断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第24話

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王妃が一歩進むたび、広場の膝が落ちる。

誰も「自分の意思」で跪いていないのに、石畳に額が近づいていく。

私も同じだ。

喉の首輪が、ちり、と鳴る。心拍の波を測って、笑いも怒りも許さない。

だから私は、息だけで配信を回す。

禁忌の精霊石が、私の意図を拾って空にテロップを落とした。

【王妃さま、民意を“跪かせる”のは得意でも、“証拠”は消せません】

空の巨大モニターに、多言語のコメントが雪崩れる。

翻訳字幕が勝手に整列し、国境の向こうの罵倒まで、こちらの空気を重くした。

王妃の口元が、微かに歪む。

「……スカーレット。あなたは、民を扇動しているのよ」

扇動。便利な言葉だ。

真実を言う者を黙らせるための、王家の万能札。

私は頷きかけて、やめた。頷くと心拍が跳ねる。

代わりに、テロップをもう一枚。

【扇動ではありません。視聴者が“見た”だけです】

王妃の視線が、私の喉元に吸い寄せられた。

首輪の術式が、気配に反応して薄く光る。まるで「今すぐ裂け」と囁く刃。

その刃を、王妃は愛でるように見て。

次に、カイル王子へと視線を投げた。

「カイル。あなたが締めなさい。民は、正しい結末を求めているわ」

民、ね。

さっきまで“跪かせて”おいて、よく言う。

光の檻の中で、カイルがぎしりと肩を震わせた。

多数派が「逃がさない」を選んだ檻。彼は立てない。なのに、怒りだけが立ち上がる。

「……母上」

カイルの声は、最初は綺麗だった。いつも通り、優しい王子の声。

だが次の瞬間、何かがぷつんと切れた。

彼の目が、民衆ではなく“数字”を見る目に変わる。支持率、コメント量、炎上の波形。

「うるさいんだよ」

広場が凍る。

水晶モニターが、その一言を逃さない。字幕が自動で整列し、各国語に翻訳されて空に貼り付く。

カイルは笑った。いや、笑い“かけた”。

笑ったら死ぬのは私だけじゃない。王子の“王子像”も、ここで死ぬ。

「お前ら、何様だ?」

「パンと酒を投げてやれば、ありがたがって拍手するだけのくせに」

ざわめきが、怒りに変わる前に。

王妃が咳払いをした。空気の圧が一段強くなる。

いつもなら、そこで終わる。王家の圧で、民は黙る。

でも今日は違う。

コメントが、精霊力の粒になって降っている。怒りの粒が、王妃の圧を押し返している。

カイルは止まらない。

止められない。止めようとする母を、彼は“邪魔な演出担当”みたいに見た。

「母上も、何を焦ってるんだよ」

「民意? 笑わせるな。民意なんて、作るものだろ」

その瞬間、王妃の指がぴくりと動いた。

サクラの腕章の男たちが、合図を待つ犬みたいに身構える。

でも、もう遅い。

カイルは自分で言ってしまった。

「こいつらはゴミだ」

「票になるときだけ拾えばいい。拾って、使って、捨てる」

言葉が落ちた。

石畳にじゃない。全国の水晶灯に落ちた。帝都の広場にも、隣国の酒場にも。

“完璧な字幕”を伴って。

私の喉の首輪が、ちり、と鳴る。

笑いそうになる。最悪だ。ここで笑ったら私が死ぬ。

笑えない代わりに、私は息で煽る。

テロップを、たった一行だけ落とした。

【今の発言、切り抜き禁止です。全編保存で。】

コメント欄が爆発した。

怒りが精霊力になって、空気が重力を持つ。王妃の圧と拮抗して、広場がぎりぎりと軋む。

カイルは、その反応を見て。

初めて、自分が“見られている”ことを理解した顔をした。

「……違う、これは……」

言い訳を探す唇が動く。だが次に出たのは、さらに最悪の本音だった。

「お前らが、俺を王にしろって言ったんだろ!」

「だったら黙って従え! 従えよ!」

光の檻が、きゅっと狭まる。

多数派が、同じ瞬間に選んだ。

【選択肢:王太子の発言を“撤回させる”】【“続けさせる”】【“謝罪させる”】【“裁く”】【】

そして票が伸びる。

「裁く」が、伸びる。伸び続ける。

カイルの顔が、真っ赤に歪んだ。

王子の仮面が、配信の前で音を立てて剥がれ落ちる。

「やめろ……やめろやめろやめろ!」

叫んだ瞬間、彼の徽章が赤黒く粘ついた光を吐いた。国王の刻印と同じ色。

王妃が、初めて本気で怯えた目をした。

そして私は、その恐怖の理由を理解する。

カイルは発狂しているんじゃない。

“契約”が、表に漏れている。

空のモニターに、次のテロップを落とす。息だけで。

【王太子殿下。今の光、誰と契約した色ですか?】

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