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第38話 目線
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無論、俺が幼かった時代にも機械技術駆使した遊園地なるテーマパークは存在していたが、井伊影村にそのような大それたテーマパークが在るわけもなく、テレビに映る遊園地などをたまに目にして知っていた程度である。
だが俺は、テレビに映る華やかで賑やかな遊園地を視ても余り興味を持たなかった。
遊園地を楽しむには幼過ぎたという理由もあろうが、5歳の俺にとって自然の織りなす遊技場と化した裏庭は、何よりも楽しい遊び場であり、ある意味では俺にとっての一大王国とでも思っていたのかも知れない。
暑い夏の日などは、長い年月の積み重ねで自然に出来た大きな水溜りとも云える浅い極小の池には、アメンボが静かに水上を這い、親に似ても似つかない蛙の子であるオタマジャクシが泳いでいた。
流石にザリガニなどの甲殻類は居なかったが、幼かった俺にはアクアリウムを眺めているような感覚があったのかも知れない。
母が休日や平日でも暇があれば手入れをしていた畑が二つあり、片方には数種の野菜を植えて食糧の足しにして、もう片方には向日葵などの花を植えていた記憶がある。
砂場は無かったが代わりに土だけは豊富にあったので、砂山ならぬ土山を自分の背丈よりも高く作り上げ喜んだものだった。
事件のあった日は寒い冬の季節だったが、俺は寒さなんぞには負けずいつも通り裏庭で遊んでいた。
その日も飽きもせずにコツコツと高い土山を築き上げ、スコップを使い時間をかけてトンネルを開通させることに夢中だった気がする。
奇妙な経験だったので今でも鮮明に覚えているが、一心不乱にトンネルを掘っていた俺は突如として手を止めることになる...
先に云っておくが俺に第六感的な能力は一切無いと断言しておく。
いわゆる霊感や超能力といった類のものは自分に備わっていないのはもちろんであり、肯定の是非を訊かれれば、間髪入れずに否定する人間だと云えるかも知れない。
幼かった俺にもそんな能力は無かった筈なのだが...
別に誰かの足音や木の枝が「パキッ」と折れた人の気を惹きつけるような音がした訳ではない。
夢中にトンネルを掘っていた俺は、得体の知れない目線を突然背中に感じたのである。
子供ながらにゾクっとした...
冬の空気は凍るように冷たかったが、遊びでひたすら動き、熱いくらいに温まっていた俺の身体に寒気を感じさせたのは冷気などでは無かった。
幼い俺の心は急激に恐怖心でいっぱいとなり、震え気味の足でスクッと立ち上がって辺りをキョロキョロと見回した...
だが俺は、テレビに映る華やかで賑やかな遊園地を視ても余り興味を持たなかった。
遊園地を楽しむには幼過ぎたという理由もあろうが、5歳の俺にとって自然の織りなす遊技場と化した裏庭は、何よりも楽しい遊び場であり、ある意味では俺にとっての一大王国とでも思っていたのかも知れない。
暑い夏の日などは、長い年月の積み重ねで自然に出来た大きな水溜りとも云える浅い極小の池には、アメンボが静かに水上を這い、親に似ても似つかない蛙の子であるオタマジャクシが泳いでいた。
流石にザリガニなどの甲殻類は居なかったが、幼かった俺にはアクアリウムを眺めているような感覚があったのかも知れない。
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