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第三章 暴風のコロッセオ
第216話 初戦突破
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続く二回戦まであまり時間がない。機体整備をアイザックとロメオが引き受けてくれたので、僕たちは早めのお昼を食べに行くことにした。
機体を自分たちのエーテルのみで動かす関係で、かなりのエネルギーを消費するのだ。魔力切れを防ぐためにも細かな補給は、かなり重要と言える。
「売店はかなりの混雑だろうし、寮の食堂に向かった方がいいね」
「あっ、食堂のおばさんたちが、差し入れを持ってきてくれてるみたい」
バックヤードにある案内板を兼ねた映像盤に浮かぶ文字を読み取ったアルフェが、僕に知らせてくれる。
「食堂の皆様から心ばかりの差し入れがあると伺ってはいましたが、このことでしたか……」
このところ僕は機兵改造の都合で、寮の食堂ではほとんど急いで食べるだけになっていたのだが、どうやら1年F組から2チームが出場することもあり、食堂の方でもかなり気を遣ってくれていたようだ。
「それならヴァナベルたちの試合も見られそうでいい――」
「いやー! やるなぁ、ホム!」
言いかけた僕の言葉に背後から響いたヴァナベルの明るい声が重なる。
「ヴァナベル!?」
「お互い一回戦突破だな、リーフ!」
試合が終わった直後なのか、まだ息を弾ませたままのヴァナベルが得意気に親指を立てて満面の笑顔を見せている。
「おめでとう、ヴァナベル」
「まだまだ、これからが本当の戦いだぜ」
ヴァナベルたちが戦ったのは三年生の貴族チーム、『ヴァーサタイル』だ。機体色を緑で統一し、各チームメンバーに合わせて調整したレーヴェが特徴だ。バーニングブレイズに近いコンセプトのチームで、三年連続の出場を誇り、昨年はベスト4にも残った強豪なのだが、ヴァナベルたちがここにいるということは、かなりの短時間で勝利したことになる。
「しっかし、マジで三対一でやるとはなぁ。オレたちの特訓の成果が出てるじゃねぇか!」
ヴァナベルは、そんな自分たちの戦いの自慢よりもホムの戦いにかなり感心している様子だ。一方のホムは嬉しそうに目を細めると、尊敬の意を込めた視線でファラを見上げた。
「ファラ様のお陰です」
「そう言うと思ったぜ」
大仰に肩を落としてみせるヴァナベルは、それでもかなり嬉しそうだ。
「にゃははははっ! ヴァナベルとヌメリンに囮になってもらわなきゃ、三対一なんて芸当、本番じゃ出来なかったって」
二人のやりとりにファラが快活に笑い、ホムが三対一を想定した特訓をしていたことを明かしてくれた。僕たちが心配しないように、四人の間で秘密にしていたようだ。
「ファラちゃんたちの一回戦の様子も聞きたいな。整備の準備とかで、全然見られなかったから」
アルフェが全員の一回戦突破を喜ぶように、飛び跳ねながら言う。
「もちろん! オレ様の武勇伝をじっくり聞かせてやるぜ!」
「ベルの話は長くなりそうだから、みんなで差し入れのごはん食べながら聞こうねぇ~」
待っていましたとばかりにヴァナベルが胸を張る隣で、ヌメリンがにこにこと補足する。
「だな! 腹が減ってはなんとやらだ!」
ヴァナベルは気分を害した様子もなく、大きな口を開けて満面の笑顔を見せた。
* * *
ヴァナベルたちのチーム――『ベルと愉快な仲間たち』と、三年生の貴族チーム『ヴァーサタイル』の戦いは、僕たちほどではないものの、かなりの短期決着型だったようだ。
「まあ、ベテランチームっていうだけあって、最初は手こずったけどな」
「いくら魔眼で視えるって言っても、機兵って自分の身体と全く同じようには動かせないし、反応速度も違うからさ」
ファラの苦笑からも窺えるが、ヴァーサタイルの卓越した連携と熟練の操縦技術に序盤はかなり押されるたようだ。
「まっ、そこはヌメの機兵の回転斬りによる砂塵からの奇襲攻撃が効いたよな」
「チーム対抗戦で、リーフが考えてくれた作戦だからねぇ~」
ああ、そういえばA組を相手に起死回生を狙った作戦では、ヌメリンに囮を頼んで、重要な役割を担ってもらったんだったな。
