断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第42話

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「投票、止めないで」

私は声が出ないから、空に落とすテロップは短くする。

【投票は残り2:13】

残り時間の数字が、弟の命の砂時計みたいに見えた。

Aなら、私が勝つ。真実が勝つ。

でも投票が確定した瞬間、地下の扉が開いて、リオンが“処理”される。

勝ったら弟が消える。負けたら私が有罪で処刑され、弟も消える。

逃げ道がない。

だから私は、勝ち方を変える。

「……見せる」

息だけで言うと、首輪が「ちり…」と喉を測った。

笑うな。怒るな。泣くな。

心拍を上げたら、私が裂ける。

私は、壇上の空に資料を出した。

【特別枠:領地経営改善案/提出者:スカーレット・ルージュ】

観客がざわめく。王家側の役人が顔色を変える。

だってこれは、本来“私が死んだ後”に焼かれるはずの紙束だ。

国王の心音字幕が、勝手に走った。

【(本心)そんな余計なものを映すな。枠を切れ。地下を閉じろ】

コメントが降る。

【切れないだろ、今“多数派”が見てる】

【枠切ったら証拠隠滅って自白してる】

私は、頷かない。頷いたら心拍が跳ねる。

ただ、次の画面へ送る。

【結論:私の領地が豊かな理由は「優しさ」じゃない。「仕組み」です】

まず地図。

王国全土の収穫量の分布が映る。

そして、ひとつだけ色が違う。

私の領地だけ、異様に濃い。

【王国農政統計:領地別収穫指数/ルージュ領:1.84(全国1位)】

【飢饉年でも0.92(全国平均0.51)】

「魔女が呪いで豊かにした」

そう言いたい人は、ここで言えばいい。

私は先に潰す。

【魔術は使っていません。使ったら帳簿に残ります。残っていません】

帳簿のページがめくられていく。

税務印章。王太子承認印。

これが“正規の流れ”だと、全国がもう知っている。

だから私は、その正規の流れを、豊かさに変えた手順を見せる。

【1:徴税を「現金」から「現物+労働」へ分散】

【現物:麦・豆・塩/労働:街道補修・灌漑清掃】

金だけ集めると、盗まれる。

途中で掠め取られる。

現物と労働は、掠め取りにくい。

さらに、次。

【2:倉庫を「王都集約」から「村ごとの小分け」へ】

【貯蔵は三層:村倉→郡倉→領倉】

飢饉の年に死ぬのは、食料が無いからじゃない。

運べないからだ。

街道が崩れ、馬が倒れ、途中で奪われる。

だから私は、運ばなくていい形にした。

コメントが増える。

【当たり前なのに誰もやらないやつ】

【王都が握るから腐るんだよ】

国王の心音字幕。

【(本心)そんな情報、民に与えるな。王都の権限が削れる】

私はその字幕を、見ていないふりをして続ける。

【3:種の管理を「貴族の私物」から「共有台帳」へ】

【種子貸与:返却は収穫の1.2倍】

借りたら返す。返したら次の年も借りられる。

たったそれだけで、農民は種を食い潰さずに済む。

飢饉が来ても、翌年に再起できる。

【4:水利を「領主の見栄」から「村の当番制」へ】

【灌漑:月1清掃/不参加は罰金ではなく“次回の水番を減らす”】【】

罰金は、払えない人を潰す。

当番制は、払えない人を残す。

残すことが、次の年の収穫になる。

私は息を整えた。

首輪が「ちり…」と鳴る。

数字が上がる気配。心拍がほんの少し跳ねる。

危ない。

私は、感情を切り捨てる。

ここからが本題だ。

【5:商人ギルドとの契約を「献金」ではなく「輸送保障」にした】

【契約条項:街道維持に協力→通行税を3年据え置き】

商人は金を払っても守ってくれない。

守るのは、得があるときだけ。

だから私は、得を用意した。

そして最後。

【6:領内の“余剰”を王都へ送らない。先に「孤児院・診療所」へ回す】

画面に、あの名前が出る。

【王都第七区 孤児保護院/運営会計】

広場が、息を呑んだ。

王家は“存在しない”ことにしていた場所。

でも、私の領地では存在させた。

存在させないと、労働力が次の年に消えるから。

人は、麦じゃない。

すり潰したら、来年は生えない。

コメントが爆発する。

【これ、国の運営じゃん】

【王子、何してたの?】

カイルの心音字幕が、遅れて走る。

【(本心)こいつのせいで、民が“考え始める”】【】

【(本心)投票を早く確定させろ。地下を開け。証拠ごと消せ】

私は、その字幕の上に、たった一行を重ねた。

【王国全土に適用するなら、今すぐできる改善案があります】

画面が分割される。

王領地、各地の状況/ライブ。

飢えた村。壊れた橋。空の倉。

そして、次の分割。

王城地下――旧拘禁区画。

まだ映像は暗い。

でも私は知ってる。

投票が確定した瞬間、あの扉が開く。

開いた瞬間、弟が消される。

だから私は、投票の前に“選択肢”を増やす。

【提案:投票Aの条件を追加してください】

【「関与者の名前」+「リオンの身柄の即時公開」】

広場が凍った。

王家が放送を切れば隠滅が始まる。

でも切れない。多数派が見ている。

投票が確定すれば地下が開く。

なら、地下が開く“前提”を、民意で書き換える。

国王の心音字幕が、悲鳴みたいに走った。

【(本心)やめろ。多数派に“条件”を覚えさせるな】

空の投票欄が、一瞬、ちらついた。

まるで世界が、今から仕様変更を受け付けるみたいに。

【投票A:自白(関与者の名前必須)】

その下に、新しい空白行が生まれる。

【追加条件:――】

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