一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第24話 鳥居

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「おっと~!?本当に借りちゃって良いのかなぁ!?あとで待ってる落とし穴とかない?それにそれにこれって、
一輪にがいざって時のために持ってきたものなんでしょ?」

 ズボンを受け取った未桜が途方もなく驚いた表情を浮かべた。
 しかしそんなに僕の厚意は意外なものだと思われているのか...

「あ、ああ、そのつもりで渡したんだから全然構わない。だから遠慮無く好きに使ってくれたまえ。助手の柔な足が傷だらけになるのは僕が望んでいるところではないからな」

 渋々、否、気遣って渡した畳んであるズボン広げた未桜が、周囲を気にせず早々に履こうとするので僕は反射的に目を背けた。

 少しの間を起き未桜へ視線を戻すと、
ズボンの丈が合わず、裾を丸めて帳尻を合わせた彼女が陽気に言う。

「よし!今度こそ準備万端!ペースを上げて進んじゃおう♪」

「うむ、そうだな。ラーメン屋を出てからはスケジュール的に少々遅れ気味だ。未桜の言う通りペースを上げて行くぞ。あっ!それと、豆苗神社に着くまでの間は余計な会話は極力控えることにしよう」

「は~い♪極力沈黙了解であります!」

 未桜の返事はハキハキとしていていつも気持ち良く感じているのだけれど、大抵は何処かで言われた事を忘れポカをやらかしてしまう。
 
 だが僕は彼女を助手として迎え入れた判断を後悔したことなど一度もない。
 
 良いじゃないか「ポカ」するくらい、だって人間だもの。

 といった具合であるし、何より彼女の言動は突拍子がなくワンパターンでもないから一緒に居ても飽きないのだ。

 現状では一日の中で同じ空間を共にする時間が誰よりも長いのは未桜なのだから、ずっと一緒に居ても「飽きない」という事象は何よりも重要なのである。

 などと考ながら獣道の如く歩き辛い道を僕達は黙々と進み行く。

 風車のあった入り口から歩き始めてかれこれ一時間が経とうとした頃、木々の生い茂っていない地面の平坦な空間が視界に飛び込んだ。

 荒れた道を慎重かつ急いで歩き続け、予想していたよりも遥かに体力を消耗していた僕は、正直なところ安堵したものである。

 きっと、此処まで来るのにトラブル多すぎて余計に疲労感があるのだろう。

 森を抜け広く平坦な空間に出ると、未桜が両腕を上げて気持ち良さそうに身体を伸ばす。

「ん~!気持ち良いなぁ!森林浴も良かったけれど、広々とした場所に出るとまた違った良さがあるね~♪」

「確かに解放感はあるな。それよりほれ、豆苗神社の鳥居がもう見えてるぞ」

 現在の位置から距離にして50mほどだろうか、木造の半壊した小さめの鳥居を僕は指差し未桜に伝えた。
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