やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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スイスの魔女

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「サトリさんから心を読まれないように、ちょっとした工夫をさせて貰いました~」

 軽く意地悪な感じで言うと、サトリさんが悔しそうな顔をする。

「人間にそんなことが出来るなんて...君、何者なの?」

 フフフ、今度は驚いてくれている。今朝はこっちがしてやられたから、勿体ぶってタネは明かさないのだ。

「彼女は魔女だよ」

 !?久慈さんそれは無いでしょ!
 横からあっさりとバラされてしまった。わたしの秘密を黙っているというささやかな優越感だったのに...

「魔女か...ん!?魔女って日本にも居るの!?」

 最もな質問ですサトリさん。わたしは日本でいうところの巫女でも祈祷師でもなく、代々母型の家系から血を受け継いでいる魔女だ。
 祖母の母、つまりわたしにとっての曾祖母がスイス人の魔女だったらしい。

「わたしはスイスの魔女の曾孫に当たる魔女なんですよ」

「ふ~ん、そうなんだ。ま、ボクにはどうでも良いことだけどね」

 だったら最初から訊かないで欲しかった...

「さてと、サトリさんへの用事も済んだようだし、日も暮れて来たからそろそろ事務所に帰ろう」

 事務所に帰り着き、ロッカールームで私服に着替えた。

 タイムカードの傍で久慈さんが待ってくれている。
 そこへ園長がやってきて話し掛けられた。

「黒川さんお疲れ様。やしあか動物園での仕事はどうでしたか?」

「驚きの連続でしたけど、魔法を使えばなんとかやっていけそうです」

「ふむ、そうですか。それは良かった。あ、そうそう、聞いてるかも知れませんが、明日は仕事あとにやしあか食堂で君の歓迎会を行います。主役なので必ず出席してくださいね」

「はい!もちろん出席させていただきます!」

 最近の人間社会では上司や先輩からの誘いを簡単に断るらしいけれど、流石に自分の歓迎会を断る人はいないでしょ。たぶん。

「よろしい。では久慈君もよろしくお願いしますね。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

 久慈さんが挨拶を返すと、園長は静かに事務室を出て行った。

 気になったのでタイムカードを押して訊く。

「久慈さんは車で通勤してるんですか?」

「そうだよ。家との距離は車で30分掛からないくらいだ。黒川さんは電車で通勤するんだっけ?」

「はい。電車が一番手頃かなと思って」

「良かったら駅まで送ってあげようか?」

「ありがとうございます。でも甘えちゃうのが癖になるといけないので自分の足で帰ります。お疲れ様でした!」

「そうか、いい心掛けだねぇ。じゃお疲れ様」

 こうして久慈さんと挨拶を交わし、動物園での長い一日が終わったのだった。
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