断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ

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第41話

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国王が「放送を終了する」と言った瞬間、広場の空気が一段冷えた。

右腕の刻印が、赤黒く、焦げた光で脈打つ。

あの光は、見せてはいけないものを隠すときの“合図”だ。私は息をひとつ整える。笑ったら死ぬ。怒っても死ぬ。だから、淡々と。

空の巨大モニターには、まだ投票が残っている。

【A:自白(関与者の名前必須)/B:沈黙(有罪確定)】

そして、その下に薄く走る警告。

【投票確定→地下扉開放→対象:リオン 処理】

……詰んでる。

私が正しく勝てば、弟が消える。

私が黙れば、私が有罪で確定し、王家は正義の顔を取り戻す。

どっちに転んでも、王家の“物語”が完成するように作られている。

そのとき、頭の奥で、別の世界のノイズが弾けた。

前世。炎上。数字。コメント。切り抜き。

私は処刑台の上で、いちばん嫌な記憶を引きずり出す。

――炎上対策。

トップインフルエンサーだった頃、私は一度だけ、完全に“終わり”かけた。

スポンサーは離れ、切り抜きが拡散し、私の言葉は全部「悪意ある字幕」にされて流れた。

何を言っても燃える。沈黙しても「逃げた」と燃える。謝っても「嘘泣き」と燃える。

そのとき私を救ったのは、弁明じゃない。

“場のルールを変える”ことだった。

炎上は、内容で止まらない。

炎上は、視聴者が「気持ちよく叩ける構造」を与えられてる限り、止まらない。

だから私は、やった。

叩くための材料を、叩けない形に変えた。

短い切り抜きが成立しない“長尺の証拠”を出し、文脈を奪い返し、さらに――

「一緒に確認しよう」と、視聴者を“共犯”にした。

人は、他人を裁くのは好きだ。

でも、自分が裁きに参加した瞬間、その結論に責任を持ちたくなる。

責任を持つと、雑なプロパガンダは飲めなくなる。

今のこの国も同じだ。

王家はずっと、“短い物語”で私を殺してきた。

「王太子を誑かした」

「聖女を陥れた」

「王国を混乱に陥れた」

三点セット。分かりやすい悪役。気持ちよく石を投げられる構造。

その上で、国王は放送を切る。枠を切り、地下を閉じ、証拠を燃やす。

視聴者の目を奪えば、物語は王家のものに戻る。

だから、やることは一つ。

“切れない形にしてしまう”。

私は禁忌の精霊石に、息だけで合図を送った。

空のモニターに、テロップが落ちる。

【お知らせ:放送終了=証拠隠滅の開始です】

ざわ、とコメントが増える。

国王の眉が動く。心音字幕が勝手に走った。

【……黙れ。枠を切れ。地下を閉じろ】

言ってないのに、言ったことになる。

違う。

“本当のこと”が字幕になる。

私は続ける。息を細く、平らに。心拍を上げない。

【放送が切れた瞬間に起きること:①地下封鎖 ②証拠焼却 ③リオン処理】

人は、順番が見えると、想像が止まらない。

そして想像は、精霊力になる。

空気が重くなる。石畳がきしむ。

国王の右腕の刻印が、嫌そうに脈打った。精霊が嫌がっている。

ここで私は、炎上時代の“もう一つの鉄則”を思い出す。

敵のプロパガンダは、否定しても消えない。

「嘘だ」と言えば、「必死」と切り抜かれる。

だから必要なのは、否定じゃない。

“比較”だ。

同じ画面に並べて、視聴者に選ばせる。

私はテロップを落とす。

【投票の前に確認:王家の説明と、心音字幕。どちらが一致してますか】

国王が口を開く。

「秩序のためだ。民を守るため、王命放送は――」

その上に、心音字幕。

【……守る?違う。見られたくない。燃やせ。早く】

コメントが爆発する。

【一致してない】

【口と心が違う】

【今切ったら黒確じゃん】

国王が、放送を切れない。切った瞬間に“答え合わせ”になるから。

カイルは光の檻の中で膝をついたまま、唇だけ動かした。

「……父上、やめろ」

でも心音字幕は容赦がない。

【……地下。今日中に処理。リオンを消せ。証拠ごと】

私は、喉の奥の刃の気配を感じながら、息で笑う代わりに、最後の仕掛けを置いた。

炎上対策の最終手段。

“相手に説明させる”。

【国王へ質問:放送終了後、あなたはどこへ行きますか】

逃げ道を、言葉にさせる。

国王の刻印が、びくりと跳ねた。

そして、心音字幕が先に答えた。

【……地下を閉じる。保管庫へ。燃やす。枠を切る。王位を捨てて逃げる】

広場が凍り、次の瞬間、怒りが精霊力になってうねった。

“多数派”が、いま作られた。

国王が放送を切れば黒。切らなくても黒。

でも、投票が確定すれば――地下の扉が開く。リオンが消える。

私は息を吸う。首輪が「ちり…」と鳴った。

焦るな。心拍を上げるな。

炎上は止められる。

構造を変えれば。

私は、次のテロップを落とす。

【提案:投票を“確定”させずに、地下だけ先にライブで確認しませんか?】

その瞬間、空のモニターが、勝手に選択肢を生成しはじめた。

多数派が「見たい」と思ったから。

そして私は理解する。

この国の真実は、証拠じゃない。

“多数派の欲望”が作る。

――なら、次は。地下を、欲望の中心に置く。

国王の目が、初めて本気で怯えた。

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