!」
上機嫌で進んでいくトカゲのあとを追って、俺は鬱蒼とした樹海を彷徨う。
《聖獣使い》の役目を果たせなかった罪で、故郷に帰ることも許されず、国を追放されたというわけだ。
樹海に到着するまでの間に、怪我の治療をしてもらえただけマシだろう。
トカゲの後ろをついて歩きながら、もう三日は森の中だ。
「食べられそうな果実は拾えているし、野草の知識もあるから飢えは凌げる。だけど……」
いつまでも樹海にいても仕方ない。とはいえエルウィンには戻れないわけで、これからの身の振り方に悩んでいた。
「一緒に国に仕えて、それから村を栄えさせるのが俺とアリアの夢だったんだけどな」
村にいた頃を思い返す。あの頃は、こんなことになるなんて思いもよらなかった。
俺の生まれたエクエス家は貧乏だった。
エルウィン王国南東にあるルミール村を治める男爵家であるが、領地は痩せた土地ばかり。貴族とは名ばかりの質素な生活を送っていた。
だが、そんな暮らしに不満はなかった。
「ただいま、レヴィン。今日もクタクタだよ~」
父、グレアムが額の汗を拭いながら、我が家へ帰ってきた。
穏やかな人柄の彼は弓術と水属性魔法の達人だが、普段は農民に交じって鍬を振るっていることが多い。
「おかえり、父さん。今日はベルーナ産の果実酒と、ツマミにサラミを用意しておいたよ」
そんな父のために、俺はいつもよりも少しだけ贅沢な食前酒を準備していた。
「か、果実酒? そんな贅沢なものを飲んでいいのか?」
「いつも家と領地のために働いているからね。労いの気持ちを込めたんだ」
「うおおおおおお、レヴィ~ン‼」
父さんがわんわんと大げさなそぶりで泣いてみせる。
いつもこんな調子だが、領民への思いやりは本物だ。みんなの生活を圧迫しないようにギリギリの税率で領地を経営し、その弓の腕で狩りや魔獣討伐を一手に引き受け、水魔法で土地を潤す、それが父の日常だ。
俺が父さんと話し込んでいると、こっそり近づいてきた人影が飛びついてくる。
「あー、やっと内職が終わった! レヴィン、母さんを癒やして~」
「って、いきなり抱きつかないでよ、母さん。まったく、仕方ないな」
母、エリーナは裁縫の名人だ。
節約のために余ったぼろ布や破れた衣服を縫い合わせて、俺たち家族の服を作るのが趣味で、その腕を活かし服作りの内職をしている。子どもたちにべったりで、何かと理由をつけてハグしてきたり、頬にキスをしたがったりするのが玉に瑕だが、子ども思いの母さんだ。
「レヴィン、私の頭も撫でて癒やしてください。知恵熱? でどうにかなってしまいそうです~」
「はいはい。姉さんもよく頑張ったね」
そうこうしているうちに、姉さんもやってきた。
姉のフィオナは金勘定と節約術に長けている。
ルミール村の財政が破綻せず、低税率でやっていけるのは彼女の手腕によるものだ。器量がよく、領民からも敬愛されている姉さんだが、日々の疲れがあるのかよく俺に甘えてくる。それが少し、気恥ずかしい。
「それじゃ、もうすぐ夕飯ができるから、みんなは居間で待っていて」
俺の役割は、そんな貧乏一家の家事全般。苦労して働く家族のみんなを支えることだ。
もともと家事は母さんが担当していたが、彼女が内職を始めてからは、俺が引き受けるようになった。なかなかハードなものの、これも家と領地のためだと思えばまったく苦にならない。
おかげで、特に料理の腕前はそれなりのものになったと思っている。
「さて、ラグリア産のチキンか。こんなに上等な肉をもらうなんて、あとでゴードンさんにお礼を言わないと」
キッチンに立った俺は、村民が届けてくれた鶏肉を前に唸った。
「レヴィン。サラダ用のレタス、切り終えたよ」
柔和な笑みを浮かべて、アリアがボウルを差し出してきた。
「ありがとうな、アリア」
「領主様たちにはいつもお世話になってるから……これぐらい当然だよ」
俺はボウルを受け取り、調理を進めていく。
隣で俺の作業を手伝ってくれるのは、控えめな性格をした蒼い髪の少女――アリア・レムスだ。俺の幼馴染で、家族の一員でもある。早くに両親を亡くしたところを父さんが引き取り、共に暮らしている。
アリアの我が家における役割は、家事担当の俺のサポートだ。といっても、俺たち二人で家事を分担しているというのが正確だろう。
「よし、レモンクリームのチキンソテーの完成だ。早速、持っていこう」
チキンやレタス、ミルク、バターは領民からのいただき物で、調味料は行商人から値切りに値切って確保した物だ。食器に至っては、ひびが入った皿を補修して使っている。
我が家の料理は節約の限りを尽くしたものだが、味には自信がある。
――極限まで安い食材でも、最高の料理を。
それが俺のモットーだ。
料理の腕を磨き、レシピを研究し、領地経営に勤しむ家族を労る。そうしてみんなを陰で支え続けてきたのだ。
「みんな、夕飯ができたよ」
家族五人で過ごすには少し狭い部屋で、小さなテーブルを囲む。
目の前にはボロボロの皿に盛り付けられた料理が数品。これが貴族の暮らしかと問われたら何も言い返せないが、少なくとも俺はこの日々に幸せを感じていた。
「おお、レヴィンよ。今夜はチキンを二切れも食べていいのか?」
いつになく豪華な食事に、父さんが歓喜の声を上げた。
