沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい! 第一部

流川おるたな

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優しいお祖母様

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 お祖父様がわたしを面白おかしく茶化したあと、すっと視線と表情を変え師匠に仕事の話を持ちかける。

「奏君、明日の日中はわしと共に行動して欲しいのじゃが、時間の方は空いておるかのう?」

「フッ、何を仰いますやら。智三郎様の為ならば、時間など空いておらずとも何とかするというものです」

「ほっほっほっ、そうかそうか、ならば結構じゃ。明日はよろしく頼むぞ」

「お任せください」

 師匠がすまし顔で快く仕事を引き受けた。

 お祖父様が師匠に敢えて仕事の依頼をするという事は、身に危険が及びそうなところへ出向くのかも知れない。
 江戸の時代に比べ平穏になった明治時代とは言え、まだまだ治安も悪く物騒な世の中だ。
 お年を召したお祖父様にはそういった場所へは極力行って欲しくないけれど、日本最強の剣士が傍に居れば心配は無用というものである。


 加賀美家の食卓に並ぶ料理にハズレの日は無い。何故なら厨房には、名を道場勘吉(みちばかんきち)さんという熟練した確かな腕を持つ料理人が居るからだ。
 道場さんは加賀美家で専従して働く以前は有名旅館の料理長をしていたらしい。
 5年ほど前の話。祖父母が夫婦水入らずで旅行をした際、何気なく立ち寄ったその有名旅館で料理を食し、その味をいたく気に入ったお祖父様が散々口説いて連れ来た人だった。
 そんな道場さんが加賀美家の料理人をするようになってからというもの、今まで家族の誰一人として料理にケチをつけるような事は無い。
 
 お酒に酔っていようとも味は分かる。
 やはり今夜の料理も美味しいなどと想いながら食べていると、お祖母様がにこやかな表情でわたしに問いかける。

「司、貴方の様子がいつもと違うように見えるけれど、何かあったのかしら?」

 あた~、お祖父様に突っ込んで訊かれなくて一安心していたのに...想わぬところから矢が飛んで来てしまった。

「な、何も案ずる事はございませんわ。お祖母様」

 お祖母様は気品のある顔立ちをしていて、普段から誰からも好かれ愛されるような人柄だけど、海千山千のお祖父様に長年寄り添って来ただけあり、鋭い洞察眼と鉄のような厳しさを持ち合わせている。
 こんな言葉で返しても信じて貰えるとは考えていなかったのだけど...

「貴方もいい年頃ですものねぇ。秘密の一つや二つ持っていても不思議ではないわぁ。でも、困った時はいつでも言ってちょうだい。喜んで相談に乗りますからね」

 普段より優しい顔をして、そう言葉をかけてくださったのでした。

「ありがとう、お祖母様...」
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