断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第23話

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王妃が歩くたび、広場の空気が「跪け」と言ってくる。

膝が落ちそうになるのを、私は息で止めた。吸って、吐く。首輪が、ちり……と喉を測る。

空の水晶モニターには、私の枠がまだ残っている。

コメントは多言語で降って、翻訳字幕が勝手に整列していく。

帝国語の罵声も、隣国の野次も、同じ白い文字になってしまうのが皮肉だ。

王妃は微笑んだ。

「民の声は尊いものです。だが、騒がしい声は……時に毒」

その視線が、空のコメント欄へ向く。

次の瞬間。

コメントの流れが、急に“同じ匂い”になった。

【処刑しろ】

【魔女は嘘をつく】

【弟も共犯だ】

【国家のためだ】

短い。乱暴。論拠がない。

そして妙に、投稿の間隔が揃っている。

私は喉の奥で笑いそうになって、すぐ息を落とした。笑ったら死ぬ。

サクラ。

王家に雇われたアンチ部隊だ。前世で何度も見た。炎上を作る「手」。

広場の端で、同じ腕章の男たちが叫んでいるのが見えた。

声は実物で、コメントは量産。二段構え。

王妃は「民意」を装って、私の防壁を薄くしたい。

支持率の表示が、わずかに揺れた。

結界の手触りも、ほんの少しだけざらつく。

やるじゃない。多数派の空気を“偽物で増やす”つもりか。

でも。

多数派が現実を動かすなら、逆も同じ。

「多数派の作り方」を、私は知っている。

私は精霊石に指先で合図する。

声の代わりに、テロップを落とす。

【質問:いまのコメント、同じ文面が多すぎません?】

【追加:投稿間隔が一定。言い回しが同一。】

【提案:投票。『同一文面の連投は表示を薄くする』に賛成?】

空が一瞬、止まった。

王妃の眉が、ほんの僅かに動く。

コメント欄がざわめく。

【確かに同じ】

【これ、雇いアンチだろ】

【王命放送って投稿者識別できないの?】

私は息を整えながら、次の一行を落とす。

ここからは感情じゃない。論理で刺す。

【王命放送には“筆跡照合”がある】

【なら、投稿にも“指紋”みたいな癖が残るはず】

【王家の放送網さん、ログの偏り、出して?】

“さん”付けしたのは、煽りじゃない。逃げ道を塞ぐ敬語だ。

断るなら「できない」か「やりたくない」になる。どっちも不利。

水晶モニターの端に、王家の制御表示が勝手に浮いた。

公開裁判の圧。多数の視線。

起動するしかない。

【投稿群A:文体一致 96.1%】

【投稿群A:発信経路一致 92.4%】

【投稿群A:王城内中継所を経由】

広場が、ひゅっと冷える。

王妃の気配が、人の膝を折らせる前に。

“数字”が、王妃の足元を折った。

【王城内!?】

【サクラ確定】

【王妃の仕業だろ】

【処刑より先に説明しろ】

サクラたちが、今度は必死に叫び始める。

「違う! 俺たちは民だ!」

「王城の中継所なんて知らねえ!」

私はテロップを、ゆっくり一つずつ落とす。

急ぐと心拍が上がる。だから、淡々と。

【反論:民なら“王城内”を経由しない】

【反論:知らないなら、なぜ同じ文面を配る】

【反論:国家のためと言うなら、まず“嘘”をやめて】

最後の一行は、刃の代わり。

真実と嘘の境界線を、みんなの目の前に引く。

サクラのコメントが、急に途切れた。

薄くなり、消えた。

投票の結果が反映され、同一文面の連投は“影”になる。

残ったのは、生身の疑問だけ。

【じゃあ本当は何が起きてる】

【弟はどこだ】

【聖女は二人って】

王妃は笑みを保ったまま、私を見た。

「……よくも、王家の放送を玩具に」

その声は優しい。優しいほど、怖い。

私は息を吸って、吐く。

首輪が、ちり……と鳴る。

そして、テロップを落とした。

【玩具にしたのは王家】

【私は“ログ”を見せただけ】

【次は質問:王妃様。王城内中継所の鍵、誰が持ってる?】

王妃の瞳が、初めて揺れた。

空のコメント欄が、待っている。

“答えない”という嘘を、許さない多数派が。

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