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第22話 アポロチョコ
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僕に備わる特殊能力の説明の中で「物体」という単語を使用したけれど、少しばかり掘り下げて説明しなければならない。
一般的にいうところの「物体」の意味は具体的な形を持って空間に存するもの、物理学では、物質が集まって空間的な広がり(形体)を成しているものである。
つまりこの広義の意味合いからすると生きている当然ながら人間も含まれるのだが、僕の「想いの線」においては「生物」を省いた狭義的な意味で捉えてもらった方が良いだろう。
何故なら僕の「想いの線」は人間を始めとした動物、昆虫、植物などの生物の類は、過去に何度も能力の発動を試みた経緯はあったが、ただの一度も成功したことが無いからだ。
尚また付け加えておくと、例えとして出した「運命の赤い糸」とも異なる部分が少なからずある。
「運命の赤い糸」を頭の中で想像した場合、フニャフニャとした曲線の赤い毛糸を絵になると思われるけれど、「想いの線」はこれでもかと言わんばかりに真っ直ぐな直線なのだ。
また違う例えを述べて些か申し訳ない気持ちもあるが、かのジ○リ映画である「天空の城ラピュ○」に出てくる「飛行石」が、「天空の城○ピュタ」の位置をナビゲートする青いレーザー光線のようなものだとイメージしてもらった方がいいかも知れない。
まぁ、あんなにハッキリとした光線ではないのだけれど。
などと説明染みたというか説明そのものをさせていただいたわけだが、そろそろふざけた解説はこの辺にして現実に戻ろうと思う。
「可愛い助手のためだ。試すだけ試すのはいっこうに構わない。が、ダメ元レベルなんだから余り期待するなよ」
「一輪に初めて『可愛い』って言われた~♪滅茶苦茶嬉しいなぁ♪」
いや、そっちに過剰反応し過ぎだろ。
「僕の話をちゃんと聞いてるのか?」
「あっ!?うん♪『ダメ元上等』でお願いしま~す♪」
「上等」という言葉の使い方に若干の違和感を感じるが捨て置くとするか。
僕は側に居る未桜により近づき、彼女の頭のてっぺんに右手をそっと当てた。
「さて、集中してお気に入りの帽子のことだけを考えるんだ」
「うん...」
僕の能力は人間に使って成功した試しが無いけれど、折角やるなら出来る限り成功率は上げたかった。
能力発動のため集中力を高めた僕はいつもの決まり文句を呟く。
「想いよ、導け」
上手く発動する時は、手の甲の真上に「アポロチョコ」サイズの光球が浮かび上がるのだが...
今回はなかなか姿を現してくれない。
やはり人間が相手では発動しないか...と諦めかけたその時!
手の甲から橙色の小さな「蟻」サイズの光球がヒョロヒョロと浮かび上がった。
もしやいけるのでは!
「プスッ」
淡い期待は線香花火が消えるように一瞬で儚く消え去った。
「すまん未桜、失敗だ...」
「あ~...全然気にしないでいいよ~。わたしのためにありがとね♪運が良ければきっと見つかるさぁ~♪そうだそうだ!わたしは自分の強運を信じるのだ~!」
今日の彼女の不運を目の当たりにして素直に肯定は出来なかったけれど、本人が誰にも迷惑を掛けず勝手に信じることは悪いことでは決して無い。
度重なる不運にもめげず、元気が取り柄の鈴村未桜23歳の意気やよし!
などという言葉は敢えて口には出さないけれど、僕達は帽子が見つかることを願いつつ、静かで深い森の中へと足を踏み入れたのだった...
一般的にいうところの「物体」の意味は具体的な形を持って空間に存するもの、物理学では、物質が集まって空間的な広がり(形体)を成しているものである。
つまりこの広義の意味合いからすると生きている当然ながら人間も含まれるのだが、僕の「想いの線」においては「生物」を省いた狭義的な意味で捉えてもらった方が良いだろう。
何故なら僕の「想いの線」は人間を始めとした動物、昆虫、植物などの生物の類は、過去に何度も能力の発動を試みた経緯はあったが、ただの一度も成功したことが無いからだ。
尚また付け加えておくと、例えとして出した「運命の赤い糸」とも異なる部分が少なからずある。
「運命の赤い糸」を頭の中で想像した場合、フニャフニャとした曲線の赤い毛糸を絵になると思われるけれど、「想いの線」はこれでもかと言わんばかりに真っ直ぐな直線なのだ。
また違う例えを述べて些か申し訳ない気持ちもあるが、かのジ○リ映画である「天空の城ラピュ○」に出てくる「飛行石」が、「天空の城○ピュタ」の位置をナビゲートする青いレーザー光線のようなものだとイメージしてもらった方がいいかも知れない。
まぁ、あんなにハッキリとした光線ではないのだけれど。
などと説明染みたというか説明そのものをさせていただいたわけだが、そろそろふざけた解説はこの辺にして現実に戻ろうと思う。
「可愛い助手のためだ。試すだけ試すのはいっこうに構わない。が、ダメ元レベルなんだから余り期待するなよ」
「一輪に初めて『可愛い』って言われた~♪滅茶苦茶嬉しいなぁ♪」
いや、そっちに過剰反応し過ぎだろ。
「僕の話をちゃんと聞いてるのか?」
「あっ!?うん♪『ダメ元上等』でお願いしま~す♪」
「上等」という言葉の使い方に若干の違和感を感じるが捨て置くとするか。
僕は側に居る未桜により近づき、彼女の頭のてっぺんに右手をそっと当てた。
「さて、集中してお気に入りの帽子のことだけを考えるんだ」
「うん...」
僕の能力は人間に使って成功した試しが無いけれど、折角やるなら出来る限り成功率は上げたかった。
能力発動のため集中力を高めた僕はいつもの決まり文句を呟く。
「想いよ、導け」
上手く発動する時は、手の甲の真上に「アポロチョコ」サイズの光球が浮かび上がるのだが...
今回はなかなか姿を現してくれない。
やはり人間が相手では発動しないか...と諦めかけたその時!
手の甲から橙色の小さな「蟻」サイズの光球がヒョロヒョロと浮かび上がった。
もしやいけるのでは!
「プスッ」
淡い期待は線香花火が消えるように一瞬で儚く消え去った。
「すまん未桜、失敗だ...」
「あ~...全然気にしないでいいよ~。わたしのためにありがとね♪運が良ければきっと見つかるさぁ~♪そうだそうだ!わたしは自分の強運を信じるのだ~!」
今日の彼女の不運を目の当たりにして素直に肯定は出来なかったけれど、本人が誰にも迷惑を掛けず勝手に信じることは悪いことでは決して無い。
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