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しおりを挟む捕まってしまったことなのか、わらわれたからなのか、何なのか、やっぱり、わからない。
「……いいの??水野??」
こいつな何者なのだろうか、いやそれ以上におかしいのは、おかしくなってしまったのは私なのだろうか、きっと後者だと思う。
逃げられるのに、離れられるのに、私は動けなかったというか、動かなかった。
横に振りたかった首が動かさなかった。
「知らない」
なぜ逃げなかったのか、私でもわからなかった。
「ふっ」
やっぱり、俺に話しかけられて堕ちない人なんていないよな、と怪しくわらったこいつに怒りをぶつける権利は、もう私にはなかった。
うん、とは言いたくなかったけれど、そうとしか思えなかった。
こいつの熱い唇と吐息と、掴む手と、全部に、彼の全部に一瞬で侵された。
「意外と可愛いところあるじゃん」
むかつくのに、殴りたいほど苛立つ顔をしているのに、私はこいつから離れられなくて、何かに縛られているように動かなくて、こいつの言葉を聞いた途端、鼓動が速くなった。
「なんなの……ほんとにわかんない」
「俺からすれば、水野のほうがわかんない。嫌なら逃げればいいのに逃げないし」
思慮に欠けるこいつに論破されてしまうなんて、そう思うけれど、何も言えない。
それにきっとこいつは逃げる気がないことを知っていると思うし、知っている上で言っているに違いない。
「あんたのせいでしょ」
支離滅裂としか言いようがない自分に呆れるし、滑稽だし、着恥に駆られた。
こいつの言いなりになってしまっているところに腹が立つ、そして、それなのに動かない自分にもっと腹が立つ。
「まあ、それは否めないかもね」
私を面白そうにわらったのに、サラッと認めてしまうこいつは全くもって読めないし、いくら考えてもわからない、理解できない人種だ。
「でもさ、逃げないのは水野の意思でしょ?」
盟々とした態度、冷たく怪しく見下ろす瞳、ニヤッとわらう唇、全てに腹が立って何か言い返したいと思ったときはもう何もかもが遅かった。
「こっち向いて」
私が無意識に顔を上げると、目をつむった縞麗な顔面が近づいてきて、距離がゼロになった。
柔らかい唇が私の唇と優しく重なって、さっきのように乱暴ではなくふわっと重なって、キス慣れしているということを改めて知った。
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