断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

文字の大きさ
20 / 100

第20話

しおりを挟む

白い礼装が、私の身体に“定着”したまま、風に揺れている。

囚人服のはずだった布はもうない。

代わりに、精霊文字みたいな刺繍が、勝手に私を「聖女っぽく」見せてくる。

最悪。

でも――最高。

だって、この世界は“見え方”で票が動く。

真実より、映える方が勝つ。

空の巨大モニターに、支持率【40%】が点滅していた。

コメントが雨みたいに降ってくる。

【白い……】

【処刑台でそれは反則】

【え、聖女どっち!?】

私は喉の首輪をそっと指で触れないようにして、禁忌の精霊石に合図する。

声は出ない。

だから、枠のテロップで殴る。

《ティータイム、始めます》

ざわっ、と広場が揺れた。

カイル王子が、目を見開く。

「……ふざけるな、スカーレット!」

彼は“いい人の顔”を作ろうとした。

眉を寄せ、民を守る王太子の悲しみを演出する。

でも、もう遅い。

光の檻が、彼の背後でぎし、と音を立てて狭まった。

多数派が「逃がさない」を選んだ結果だ。

彼の優しさは、檻の中じゃただの泣き言になる。

私は処刑台の上に、何もない空間から白い卓を引きずり出す。

正確には、“引きずり出したように見せた”。

精霊力は、感情に反応する。

「そう見たい」と思われたら、現実は寄ってくる。

次に、ティーカップが二つ。

ソーサーが二枚。

茶葉の香りまで、ちゃんとある。

――誰かが、私に飲ませたい毒を用意していたときのために。

前世の私は、ライブで何度も学んだ。

「安心」を演出すると、人は油断する。

カイルが唇を噛む。

「そんな小細工で民衆を――」

私はテロップを重ねる。

《王太子殿下。座って》

命令じゃない。

“投票のお願い”だ。

空に選択肢が出る。

【A:王子は立ったまま】

【B:王子は座る】

【C:王子は地面に這いつくばる】

一瞬、間が空いた。

次の瞬間、コメントが爆発した。

【C】

【Cでしょ】

【這え】

【まず土下座から】

支持率が、ぐっと上がる。

精霊力が濃くなる。

光の檻が“多数派の空気”を読み取って、形を変えた。

カイルの膝が、がくんと落ちた。

「っ……!?」

彼は抵抗しようとした。

でも、抵抗の形が滑稽だった。

檻は暴力じゃない。

“民意”だ。

彼の手が石畳につく。

次に、額。

最後に、腹ばい。

王太子が、地面に這いつくばっている。

全国中継で。

私はカップに紅茶を注ぐ。

カイルの方には注がない。

二つあるのに、あえて一つだけ。

それだけで伝わる。

あなたは同席者じゃない。

見世物だ。

カイルの声が震える。

「……やめろ。王家への侮辱だ」

国王の方を見る。

助けを求めるように。

でも国王は動けない。

右腕の刻印が、ぴくぴくと脈打っているのが見える。

――ああ。

“見られたくない”って、そういうこと。

私は一口、紅茶を飲む。

喉の首輪が、ちり、と鳴った。

心拍に合わせて術式が喉を測る。

「ここで興奮したら死ぬよ」と言っている。

だから私は、逆に落ち着く。

落ち着いた女は強い。

処刑台の上でティータイムをする女は、もっと強い。

《ここまでのまとめ》

テロップが空に浮かぶ。

《罪状①王太子を誑かした→誑かされてたのは私》

《罪状②聖女リリアを陥れた→聖女は一人じゃない》

《罪状③王国を混乱に→混乱を作ったのは“隠蔽”》

コメントが止まらない。

【もう王子無理】

【国王の腕のやつ何】

【弟くん助けて】

弟。

リオン。

地下の旧拘禁区画。

今日中に処理。

最悪のカードが、まだ喉元に刺さったままだ。

私はここで勝ち切れない。

勝ち切った瞬間に、弟が消される。

だから私は“予告”にする。

今夜、燃やすのはここじゃない。

ここは、第一章の締め。

私はカイルのすぐ前まで歩く。

走れない。

叫べない。

でも、歩ける。

彼は地面に張り付いたまま、私を睨んだ。

その目だけは、まだ王太子のつもりだ。

私は微笑む。

前世の私が、炎上案件の相手に向けてきた、いちばん冷たい笑顔。

《次の暴露は――“王家の宝物庫”です》

カイルの瞳孔が縮む。

一瞬で理解した顔。

宝物庫。

禁忌の精霊石が「本来あるはずの場所」。

そして、彼が私に贈った“宝石”。

私を破滅させるための罠。

私はカップを置き、テロップを最後に叩きつける。

《カイル殿下。あなたが私に贈った宝石、誰の“契約”の印でした?》

首輪が、ちり、と鳴った。

心拍が跳ねる。

死の引き金が、喉元で笑う。

それでも私は、逃げない。

空のモニターに、新しい投票枠が自動生成される。

【次回、宝物庫を開ける:YES/NO】

コメントが一斉に叫んだ。

【YES】

【開けろ】

【見せろ】

光の檻が、きゅ、と音を立てて締まる。

カイルが、初めて本気で怯えた。

そして私は、紅茶の香りの中で確信する。

真実は、いつも多数派が作る。

なら――私が、多数派を作る。

次の十分で。

王家の“中身”ごと。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。 かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。 ついでに魔法を極めて自立しちゃいます! 師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。 痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。 波乱万丈な転生ライフです。 エブリスタにも掲載しています。

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

「魔法を使わない魔術師を切り捨てた国は、取り返しのつかない後悔をする

藤原遊
ファンタジー
魔法を使わない魔術師は、役に立たない。 そう判断した王国は、彼女を「不要」と切り捨てた。 派手な魔法も、奇跡も起こさない。 彼女がしていたのは、魔力の流れを整え、結界を維持し、 魔法事故が起きないよう“何も起こらない状態”を保つことだけだった。 代わりはいくらでもいる。 そう思われていた仕事は、彼女がいなくなった途端に破綻する。 魔法は暴走し、結界は歪み、 国は自分たちが何に守られていたのかを知る。 これは、 魔法を使わなかった魔術師が、 最後まで何もせずに証明した話。 ※主人公は一切振り返りません。

獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。

藤 ゆみ子
ファンタジー
光属性の魔力を持つフィーナは聖女の一人として王宮に就職するが、一向に治癒魔法を使うことができなかった。聖女として働けないと解雇されるが、帰る家なんてない。  そんな時、日々の癒しのためにこっそり行っていた獣舎の魔獣たちが騎士団長グランディに頼み、獣舎の掃除婦として働くことに。  実はフィーナの持つ魔力は人ではなく、魔獣や魔物に使えるものだった。  無自覚に使い魔たちを癒していたフィーナだったが、グランディに気に入られていることに不満を持つ王女に解雇されてしまう。  フィーナは王女の命令なら仕方ないと王宮を出る。  今だ見たこともない魔獣と出会うため、かつての親友だった魔獣のキュウと再会するために旅に出ることにするが、思わぬ事件や問題に巻き込まれていく。  一方でグランディや魔獣たちはフィーナを取り戻すため奮闘する。

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

処理中です...