あの時の戦いを今回の戦いにも応用してくれたというのは、僕としても嬉しい限りだ。
「やっぱさ、ヌメのカタフラクトの出力がでけぇのがいいよな。ヌメのパワーも段違いに発揮されてさ」
ヌメリンの機体、カタフラクトはレギオンの後継機体として開発された機兵でヴァナベルの言うとおり、出力面において重点的な改良が施されている。カタフラクトは、ヌメリンとの相性も凄く良いし、生身での戦いとは比べものにならない威力を見せつけてくれたのだろう。
「で、その隙をオレとファラが逃さず斬り込んだって訳だ」
クラス対抗戦で一度使った作戦ではあるが、三年生が相手だったということもあり、見事に通じたようだ。相手チームが僕たち1年F組を全く気にしていなかったのが幸いしたのだろうな。
「ベルがフラーゴで駆け抜ける姿、すっごく格好良かった~。ヌメのヒーローはやっぱりベルだって思ったよ」
「にゃははっ! あたしのレスヴァールの活躍にも注目してくれよな」
まあ、そうでなくてもヴァナベルのフラーゴとファラのレスヴァールの動きに、少々カスタマイズが入った程度のレーヴェが太刀打ち出来るかと言えば、無理だろうな。
ヴァナベルたちの機兵は、僕の改造したアルタードやレムレスほどではないけれど、参加チームの中でもかなり優秀な機体だ。
特にファラのレスヴァールは機体そのものがしなやかで柔軟なファラの動きに対応しているので、見事な戦いを見せてくれたはずだ。
「ファラ様のレスヴァールのしなやかな動きが、目に浮かぶようです」
「二回戦も楽しみだね」
ホムとアルフェも僕と同じことを想像していたのか、嬉しそうに三人の話に頷いている。
「……それで、その後はどうなったんだい?」
短期決着を見せたという結果から逆算すれば、その急襲によって一気に攻めきったことは容易に想像出来る。
「そりゃもちろん、さぁ――」
僕の予想を知っているかのように、サンドイッチを口いっぱいに押し込んだヴァナベルが自信満々に立ち上がる。
「オレが倒したリーダー機をファラが追撃で撃破! 後の二機もオレたち三人で一気にたたみかけたに決まってんだろ!」
立ち上がったヴァナベルは、そのまま一回戦の自らの戦いを身振り手振りで再現してみせた。
機体を自分たちのエーテルのみで動かす関係で、かなりのエネルギーを消費するのだ。魔力切れを防ぐためにも細かな補給は、かなり重要と言える。
「売店はかなりの混雑だろうし、寮の食堂に向かった方がいいね」
「あっ、食堂のおばさんたちが、差し入れを持ってきてくれてるみたい」
バックヤードにある案内板を兼ねた映像盤に浮かぶ文字を読み取ったアルフェが、僕に知らせてくれる。
「食堂の皆様から心ばかりの差し入れがあると伺ってはいましたが、このことでしたか……」
このところ僕は機兵改造の都合で、寮の食堂ではほとんど急いで食べるだけになっていたのだが、どうやら1年F組から2チームが出場することもあり、食堂の方でもかなり気を遣ってくれていたようだ。
「それならヴァナベルたちの試合も見られそうでいい――」
「いやー! やるなぁ、ホム!」
言いかけた僕の言葉に背後から響いたヴァナベルの明るい声が重なる。
「ヴァナベル!?」
「お互い一回戦突破だな、リーフ!」
試合が終わった直後なのか、まだ息を弾ませたままのヴァナベルが得意気に親指を立てて満面の笑顔を見せている。
「おめでとう、ヴァナベル」
「まだまだ、これからが本当の戦いだぜ」
ヴァナベルたちが戦ったのは三年生の貴族チーム、『ヴァーサタイル』だ。機体色を緑で統一し、各チームメンバーに合わせて調整したレーヴェが特徴だ。バーニングブレイズに近いコンセプトのチームで、三年連続の出場を誇り、昨年はベスト4にも残った強豪なのだが、ヴァナベルたちがここにいるということは、かなりの短時間で勝利したことになる。
「しっかし、マジで三対一でやるとはなぁ。オレたちの特訓の成果が出てるじゃねぇか!」
ヴァナベルは、そんな自分たちの戦いの自慢よりもホムの戦いにかなり感心している様子だ。一方のホムは嬉しそうに目を細めると、尊敬の意を込めた視線でファラを見上げた。
「ファラ様のお陰です」
