一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第21話 想いの線

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 帽子の行き先を追い空を見上げると、太陽の光で満たされていた青色の空間が灰色の雲の所為でほとんど色を失っていた。

 フワフワと空を飛んでいればまるでUFOのような未桜の帽子、ボーラーハット。
 ものの十数秒であっという間に遠くまで風に流され見えなくなってしまった。
 彼女にとっては不運なのだろうが、きっと森の奥にでも落ちてしまったのだろう。

「未桜のU、いや、帽子は残念だが諦めた方がいいかも知れないな。あれを探すとなるとどれほど時間が掛かるか分からん」

「ええ~っ!?これじゃ泣きっ面に蜂だぁ~!あれって大学在学の時から使ってる結構お気に入りの帽子だったのにぃ...」

 未桜はあからさまに肩を落としてしょげている。

 今日は彼女にとって厄日だったのか、日常に比べて随分と気分的起伏が激し過ぎる日となったようでである。

 普段は彼女に対してあまり気を回さない僕でもちょっと可哀想になってきた。

「...可能性からして期待をもたすのもなんだが、もしかしたら豆苗神社までの道のりの何処かに落ちてるかも知れないぞ」

「...だと嬉しいんだけど...あっ!そうだ!一輪の『線』ならひょっとして見つけられるんじゃない?」

「...ん~、どうだろうな...」

 未桜がすがるように口にした「線」とは、僕が生まれ持った特殊能力、僕なりの正式名称で「想いの線」と呼んでいるものである。

 と云ったところで「なんそれ?」という疑問視する声が聞こえてきそうなので簡単に説明しよう...

 突然だが、「サイコメトリー」という言葉を聞いたことはないだろうか?

 サイコメトリーには計量心理学、心理学に統計学的手法を取り入れた学問という意味と。
 科学的に証明されていない超能力の一種で物体に触れることにより、そこに残された人の記憶を読み取る能力・現象という意味があるけれど、僕の特殊能力に関連しているのは後者の方となる。

 そう、僕の特殊能力である「想いの線」とは俗にいう「超能力」に限りなく近いものなのだ。

 サイコメトリーは人の記憶が物体に残されていて、触れると人の過去の経験を読み取れるという不思議で非科学的な超能力である。

 僕の場合、そこまで強力な能力は備わっていない。

 想いの線はある一定の条件下で物体に触れると、物体と人を繋げる橙色の糸のような細い線が僕の目に映るのだ。

 親しみ深いもので例えるなら「運命の赤い糸」が分かりやすいかも知れない。

 非科学的な現象を苦手とする天才のこの僕が、「想いの線」などという解析不能な特殊能力を持っているのだから皮肉なものである。
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