「ああ。ゴードンさんがいっぱい分けてくれたんだ。一日二切れ食べるぐらいなんてことないさ」
俺の答えに、母さんと姉さんが夢中でチキンを頬張る。
「お肉なんて何週間ぶりかしら。とても美味しいわ。ね、フィオナ?」
「そうですね、お母様。最近はジャガイモのスープばっかりでしたから、こんなに美味しい料理をいただけるなんて……うぅ……」
エクエス家にとって久々の贅沢な食事に、みんな満足しているようだ。
「姉さん、ソースが口の端に付いてるよ」
「レヴィンが拭いてくださ~い」
「仕方ないな……」
家族は全員働き者だが、団らんの時間ではだらしない姿を見せる。
みんな普段は気を張っているからな。こうして家族の前で気を抜くのはいいことだと思う。
「それで、こっちのサラダはアリアが用意してくれたのだな」
「はい、グレアム様。お味はいかがでしょうか?」
「とても美味しいよ。ビネガーとオリーブの風味がよく出ている。こんな料理好きの息子と娘を持って私は幸せ者だ……」
父さんは目尻に涙を浮かべた。俺たちの成長に感激しているらしい。
アリアは平民の出だったが、父さんにとっては彼女も立派な娘の一人なのである。
「お父様の言う通りね。このままアリアがレヴィンに嫁いで、本当の家族になってくれたら嬉しいのですけれど」
「あら、フィオナったら」
姉さんの言葉を聞き、母さんが食事の手を止めた。
アリアが慌てて声を上げる。
「そ、そうです! 私のような平民が嫁ぐなんて、とんでもございま――」
「とても素敵な提案じゃない!」
「え……?」
嬉しそうに賛同する母さんの様子に、アリアは目を白黒させた。
母さんが反対するとでも思ったのかもしれない。
「うむ。アリアは気立てがいいし、家事も上手だからな。それに、我が家だって数代前までは平民だったんだ。身分の違いを気にする必要はないさ」
そう言って父さんが笑った。
アリアの身分を気にする人間は、この家には彼女本人しかいないのだ。
盛り上がるみんなを眺め、俺は苦笑する。
「気が早いというか、能天気というか……」
とんでもないことを言い出す家族だ。とはいえ、俺もそういう想像をしないわけではない。
アリアが平民だって関係ない。俺は幼い頃から共に育った彼女を好ましく想っている。
アリアさえよければ……なんてことを考える時もあるのだ。
「そういえば、もうすぐ【神授の儀】じゃないか?」
父さんが真剣な表情で話題を変えた。
「ああ……そうだね。俺とアリアもそろそろ王都入りしないと」
俺たちにとっても大事な話に、姿勢を正す。
十六歳を迎えた子どもは、女神より天職と呼ばれる職業の適性が告げられる。
それこそが神授の儀と呼ばれる儀式だ。
神授の儀で判明する天職は、人生を左右するものだ。これから俺たちがどう生きるにせよ、まずはこの儀式を通らなくてはいけない。
「どんな天職を授かるかは分からないが、あまり気負いすぎないことだ」
「分かってるよ、父さん。ただ、姉さんみたいに家や村の役に立つ天職だといいな」
俺が答えると、隣でアリアも頷いた。
ちなみに、姉さんは《商人》という天職を授かっている。
おかげでルミール村の交易は発展し、先代の時よりは暮らしぶりはマシになっている。もし姉さんが家を出て、王都で商人となっていたなら、彼女自身は今より豊かな生活を送れただろうと誰もが思っているぐらいだ。
「フィオナに続いてレヴィンたちまでそう言ってくれるのか……私たちは本当にいい子に恵まれたなぁ」
父さんがまたまた感涙にむせんでいた。
俺とアリアは神授の儀に密かに期待を寄せていた。
姉さんが《商人》の天職でルミール村を支えているように、俺たちもいい天職を得て、エクエス家と村をいっそう発展させたい。
そんなささやかな願いを俺たちは共有していたのだ。
それからしばらく経ち、王都の大聖堂にて神授の儀が執り行われた。
「レヴィン・エクエス。汝が授かる天職は……おお、《聖獣使い》だ」
「アリア・レムスの天職は……なんと《神聖騎士》とな!? よもや、立て続けに【S級天職】を授かるとは」
巨大な天球儀が置かれた聖堂の儀式場に、おおっという歓声が響いた。
「レ、レヴィンとアリアがS級天職を授かったぞ、母さん!」
「夢みたい……! これで我が家も安泰ね、あなた」
俺たちの天職を聞いて、父さんたちは抱き合いながら喜んでいた。
その姿を見て俺は笑みをこぼす。
《聖獣使い》と《神聖騎士》はそれぞれ、《魔獣使い》と《騎士》の上位職である。
女神が遣わす聖獣すらもテイムできるという《聖獣使い》。
兵を惹きつけるカリスマ性に加え、その能力を底上げすることができる《神聖騎士》。
望めば国の要職にすら就けるだろう。そうすれば村の発展も思うがままだ。
「レヴィンは凄いね……ううん。むしろ当然、かな? 私は、レヴィンならきっと凄い天職を授かるって信じてた」
「アリアだって凄いよ。村のためにもお互い頑張ろうな」
「うん。二人で一緒にね」
S級天職を授かった俺たちには、輝かしい未来が待っている。
希望を胸に、俺とアリアは宮仕えの道へ踏み出した。
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