「そう言うと思ったぜ」
大仰に肩を落としてみせるヴァナベルは、それでもかなり嬉しそうだ。
「にゃははははっ! ヴァナベルとヌメリンに囮になってもらわなきゃ、三対一なんて芸当、本番じゃ出来なかったって」
二人のやりとりにファラが快活に笑い、ホムが三対一を想定した特訓をしていたことを明かしてくれた。僕たちが心配しないように、四人の間で秘密にしていたようだ。
「ファラちゃんたちの一回戦の様子も聞きたいな。整備の準備とかで、全然見られなかったから」
アルフェが全員の一回戦突破を喜ぶように、飛び跳ねながら言う。
「もちろん! オレ様の武勇伝をじっくり聞かせてやるぜ!」
「ベルの話は長くなりそうだから、みんなで差し入れのごはん食べながら聞こうねぇ~」
待っていましたとばかりにヴァナベルが胸を張る隣で、ヌメリンがにこにこと補足する。
「だな! 腹が減ってはなんとやらだ!」
ヴァナベルは気分を害した様子もなく、大きな口を開けて満面の笑顔を見せた。
* * *
ヴァナベルたちのチーム――『ベルと愉快な仲間たち』と、三年生の貴族チーム『ヴァーサタイル』の戦いは、僕たちほどではないものの、かなりの短期決着型だったようだ。
「まあ、ベテランチームっていうだけあって、最初は手こずったけどな」
「いくら魔眼で視えるって言っても、機兵って自分の身体と全く同じようには動かせないし、反応速度も違うからさ」
ファラの苦笑からも窺えるが、ヴァーサタイルの卓越した連携と熟練の操縦技術に序盤はかなり押されるたようだ。
「まっ、そこはヌメの機兵の回転斬りによる砂塵からの奇襲攻撃が効いたよな」
「チーム対抗戦で、リーフが考えてくれた作戦だからねぇ~」
ああ、そういえばA組を相手に起死回生を狙った作戦では、ヌメリンに囮を頼んで、重要な役割を担ってもらったんだったな。
あの時の戦いを今回の戦いにも応用してくれたというのは、僕としても嬉しい限りだ。
「やっぱさ、ヌメのカタフラクトの出力がでけぇのがいいよな。ヌメのパワーも段違いに発揮されてさ」
ヌメリンの機体、カタフラクトはレギオンの後継機体として開発された機兵でヴァナベルの言うとおり、出力面において重点的な改良が施されている。カタフラクトは、ヌメリンとの相性も凄く良いし、生身での戦いとは比べものにならない威力を見せつけてくれたのだろう。
「で、その隙をオレとファラが逃さず斬り込んだって訳だ」
クラス対抗戦で一度使った作戦ではあるが、三年生が相手だったということもあり、見事に通じたようだ。相手チームが僕たち1年F組を全く気にしていなかったのが幸いしたのだろうな。
「ベルがフラーゴで駆け抜ける姿、すっごく格好良かった~。ヌメのヒーローはやっぱりベルだって思ったよ」
「にゃははっ! あたしのレスヴァールの活躍にも注目してくれよな」
まあ、そうでなくてもヴァナベルのフラーゴとファラのレスヴァールの動きに、少々カスタマイズが入った程度のレーヴェが太刀打ち出来るかと言えば、無理だろうな。
ヴァナベルたちの機兵は、僕の改造したアルタードやレムレスほどではないけれど、参加チームの中でもかなり優秀な機体だ。
特にファラのレスヴァールは機体そのものがしなやかで柔軟なファラの動きに対応しているので、見事な戦いを見せてくれたはずだ。
「ファラ様のレスヴァールのしなやかな動きが、目に浮かぶようです」
「二回戦も楽しみだね」
ホムとアルフェも僕と同じことを想像していたのか、嬉しそうに三人の話に頷いている。
「……それで、その後はどうなったんだい?」
短期決着を見せたという結果から逆算すれば、その急襲によって一気に攻めきったことは容易に想像出来る。
「そりゃもちろん、さぁ――」
僕の予想を知っているかのように、サンドイッチを口いっぱいに押し込んだヴァナベルが自信満々に立ち上がる。
「オレが倒したリーダー機をファラが追撃で撃破! 後の二機もオレたち三人で一気にたたみかけたに決まってんだろ!」
立ち上がったヴァナベルは、そのまま一回戦の自らの戦いを身振り手振りで再現してみせた。
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