一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな

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第33話 観察力

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 実家!?だって!?...マジか...

 もし淀鴛さんの言ったことが真実だろしたら、廃墟探索だと軽々しく言う僕と一体どのような感情で接しているのだろうか。
 少し怖い気がする...

「実家って、まさか淀鴛さんは以前この燈明神社に住んでたってことですか?」

「あぁ、まぁそいうことになるなぁ...ん?一輪君はもしかして俺の言ったことを疑ってるのか?ククク、君達にこんな嘘をついて俺に何の得があるっていうんだい?」

 確かに嘘をつくメリットはないな。

「...嘘じゃない。30年前までは実際に両親と三人で暮らしていた」

 計算すると5歳の頃までってことか...

 ちょっと興味が湧いて来たな。
 淀鴛さんの心境をいまいち読み取れないが深掘りしてみるか。

「あの、突っ込んで訊いちゃいますけど30年前に淀鴛さんがこの神社、というかご実家に住めなくなったのって何か事情でもあるんですか?」

「...........」

 僕の質問に対して黙する淀鴛さん。

 さっきまで余裕綽々だった表情も一変し、難しい顔をして顎に手を当て何かを考えているようだ。

 たぶん僕達に話すべきか否か、心の中で自問自答でもしているのだろう...

「.....事情を話す前に三つの頼みごとがあるんだが構わないか?」

 三つも!?

 こういう展開の場合、普通に考えて頼みごとは一つだと相場が決まっているのでは?

「頼みごとが三つとは多すぎですよ淀鴛さん。ですが、お話しを伺いたい気持ちは少なからずあるので一応言ってみてください」

 聞くだけ聞いて無理そうなら拒否するだけだ。

「...だろうな。じゃあまずは、その胸ポケットの小型カメラを停めてオフレコにしてくれ」

「えっ!?」

 僕はカメラのことをと突然指摘されたのでドキッとしてしまった。

 だが冷静になって考えれば結構な至近距離で会話は継続しているし、相手は今までの様子からして恐らく敏腕の刑事。
 
 逆にバレない方がおかしいというものだ。

「『流石ですね』、とは言いませんよ淀鴛さん。でもいつからこのカメラに気づいてたんです?」

「最初にここで君達を見た時からだ」

 流石ですね。

 やはりこの人の洞察力は、いやこの場合観察力と云った方が正しいか。
 どちらせよ、この人が優秀な刑事であることは間違いなさそうである。棘の多そうな人格は別として...

 鼻から会話を記録するつもりの無かった僕は、胸ポケットから小型カメラをスムーズに取り出し、淀鴛さんの目の前で電源を切って見せたのだった。

「はい、これでOKですね。では二つ目の頼みごとを聞きましょう」
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