断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第6話

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「次は、“聖女さま”の話をしようか」

処刑台の上で、私は両手を軽く広げた。鎖が鳴る。

首輪の術式はまだ薄く光ってる。

でも、コメントといいねが流れるたび、刃みたいな光が鈍っていくのがわかる。

——つまり私は、いまだけは死なない。

「リリアを陥れた、ですって? 王都のみなさん、その“聖女”は一人だけでしたっけ」

水晶モニターに、文字が雪崩れた。

『また始まった』『往生際が悪い』『聖女はリリア様だけだろ』

私は笑わない。笑ったら“悪役”に見える。

代わりに、静かに息を吸う。

「もう一人の聖女。エレーナ」

その名前を出した瞬間、空気が変わった。

群衆のざわめきが、全国から重なって押し寄せる。

『エレーナ?』『聞いたことない』『誰』

「王家は隠してた。都合が悪いから。だって——」

私は視線だけでカイル王子を見る。

王子は、完璧な微笑みのまま。私を哀れむ顔。

“慈悲深い王太子”の仮面。

その裏で、私を黙って死なせる計算をしている目。

「——聖女って、民の“信仰”で成立する職でしょう?」

私は精霊石を指で弾く。光が揺れた。

「信仰が燃料なら、演出は命。今日は、その演出の裏側を見せる」

カイルが一歩、踏み出した。

「スカーレット。これ以上、王家の放送網を汚すな。民を混乱させるだけだ」

優しい声。正しいことを言う声。

だからこそ、腹が立つ。

「混乱させたのは、どっち?」

私は首輪に触れるふりをして、精霊石に意識を流す。

全域リンク。

“王命放送”の枠を、もう一段だけ深く噛む。

受信しかできないはずの水晶灯に、私の“次の素材”を投げ込む。

「映像、出します」

一拍。

全国の水晶モニターが、ぱっと暗転した。

次に映ったのは、白い回廊。王城の内側。

しかも、画角が低い。隠し撮りだ。

『え?』『これどこ』『城?』

画面の端に、金色の髪が揺れた。

聖女エレーナ。

白い手袋の手で、使用人の少女の顎を持ち上げている。

口元は微笑んでるのに、目が笑ってない。

「あなた、手が震えてるわ」

エレーナの声は、甘い。

慈悲深い聖女の声。

でも次の瞬間、その甘さが刃に変わる。

「聖女の衣に、皺を作ったの?」

少女が首を振る。涙が落ちる。

「ち、違います……っ。申し訳……」

エレーナは軽く指を鳴らした。

ぱちん、という音。

少女の腕に、赤い紋が浮かぶ。

熱い鉄で押されたみたいに、皮膚が盛り上がった。

少女が悲鳴を噛み殺して、床に崩れる。

エレーナは、変わらず微笑む。

「声を出したら、もっと痛くなるわよ」

画面が揺れる。撮っている誰かの息が荒い。

少女は歯を食いしばって、涙を流しながら頭を下げ続けた。

エレーナはその頭に手を置いて、祈るみたいに囁く。

「痛みは浄化。あなたのため。感謝して」

——そこで映像は止まった。

私は処刑台の上で、何も言わずに数秒だけ黙る。

沈黙は、最強のテロップ。

コメントが、遅れて爆発した。

『え……?』『今の誰』『聖女?』『嘘だろ』

『使用人に何した』『あれ拷問じゃん』

『慈悲って何』『浄化って言えば何してもいいの?』

群衆の中から、誰かが呻いた。

「そんな……エレーナ様が……」

別の誰かが叫ぶ。

「偽物だ! 合成だ!」

カイル王子の顔色が、ほんの少しだけ落ちた。

ほんの少し。

でも全国が見てる。私は見逃さない。

「合成?」

私は首を傾げる。あくまで“疑問”の顔。

「じゃあ、これも合成かな」

もう一つ、短い映像を重ねる。

同じ回廊。

今度は、床に跪く別の使用人。男だ。

エレーナが、彼の背中に足先を乗せて、体重をかける。

「あなた、私の祈りの時間を邪魔したわ」

男が喘ぐ。

「ゆ、許しを……」

「許すわ」

エレーナは優しく言って、次の瞬間、冷たく告げた。

「——ただし、骨は折る」

ぱき、と嫌な音。

画面がぶれる。

男の声が途切れて、喉の奥で潰れる。

エレーナは、祈るように両手を組んだ。

「神よ。弱き者を導きたまえ」

そこで映像は終わる。

私はようやく口を開く。

「ねえ、みんな」

“みんな”って言う。国民を一人ずつ掴む言葉。

「これが、慈悲?」

水晶モニターの文字が、黒く荒れていく。

『聖女最低』『吐き気』『リリア様もこうなの?』

『隠してた王家も同罪だろ』

そして、いいねの光が——私の背中に雪崩れ込んできた。

首輪の術式が、火花を散らして一段と弱まる。

私の喉が、やっと息を通せる。

カイルが低い声で言った。

「スカーレット……その映像、どこで手に入れた」

“焦り”が混ざった。

ああ、いい顔。

私は笑わない。代わりに、真面目に言う。

「真実はね、誰かの机の引き出しじゃなくて」

私はモニターを指さす。流れ続けるコメント。

「多数派が作るの」

カイルの口元が引きつった。

エレーナの名が、全国で燃えはじめている。

そして私は、次の地獄を用意する。

「——カイル王子。あなたが“聖女を隠した理由”、今から話してもらうね」

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