一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第23話 森林浴

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 春の陽気を演出していた太陽の光が雲によって遮られ、森の中は若干薄暗く見通しが悪いように思える。

 辺りには鳥の鳴き声や、木々に生える葉っぱがサワサワと揺れ重なる音、僕達が歩き枯れ枝や枯れ葉を踏んだ時の音、などなどが聴こえるけれど、都会での日常的な喧騒からすれば比べようも無いほど静かなものだ。

 森の様々な種の植物が醸し出す香りも心地よく、さっきまで騒がしかった僕達の心を随分と穏やかで落ち着いたものにしてくれた。

 だが、まるで幻想世界を歩くように森林浴を満喫している僕の耳に、邪魔な声が背後から届く。

「だぁぁーーーっ!また何かが服に引っ掛かっちゃったぁぁぁぁ!」

 うるさい!黙ってくれないかな。
 折角の森林浴が台無しじゃないか...

「だから言ったろう。森の道は険しいって。事前情報は与えていたんだから恨むなら服を忘れた自分を恨めよ。些細なアクシデントはグッと堪えてくれ。僕は森の静かな空間を堪能したいんだ」

「んもう、そんなこと分かってるよ~。一輪を恨むわけないじゃん。よし!こうなったら奥の手だぁ♪」

 未桜はそう言いうと、急にワンピースのスカート部分の両端を掴み持ち上げた。

「おっ、おい!?何やってるんだ!?」

 突然の思い掛けない行動を目の当たりにした僕は若干狼狽するも、未桜のあらわになった白く綺麗な太ももをガン見する。そりゃ健全な男ならガン見するだろ。

 自身の品格を守るためにも断っておくが、僕は「どすけべ」でも「むっつり」でもない。筈である。

 人のスケベ度合などいくら自分で評価しようが、結局のところ他人の評価が全てと云えるかも知れないけれど、敢えて声を大にして云っておきたい。
 
 僕は極めて一般成人男性のスケベ心しか持ち合わせていないのだ!と。

 ここで一つ論じてみよう。

 例えば女性が思い掛けず男性の秘部などを見た場合、咄嗟に手で目を覆い隠す行動に出ることは容易に想像できる。が、逆の場合を想像するとなると果たしてどうだ!?如何とも想像し難いものではないだろうか!?

 そう、このケースの場合、咄嗟に目を覆い隠す男性なぞ極々僅かな少数派でしかないのである。

 謂わばこれは天から降ってきた「貰い事故」のようなものなのだ。

「これでオッケ~っと♪」

 さて、男の性(さが)的行動の正当性を証明している間に未桜の方は事が済んだようである。

「って、何やっとんじゃ!?全然オッケ~じゃないわ!」

 僕は彼女にツッコミを入れざるを得なかった。
 何と未桜のワンピースはめくりにめくり上げられ、太ももをギリギリのところまで披露してしまうミニスカートと化していたのである。
 これではちょっと屈んだだけでも下着登場と相なってしまうではないか!

「えっ!?あっ、あぁ...ちょっとめくり過ぎちゃったかなぁ、でもこれで障害物に引っ掛からなくて動き易くなったと思うんだけど...」

「確かにそのメリットはあるけれど、肌が剥き出しの状態では傷だらけになってしまうじゃないか...ちょっと待ってろ」

 それに目のやり場に困って目が大いに泳いでしまうではないか。

 僕は背負ったリュックを地面へ下ろし、中からいざという時の登山用ズボンを取り出し未桜へ手渡す。

 助手の柔肌を守らなければという熱い気持ちが、極一般的な男の下心に勝利した瞬間であった。
 
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